既存の取引先や紹介からの案件や依頼で工場を回してきたものの、受注が減ってきた、あるいは特定の取引先に偏っていると感じている金型メーカーは少なくありません。取引先の方針が変われば仕事がまとめて減る可能性があるため、新しい発注先を自社から探す必要性を感じている方も多いはずです。
ただ、営業専任の担当者がいない会社では、「どの業種に営業すればよいのか」「何を伝えれば相談してもらえるのか」「どんな営業方法から手を付けるべきか」が判断しにくいものです。
この記事では、金型の種類別に発注者になる企業の特徴を整理し、自社の型種と対応工程から営業先を絞り込む手順、各営業方法の使い分けについて説明します。
金型の主な種類と、それぞれの金型を発注する企業
一般社団法人日本金型工業会では、金型をプレス用、鍛造用、鋳造用、ダイカスト用、プラスチック用、ガラス用、ゴム用、粉末冶金用の8種類に分けて紹介しています。ダイカスト用は鋳造型の一種ですが、工業会の一覧では別に掲げられています。
営業先を考えるうえで押さえておきたいのは、金型を直接発注するのは、その金型を使って成形・加工を行う会社だという点です。プレス加工会社、射出成形会社、ダイカスト会社、鍛造会社、ゴム製品やガラス製品のメーカーなどがこれにあたります。成形を自社工場で行っている製品メーカーも、直接の発注者になります。
種類ごとの素材と製品例、主な発注先候補を一覧にすると、次のとおりです。
| 金型の種類 | 成形する素材 | 主な製品例 | 主な発注先候補 |
|---|---|---|---|
| プレス用 | 鋼板、非鉄金属など | 自動車・家電・雑貨などの部品 | プレス加工会社、プレス工程を持つ部品・製品メーカー |
| 鍛造用 | 棒材、非鉄金属など | クランクシャフト、オートバイ部品、建設機械部品 | 鍛造会社、鍛造部品を扱う部品メーカー |
| 鋳造用 | アルミ合金など | 工業用部品、建設機械部品、農業機械部品 | 鋳造会社 |
| ダイカスト用 | アルミ合金、亜鉛合金など | 自動車のエンジン回りの部品、カメラのボディー | ダイカスト会社、ダイカスト工程を持つ部品メーカー |
| プラスチック用 | プラスチック材料 | テレビ、OA機器、家電製品などの部品 | 射出成形などの樹脂成形会社、成形を内製する製品メーカー |
| ガラス用 | ガラス材料 | びん類、照明器具部品、食器類 | ガラス製品メーカー |
| ゴム用 | 合成ゴム、天然ゴム | タイヤ、キーボード、靴など | ゴム製品メーカー、ゴム成形会社 |
| 粉末冶金用 | 金属の粉末 | 歯車など | 焼結部品メーカー |
※発注先候補は一般的な想定であり、実際の商流は製品や取引によって異なります。
また、発注の流れは1通りではありません。製品メーカーが金型を手配して成形会社に成形を任せる場合もあれば、成形会社が自ら金型メーカーを選ぶこともあります。同じ種類の金型でも、営業先は成形・加工会社と製品メーカーの両方が候補になり得ると考えておくと、次の絞り込みがしやすくなります。
自社の金型の種類と強みから、営業先と伝える内容を決める
型種と対応工程から、営業先の業種を絞り込む
営業先は、自社が実際に受けている仕事から逆算して絞り込むことが大切です。営業先の選定手順は次のとおりです。
- 自社の型種と対応工程を整理する:扱っている金型の種類に加え、新規製作、設計、トライ・修正、修理・改造のうち、どの工程を受けられるかを書き出します。
- その金型で成形している業種を挙げる:前の章の一覧を参考に、自社の金型を使う成形・加工会社や製品メーカーの業種を候補に挙げます。
- 過去の受注実績が多い業種・得意分野を優先する:候補の中から、これまで受注が多かった業種や、自社の加工が特に評価された分野を先に営業先にします。
工程の整理では、修理・改造やメンテナンスも見落とさないようにしてください。新しい金型を一から発注するよりも、手持ちの金型の修理や改造を相談するなど、取引のない会社との最初の接点として、修理・改造の相談を入口にすると、すでに取引先がある会社でも新しい依頼先の候補として検討してもらいやすくなります。業種と地域で候補を挙げた後は、実際に営業する企業を一覧にして整理します。業種や地域で絞り込んだ営業先候補を確認したい場合は、以下のサンプルをご活用ください。
「何でも作れます」ではなく、対応条件を具体的に示す
金型メーカーの案内でよく見られるのが、「図面があれば何でも作れます」という伝え方です。技術に自信があるからこその表現ですが、発注する側からすると、自社の案件を本当に受けてもらえるのか判断しにくくなります。
発注先を探している担当者が知りたいのは、自社の案件がその会社の対応範囲に入るかどうかです。そのため、次のような対応条件を具体的に示すことが大切です。
- 対応できる型種(プレス用の順送型、プラスチック用の射出成形型など)
- 扱える成形材料
- 対応できる製品サイズや金型サイズ
- 要求精度への対応範囲
- 対応工程(設計からの相談、新規製作、トライ・修正、修理・改造)
- 試作型や小ロットへの対応可否
- 受け取れる図面・データの形式
たとえば「プラスチック用金型(射出成形)を製作。製品サイズ○○mm程度まで、試作型から量産型まで対応。修理・改造のみのご相談も可」のように書けば、読み手は自社の案件と照らし合わせて相談するかどうかを決められます。対応条件を具体的に書くと対象が狭まるように感じるかもしれませんが、対応範囲が詳細に伝わるほど、相談する側は声をかけやすくなります。
営業先ごとに、伝える内容を変える
同じ金型を扱っていても、営業先によって関心を持つ点は異なります。たとえば次のような違いが考えられます。
- 成形・加工会社:金型の寿命やメンテナンスへの対応、トラブル時にどこまで早く修正できるかを重視する場合があります。
- 製品メーカー:製品の設計段階から金型の相談ができるか、試作から量産まで任せられるかを重視する場合があります。
- 既存の金型を使い続けている企業:古い金型の修理や改造、図面が残っていない金型への対応を求めている場合があります。
「誰に送るか」が変われば、「何を書くか」も変わります。前の項で整理した対応条件のうち、どれを前面に出すかを営業先ごとに選び直すことで、相手が自社に関係のある話として受け取りやすくなります。
金型メーカーの集客方法|見つけてもらう・直接提案する方法
新しい発注先との接点を作る方法を選ぶときは、相手が今、発注先を探しているかどうかで考えると判断しやすくなります。今まさに外注先を探している企業は、検索エンジンなどで自ら情報を集めます。一方で、今は探していなくても、条件が合えば相談したいと考える企業もあります。前者にはWebで見つけてもらう方法、後者にはこちらから直接提案する方法が向いています。
このほか、展示会や商談会への出展、製造業向けのマッチングサイトへの登録といった方法もあります。出展費用や人手の負担と、自社の対象業種の企業が集まる場かどうかを見比べて、必要に応じて検討するとよいでしょう。
ホームページで対応範囲と事例を伝え、検索から見つけてもらう
発注先を探している担当者は、Google検索やAI検索で「対応できる金型会社」を探し、見つけた会社のホームページで対応範囲や相場を確かめます。そのため、会社概要や設備一覧だけを載せたホームページでは、情報が足りず、相談してよい会社かどうかを判断しにくくなります。
ホームページを見ただけでサービス内容や特徴を理解してもらうには、次の情報を載せていきます。
- 対応条件:型種、材料、サイズ、精度、対応工程、受け取れるデータ形式
- 加工事例:どのような製品の金型を、どの工程から手掛けたか(取引先の了承を得られる範囲で)
- 相談方法:図面を送れば見積もりができる、修理だけでも相談できる、といった最初の連絡の取り方
こうした情報が自社サイト上にそろっていると、検索した人が自社の案件と照らし合わせやすくなり、Google検索だけでなく、AI検索で参照されるための情報も増やせます。ホームページは一度作って終わりではなく、事例や対応範囲が増えるたびに書き足していくことで、見つけてもらえる機会を少しずつ広げられます。自社でのサイト運用や改善・更新まで手が回らない場合は、以下の代行サービスもご検討ください。
発注先を探していない企業には、直接提案する
ホームページは、相手が検索したときに初めて役に立ちます。まだ外注先を探していない企業に自社を知ってもらうには、こちらから直接提案する方法が必要です。
金型の発注者となる企業を、プレス加工、樹脂成形、ダイカストといった業種や地域で絞り込んだリストを作成すれば、FAXでまとめて案内することもできます。営業専任の担当者がいない会社でも取り入れやすい方法です。その際は、最初の連絡で契約や商談まで求めるのではなく、相手が負担なく行動できる接点を用意しておくことが大切です。問い合わせや連絡のきっかけとしては、次のような方法があります。
- 図面を送ってもらえれば見積もりを作成する
- 自社の案件に対応できるかを確認する
- 手持ちの金型の修理・改造について相談を受ける
実際にFAXを送る場合、情報を分かりやすく伝えようとして、画像やイラストを多く入れたくなるかもしれません。イラストや画像、ロゴなどを使わず、情報を中心に構成したFAXで、1週間に100件の問い合わせにつながった事例もあります。配信先の情報や紙面の書き方については、以下の記事で紙面を公開して解説していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
金型メーカーが新しい発注先を増やすには、次の順番で進めると取り組みやすくなります。
- 型種と工程から営業先を絞る:自社の金型で成形している業種を挙げ、受注実績のある分野から優先します。修理・改造も接点の候補に含めます。
- 対応条件を言葉にする:「何でも作れます」ではなく、型種、材料、サイズ、工程、データ形式などを具体的に示し、営業先ごとに前面に出す内容を選びます。
- 相手の状況に合わせて接点を作る:発注先を探している企業にはホームページで見つけてもらい、まだ探していない企業には直接提案します。
いきなりすべてに取り組む必要はありません。まずは自社の型種と対応工程を書き出し、どの業種に、何を伝えるかを整理することから始めてみてください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。