牛乳や生クリーム、バターをどこから仕入れるかを決めたい。値上げが続いているうえに賞味期限が短く、廃棄と欠品の両方が起きるのではと心配になる食材です。
カフェや洋菓子店、パン屋など、様々な飲食店は、仕入れ先を使う量と賞味期限、配送の頻度で選びます。
本記事では、業務用の牛乳・乳製品を仕入れる事業者に向けて、主な仕入れ先と違い、牛乳・加工乳・乳飲料やロングライフ牛乳、生クリームと植物性ホイップの選び方、乳製品を取扱う卸業者が販路を拡大する方法について解説します。
業務用の牛乳・乳製品の主な仕入れ先と違い
業務用の牛乳・乳製品の主な仕入れ先は、次の7つです。
| 仕入れ先 | 買える量 | 品ぞろえ | 配送 | 価格・費用の傾向 | 向いている店 |
| 乳業メーカー系の業務用卸・特約店 | ケース単位が中心。少量は相談 | 牛乳・クリーム・バター・チーズなど、メーカーの業務用商品 | 定期配送が中心 | 継続して使う量に応じて条件が出やすい | 乳製品の使用量が多い店、洋菓子店、ホテル、給食施設 |
| 乳製品・製菓材料の専門卸 | 業者ごとに異なる | 生クリーム・バター・チーズなどの種類が多い | 配送あり(エリア・頻度は業者ごとに異なる) | 品目によって差がある | 製菓・製パンで使う乳製品の種類が多い店 |
| 業務用食品の総合卸 | ケース・パック単位が中心 | 食材全般。乳製品は定番品が中心 | 他の食材とまとめて配送 | 発注と受け取りを1社にまとめられる | 発注の手間を減らしたい飲食店 |
| 地域の牛乳販売店(宅配店) | 少量から相談できることがある | 牛乳類が中心。乳製品を扱う店もある | 店ごとに異なる | 店ごとに異なる | 近くで牛乳をこまめに届けてほしい店 |
| 業務用スーパー・会員制の卸売店 | 1本から買える | 店舗の品ぞろえによる | なし(自分で買い出し) | 少量でも買えるが、買い出しの時間がかかる | 開業直後や使用量が少ない店、急な不足の補充 |
| 業務用食材のネット卸・メーカーの法人向けEC | 小ロットから注文できるサイトがある | 掲載商品から選ぶ。ロングライフ牛乳や冷凍品も比べやすい | 宅配便(冷蔵・冷凍) | 価格を比べやすい。送料がかかる | 近くに業者がない店、保存のきく商品をまとめて買いたい店 |
| 牧場・地域の乳業メーカーから直接 | 相手ごとに異なる | 自社でつくる牛乳・乳製品 | 相手との調整による | 産地や製法をメニューで打ち出せる | 産地や製法を店の特色にしたい店 |
乳業メーカー系の業務用卸は、メーカーの業務用商品を飲食店や施設に届ける業者です。
業務用食品の総合卸は、冷凍品や乾物を中心に食材をまとめて届けてくれる一方、賞味期限の短い乳製品は専門の業者と使い分けて発注する店もあります。牛乳と一緒に生クリームやバター、製菓材料までまとめて頼める業者を選ぶと、発注先が1つにまとまり、最低発注量や配送料の条件も満たしやすくなります。
地域の牛乳販売店は、家庭向けの宅配に加えて、事業所や店舗への配達に応じる店もあります。対応可能かどうか、どの商品を扱ってくれるかは店ごとに違うため、近くの販売店に直接確認しましょう。
ネット卸やメーカーの法人向けECは、24時間いつでも発注でき、電話での聞き間違いも防げます。単発購入だけでなく、定期配送の仕組みを用意しているサイトもありますが、チルドの牛乳や生クリームは、配送できるエリアや便が限られていることが多いため、自店の住所に希望の頻度で届くか先に確認しましょう。
牧場や地域の乳業メーカーから直接仕入れる場合は、配送できるエリア、1回あたりの数量、休業日に制約があることが多いため、主な仕入れ先にするか、特定のメニューに絞って使うかを決める事で欠品や廃棄を防ぎます。
また、近くに業務用スーパーなどがあれば、少量の乳製品はそこで買うほうが安く済むこともあります。比べるときは、単価だけでなく、買い出しにかかる時間と店の保管場所も含めて考えましょう。どんな業態でも、主な仕入れ先とは別に、業務用スーパーやネット卸などのサブとなる仕入れ先を設定しておくと、欠品や業者の休業日にもメニューを止めずに済みます。
また、仕入れ先を探しているが今現在開業前という店でも、業者に仕入れの相談はできます。ただし、業務用の卸やネット卸には事業者向けのところがあり、取引を始めるときに店名や業種を確認されることがあります。個人でも買えるサイトもあり、条件は業者ごとに異なります。使う商品と量がまだ決まっていない段階では、業務用スーパーなどで試作しながら商品と量を固め、そのうえで業者に相談する進め方もあります。
用途に合う牛乳・乳製品の選び方
乳製品に求める点は業態によって違います。カフェではラテなどに使う牛乳の味やミルクの泡立ち、パン屋や洋菓子店ではバターや生クリームの風味と扱いやすさ、介護施設や病院、給食施設では価格や栄養、衛生管理のしやすさが重視されやすくなります。まず自店の用途から必要な商品を決め、そのうえで次の点を確かめて選びます。
牛乳・加工乳・乳飲料は種類別名称で見分ける
牛乳類は、乳等命令(乳及び乳製品の成分規格等に関する命令。2024年4月に所管が厚生労働省から消費者庁へ移る前の名称は「乳等省令」)と「飲用乳の表示に関する公正競争規約」に基づき、牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、乳飲料などの種類別名称で分けて表示されています。仕入れの際は、容器の表示にある「種類別」で中身を確かめます。
| 種類別 | 原料・成分 | 仕入れで気をつけること |
| 牛乳 | 生乳だけが原料。乳脂肪分3.0%以上、無脂乳固形分8.0%以上 | メニューで「牛乳」と表記したい場合はこの種類別を選ぶ |
| 成分調整牛乳・低脂肪牛乳・無脂肪牛乳 | 生乳から乳脂肪分などの一部を除いたもの | 牛乳とは別の種類別。コクや泡立ちが変わることがあるため試作で確認する |
| 加工乳 | 生乳に脱脂粉乳やクリーム、バターなどの乳製品を加えて成分を調整したもの | 「濃厚」などの商品名でも牛乳とは限らない |
| 乳飲料 | 乳製品以外のもの(ビタミン、コーヒー、果汁など)も加えたもの。乳固形分3.0%以上 | 原材料に乳製品以外のものが含まれる |
「業務用」は容量や包装、販路による呼び方で、種類別名称とは関係ありません。商品名の「濃厚」「特選」などではなく種類別名称で確かめておくと、メニューや商品説明での表記で迷いません。
チルド牛乳とロングライフ牛乳を使用量と保管場所で使い分ける
通常の牛乳(チルド品)は、殺菌後10℃以下で保存することが乳等命令で決められています。一方、ロングライフ(LL)牛乳と呼ばれる常温保存可能品は、連続流動式の加熱殺菌機で殺菌し、あらかじめ殺菌した容器に無菌的に充填したもので、10℃以下での保存は求められず、常温を超えない温度で保存します。業務用のLL牛乳を常温で置いておけるのは、このような製法で作られているためです。
冷蔵庫が小さい店や、使う量が日によって変わり読みにくい店、欠品に備えて予備の在庫を持っておきたい店では、LL牛乳が使いやすくなります。ただし、開封した後は冷蔵して、メーカーの表示に従って早めに使い切りましょう。チルド品とLL牛乳では風味の感じ方が違うこともあるため、メニューに使う前に飲み比べておきます。
生クリームと植物性ホイップ、バター・チーズの選び方
乳等命令でいう「クリーム」は、生乳・牛乳・特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除いたもので、乳脂肪分18.0%以上のものです。乳化剤や安定剤を加えたものや植物性脂肪を混ぜたものは「乳等を主要原料とする食品」など、クリームとは別の扱いになります。植物性油脂を使ったホイップも、クリームには当たりません。
業務用では、種類別が「クリーム」の商品と、植物性脂肪を使ったホイップ、乳脂肪と植物性脂肪を混ぜたものが並んでいます。メニューや商品説明で「生クリーム使用」とうたうか、泡立てやすさや絞った形の保ちやすさ、価格のどれを優先するかで選びます。
カフェでコーヒーに添えるポーションタイプのクリーム(コーヒーフレッシュ)は、植物性油脂を主な原料とする商品が多く、乳製品とは限りません。お客様に原材料を聞かれたときに答えられるよう、原材料表示を確認しておきましょう。
また、バターとチーズは、製パン・製菓・調理のどれに使うか、有塩か無塩か、シュレッドやスライスなどの形状、冷蔵品か冷凍品かで選びましょう。
乳製品業者を選ぶときに確認すること
配送頻度・最低発注量と賞味期限のバランス
チルドの牛乳や生クリームは賞味期限が短いため、配送が週1回で1回あたりの最低発注量が多いと、使い切れずに廃棄が出やすくなります。定期的に届けてもらうことで、店に置く在庫を減らすことができます。保管スペースが少ない店には、必要な分だけをこまめに届け、急な追加や納品時間の調整にも応じてくれる、小回りの利く業者が合いやすくなります。
欠品を防ぐために業者を選ぶ際は次の点を確認しましょう。
- 週に何回届けてもらえるか、1回あたり何本(何ケース)から届けてもらえるか
- 発注の締め時間と納品時間が、店の仕込みに間に合うか
- 業者の定休日と、年末年始・連休の配送
温度管理と納品時の確認
チルドの牛乳類は10℃以下で保存する基準があるため、冷蔵車で届くか、受け取ってすぐ冷蔵庫に入れられる時間帯に納品されるかを確認します。納品時には品温、賞味期限、容器の破損を確かめ、問題があったときの返品・交換の条件を取引前に決めておきます。
2021年6月から、原則としてすべての食品等事業者に、HACCP(ハサップ:食中毒などを防ぐための衛生管理の手法)に沿った衛生管理が求められています。納品時の確認結果を冷蔵庫の温度とあわせて記録することで、この衛生管理の記録にも生かすことができます。(参考:厚生労働省「HACCP(ハサップ)」)
欠品・価格改定のときの連絡と代替品
乳製品は、生乳の需給や季節によって品薄になることがあり、価格も改定されます。2026年も、乳業各社が原材料や包装資材、人件費、物流費の上昇を理由に、8月に牛乳類やヨーグルトなど(森永乳業)、9月にバターやチーズなど(雪印メグミルク、森永乳業)の価格を改定しました。
仕入れ値が変わった時に慌てないよう、改定を何日前に知らせてもらえるか、欠品のときに代わりの商品を提案してもらえるかを確認します。商品提案とあわせて、万が一の時に備えて、電話・FAX・Webの受発注システムなど、発注の方法が店の営業時間に合うかも確かめておきます。
取引の始め方と、仕入れ条件をよくする付き合い方
乳製品業者と取引を始めるまでは、一般に次のように進みます。
- 電話や問い合わせフォームで、業態、使いたい商品、1週間あたりの使用量、納品の頻度を伝える
- 見積もりと配送条件(最低発注量、配送日、発注の締め時間など)を確認し、候補の商品のサンプルを頼む
- サンプルや少量の試し発注で、実際に出すメニューを作って試飲・試作し、味や泡立ち、使い勝手を比べる
- 問題がなければ、支払い条件を決めて取引口座を開設し、発注方法を確認したうえで本格的な発注を始める
見積もりは、2〜3社に同じ商品・量・配送条件で依頼すると比べやすくなります。
価格の相談をするときは、どの商品をどれくらい継続して使うかを示します。業者は仕入れや配送の見通しを立てやすくなり、その量に見合った条件を検討しやすくなります。配送ルートに合わせて決められた発注の締め時間や、支払い期日を守ることも、取引の信用を積み重ねることにつながります。
牛乳販売店・乳製品卸が飲食店・施設の取引を増やす場合
では実際に卸す側となる牛乳販売店・乳製品卸・地域の乳業メーカーにとっては先ほど説明した「店舗側の動きと探し方」を知ることで、販路の拡大や顧客の満足度上昇へ繋がります。
乳製品は賞味期限が短く、こまめな配送が求められます。配送1回あたりの量が少ないと、売上に対して配送にかかる費用の割合が大きくなってしまう為、同じ配送ルートや地域の中で取引先を増やすと、配送の効率を保ちやすくなります。仕入れる側が重視する配送頻度や小ロットへの対応、欠品時の連絡は、小回りの利く配送地域の業者が求めている条件でもあります。こうした対応をより評価し、人柄込みで継続利用を検討頂ける方は、地元のカフェや洋菓子店、高齢者施設であり、そんな卸先とこまめな連絡を取り合うことが必要になります。
今以上に取引先や卸先を見つけたい・広げたいと考える方は、無闇に営業を始めるよりも、次の点をベースに提案先を決めましょう。
- 配送できる地域と曜日
- 最低発注量
- 扱える商品(牛乳類、生クリーム、バター、チーズなど)
- 案内したい業種(カフェ、洋菓子店、パン屋、ホテル、介護施設など)
乳類販売業は、2021年6月の改正食品衛生法の施行で、営業許可から届出に変わりました(施行前に許可を受けていた場合は、届出をしたものとみなされます)。小分けや加工をする場合は別の許可が必要になることもあるため、取引先を広げる前に、扱い方に合った許可・届出になっているかを管轄の保健所に確認してください。
そして、今まで取引のない飲食店や施設へ営業する方法の一つに、FAXがあります。人手が少なく運転がメインで事務作業が出来ないと言う方でも、配送可能な地域と取引したい・価値を考えてくれそうな業種に絞って、条件をまとめて届けられます。飲食店に向けた営業方法でも効果があり、実際に50店舗との新規開拓を成功させた事例もございますので、合わせてご覧ください。
冷凍えびカツの食品会社がパン屋へFAX営業|8,000件配信で反応率1.50%、50件の契約につながった事例
まとめ
業務用の牛乳・乳製品の仕入れ先は、使う量と賞味期限、配送の頻度で選び、主な仕入れ先と欠品時の予備を持っておくと安定しやすくなります。まずは、1週間あたりに使う牛乳・生クリーム・バターなどの量と、必要な商品を書き出し、そのうえで2〜3社に同じ条件で見積もりとサンプルを確認しつつ、価格改定や欠品のときの対応もあわせて確認しましょう。
また、実際に牛乳販売店・乳製品卸で、飲食店や施設との取引を増やしたいと考えている方は、顧客側が思っている懸念点や検討材料をもとに、自社と取引するメリットを相手にわかるように提示しましょう。もし、営業に人を割けない場合は、案内する業種・地域の選定から、商品案内の作成、営業先リストの準備、FAX配信までを代行する、弊社のサービス内容をご確認ください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。