開業の準備やドリンクの原価の見直しで、ソフトドリンクやお酒をどこから仕入れるかを決めたい。飲料問屋や酒屋の卸から買えるのか、業務用スーパーやネットでまとめ買いするのと何が違うのか、迷う方は少なくありません。2026年は清涼飲料の値上げに加え、10月に酒税が改正され、ドリンクの仕入れ値を見直す時期にもなっています。
本記事では、飲食店・小売店・宿泊施設などで飲料やお酒を仕入れる方に向けて、主な仕入れ先とそれぞれの違い、お酒の仕入れで知っておきたい免許のルールや業者への確認事項、新たな取引の始め方を解説します。最後に卸業者側である、飲料メーカー・業務用酒販店が飲食店や小売店との取引を増やすために対策すべき考え方も紹介します。
飲料・お酒の主な仕入れ先と違い
清涼飲料もお酒も、一般に「メーカー → 問屋・卸 → 小売店・飲食店 → 消費者」の順に流れます。飲食店や小売店から見た主な仕入れ先は、次の6つです。
| 仕入れ先 | 主な品目 | 買える量 | 配達 | 価格・費用の傾向 | 向いている事業者 |
| 飲料問屋・食品卸 | 清涼飲料・ミネラルウォーター・お茶など。食品や菓子も扱う卸もある | ケース単位が中心 | 定期配達が中心(エリア・最低ロットは業者ごとに異なる) | 継続して使う量に応じて条件が出やすい | ソフトドリンクの使用量が多い店、小売店、施設 |
| 業務用酒販店 | お酒、ソフトドリンク、樽生ビール、サワー用の炭酸ガスなど | 本数・ケース単位。少量も相談しやすい | 店まで配達(エリア・頻度は業者ごとに異なる) | 配達やメニュー提案などを含めた条件で比べる | お酒を出す飲食店・宿泊施設 |
| 酒類卸(問屋) | お酒全般。清涼飲料を扱う会社もある | まとまった量が中心 | 取引先への配送 | 取引量に応じた条件 | 酒販店・小売店・EC。飲食店へは小売業免許も持つ会社が販売(次章) |
| ネット卸・卸売通販 | 清涼飲料・お酒(お酒は購入条件があるサイトもある) | ケース単位。小ロットのサイトもある | 宅配便 | 価格を比べやすい。送料がかかる | 近くに業者がない店、保存のきく飲料をまとめて買いたい店 |
| 業務用スーパー・ディスカウントストア | 清涼飲料・お酒 | 1本から | なし(自分で買い出し) | 少量で買えるが、買い出しの手間がかかる | 開業直後や使用量が少ない店、急な不足の補充、イベント |
| メーカー・酒蔵・ブルワリーから直接 | 自社製品 | 相手ごとに異なる | 相手との調整による | 相手ごとに異なる | 地酒やクラフトビールを店の特色にしたい店 |
清涼飲料の仕入れ方は、飲料問屋・食品卸・ネット卸・業務用スーパーなど、選択肢が広くなります。お店で使う量が多ければ定期配達の業者、少なければ業務用スーパーやネット卸、というように使う量から絞り込みます。
お酒を提供する飲食店の仕入れ先は、業務用酒販店が一般的です。酒類メーカーに直接問い合わせても、近くの酒販店を紹介されることが多くあります。「酒卸の大手」を探す方もいますが、大手の酒類卸・食品卸は主に酒販店や小売チェーンとの取引が中心で、飲食店に配達する役割は業務用酒販店が担うのが一般的です。社名の大きさで探すより、自店に配達してくれる業務用酒販店を探すほうが近道になります。
ネット卸を利用する場合は、会員登録が必要なサイトが多く、会社などの事業者だけに販売するところもあれば、個人でも買えるところもあります。ペットボトルや瓶の飲料は重いため、送料が無料になる条件と、注文から届くまでの日数も確認しましょう。また、お酒を仕入れる場合は、免許の確認を求めるサイトもあります。
地元の日本酒やクラフトビールを店の特色にしたい場合は、酒蔵やブルワリーから直接仕入れられることもあります。ただし、取引の条件や1回あたりの数量は卸先次第であり、取引のある酒販店を通すよう案内される場合もあります。
どの仕入れ先を主な卸先に設定したとしても、急な不足や納品出来ない場合に備えて、近くの業務用スーパーやディスカウントストアなど予備の買い先を決めておくと、欠品や業者の休業日にもメニューを止めずに済みます。
お酒の仕入れで知っておきたい酒類販売業免許のルール
飲食店へのお酒の販売は「小売」にあたる
お酒を販売する事業を行うには、酒税法にもとづく酒類販売業免許が必要です。免許は大きく「小売業免許」と「卸売業免許」に分かれ、販売できる相手が違います。
| 免許 | 販売できる相手 |
| 酒類小売業免許(一般酒類小売業免許など) | 消費者、飲食店などの料飲店営業者、菓子等製造業者。一般酒類小売業免許では、他の酒類販売業者には販売できない |
| 酒類卸売業免許 | 酒類販売業者(酒販店など)、酒類製造者 |
このため、飲食店へのお酒の販売は、酒税法上「小売」にあたります。飲食店が「酒屋さん」「業務用卸」と呼んで取引している業務用酒販店も、飲食店への販売は小売業免許で行っています。一方で、小売業免許と卸売業免許の両方を持ち、酒販店にも飲食店にも販売している会社もあります。業務用酒販店の全国団体の名称が「全国酒類業務用卸連合会」であるように、業界では飲食店向けの販売も「卸」と呼ぶことが多く、普段使う呼び名と免許上の区分は一致していません。
「酒販免許で卸はできるか」という疑問の答えも、この区分によります。一般酒類小売業免許だけでは、他の酒販店へお酒を卸すことはできず、酒販店に販売するには卸売業免許が必要です。卸売通販のなかには、お酒を酒類小売業免許を持つ会員だけに販売している業者もあります。飲食店がネット卸でお酒を買えないことがあるのは、このためです。
飲食店・小売店・イベントで変わる仕入れ先
仕入れる側の立場によって、主な仕入れ先と免許の要否は次のように変わります。
| 仕入れる側 | 主な仕入れ先 | 販売業免許 |
| 飲食店・宿泊施設(店内で提供する) | 業務用酒販店など、小売業免許を持つ業者 | 店内で提供するお酒には不要 |
| 飲食店(未開栓のまま持ち帰り用に販売する) | 同上 | 必要。ただし飲食店などの接客業者は原則として受けられない(下記参照) |
| 酒販店・小売店・EC | 卸売業免許を持つ酒類卸(問屋)、酒類製造者 | 一般酒類小売業免許など。2都道府県以上の消費者にネットやカタログで販売する場合は通信販売酒類小売業免許 |
| 個人・イベントの主催者 | 酒販店などの小売店 | 自分たちで飲む分は不要。お酒を販売する場合は免許が関わる |
飲食店で、持ち帰り用の瓶ビールや地酒を未開栓のまま売りたいという場合は注意が必要です。国税庁の手引では、酒場・旅館・料理店など酒類を扱う接客業者は、原則として販売業免許を受けられず、国税局長が支障ないと認めた場合に限り受けられるとされています。認められた場合も、店で提供するお酒と販売するお酒は売場を分け、仕入れ・売上・在庫を帳簿で分けて管理する必要があります。
なお、ソフトドリンクや、酒類にあたらないノンアルコール飲料の仕入れ・販売には、酒類販売業免許は関係しません。物販やイベントでの販売など、自店のケースで免許が必要かどうかは、所轄の税務署の酒類指導官に確認してください。
飲料問屋・酒屋卸を選ぶときに確認すること
配達エリア・頻度・最低ロット
まず、自店が配達エリアに入っているかを確認します。業務用酒販店や飲料問屋は配達できる地域が限られていることが多く、条件のよい業者でもエリア外では取引できません。エリアに入っている場合は、次の点を確認しましょう。
- 週に何回、何曜日に届けてもらえるか
- 1回あたり何ケース・いくらから届けてもらえるか(最低ロット)
- 発注の締め時間と納品時間、定休日や年末年始の配達
- 空き瓶・ビール樽・ケースなど空き容器の回収
- 発注方法(電話・FAX・Web)と、支払い条件(掛け払いの可否、締め日・支払日)
飲食店ごとに店舗の広さや規模感がそれぞれ異なりますが、それに応じた柔軟な対応を業者側も対策しています。冷蔵庫や倉庫が小さい店では、少量ずつこまめに届けてくれる業者のほうが、在庫を抱えずに済みます。
品ぞろえと得意分野
業者にはそれぞれ得意分野があります。日本酒・焼酎・ワインに強い、地酒やクラフトビールの品ぞろえが多い、樽生ビールやサワー用の炭酸ガス、ビールサーバーに対応できる、ソフトドリンクやノンアルコール飲料もまとめて頼める、などです。ドリンクメニューの中心となるお酒に強い業者を選びつつ、押し出すメニュー以外の飲料も頼めるかを確かめます。ビールサーバーなどの貸し出しの条件は、業者やメーカーによって違うため、取引前に確認することが大切です。
また、日本酒・ワイン・クラフトビールは、輸送や保管のときの温度や光で状態が変わりやすいお酒です。こうしたお酒を多く扱う店では、業者の倉庫や配送での温度管理も確認しましょう。
欠品・価格改定のときの対応
夏場や年末など需要が増える時期は、清涼飲料もお酒も品薄になることがあります。欠品のときに代わりの商品を提案してもらえるか、価格改定を何日前に知らせてもらえるかを確認することが大切です。
清涼飲料は2026年も値上げが続いており、お酒の場合、2026年10月1日に酒税が改正されました。ビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)の税率が1kLあたり155,000円に一本化され、チューハイなど(その他の発泡性酒類)は1kLあたり100,000円に引き上げられています。アルコール分の低い蒸留酒やリキュールの特例税率も引き上げられました。
| 種類 | 2026年10月以降の酒税(350ml換算) | 改正前との差 |
| ビール | 54.25円 | 9.10円の減税 |
| 発泡酒(麦芽比率25%未満)・新ジャンル | 54.25円 | 7.26円の増税 |
| チューハイなど(その他の発泡性酒類) | 35円 | 7円の増税 |
ビールは減税、発泡酒・新ジャンル・チューハイなどは増税になったため、取引先に改正後の仕入れ価格を確認し、ドリンクメニューの価格を見直します。(参考:財務省「酒税に関する資料」)
できるだけ安く仕入れたいと考える場合でも、価格だけで仕入れ先を決めるのは避けましょう。相場より極端に安いルートでは、正規の流通品かどうか、保管や輸送の品質管理、同じ商品を続けて仕入れることが出来ないなど、欠品のリスクや逆にコストの増加に繋がる事もあります。
取引の始め方と、仕入れ条件をよくする付き合い方
業務用酒販店や飲料問屋と取引を始めるまでは、一般に以下の流れで進みます。
- 電話や問い合わせフォームで、店の業態・席数、扱いたい銘柄、1か月あたりの使用量、納品の頻度を伝える
- 見積もりと配達条件を確認し、新しく扱う銘柄は試飲を頼む
- 支払い条件を決めて取引口座を開設する(与信の確認のため、書類の提出を求められることがある)
- 発注方法を確認し、初回の発注をする
見積もりは、1社だけでなく複数の業者に同じ銘柄・量・配達条件で依頼すると比べやすくなります。
価格の相談をする場合、どの銘柄をどれくらい継続して使うかを示すことが大切です。業者は仕入れや配達の見通しを立てやすくなり、その量に見合った条件を検討しやすくなります。お酒・ソフトドリンク・割り材などを1社にまとめて頼むと、1回の配達量が増え、最低ロットや配達料の条件も満たしやすくなります。配達ルートに合わせて決められた発注の締め時間や、支払い期日を守ることで、徐々に信頼関係を構築できます。
業者によっては、メーカーのキャンペーン情報や販促物(ポスター・メニュー表など)、ドリンクメニューの提案、新商品の試飲会の案内を受けられることがあります。内容や費用の有無は業者ごとに違うため、取引前に確認しておきましょう。
飲料メーカー・業務用酒販店が
飲食店や小売店との取引を増やす場合
この章は、飲料メーカー、業務用酒販店、飲料卸、地域の酒蔵など、飲料・お酒を卸す側の方向けの内容です。
本記事で解説した、仕入れる側が重視する配達エリアや頻度、小ロットへの対応、欠品時の連絡は、地域の業務用酒販店・飲料卸・地元のメーカーが求めている条件です。飲料は重くかさばるため、配達できる地域の中で取引先を増やすと、配達の効率を保ちやすくなります。業務用酒販店や酒類卸の場合は、お話した免許の区分が「誰に売れるか」を決める条件にもなります。取引先を広げる前に、自社の免許で販売できる相手かを確認することが大切です。
取引のない飲食店や小売店へ案内する方法は様々あり、新規取引先との接点の作り方については下記の記事で詳しくまとめているので参考に活用ください。
- 飲料メーカーの場合:飲料製造業の新規開拓・販路開拓|新しい取引先の増やし方と効率的な営業手法
- 酒蔵・酒類卸・酒販店の場合:酒類業の新規開拓・販路開拓に強い営業代行とは
また、忙しい卸業者でも対応できる新規開拓方法として、FAX営業を取り入れる事をオススメしています。運転中や既存の取引先へ時間を使っている間でも、多くの企業に自社サービスを知らせることができます。現在の配達ルートで地域と業種(居酒屋、カフェ、ホテル、酒販店など)に絞って、反応を見ることから始めてみましょう。
対象地域にターゲットとする業者が何件あるか知りたい、規模を拡大したいと考える場合は、営業先リストのサンプルを活用してFAXの送付先を把握してみましょう。
まとめ
清涼飲料は使う量と配達の条件で仕入れ先を選び、お酒は免許のルールを踏まえて業務用酒販店を軸に選びます。どちらも価格だけでなく、配達エリア・最低ロット・欠品や価格改定のときの対応まで含めて比べると、仕入れが安定しやすくなります。
まずは、1か月あたりに使う清涼飲料とお酒の銘柄・量を書き出し、そのうえで配達エリア内の業者を探して見積もりを依頼し送りましょう。その際、10月の酒税改正後の仕入れ価格もあわせて確認することが大切です。
また、業務用酒販店・飲料卸・飲料メーカーで、飲食店や小売店との取引を増やしたいと言う場合は、実際に配達ルート内にいる飲食店へあいさつ回りするなど、関係構築から始めてみましょう。人手や工数が無く営業ができないと悩む場合は、オススメしているFAX営業を取り入れる、または外聞に任せる方法などもございますので、自社で対応できることからコツコツと販路を広げていきましょう。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。