「仕事のほとんどが元請けの警備会社や紹介から来ていて、自社で新しい発注者を探したことがない」「取引先が限られているので、単価の相談を切り出しにくい」。交通誘導や雑踏警備を中心に請け負う警備会社は、よくある悩みではないでしょうか。
取引先が少ないと、その会社の工事量が落ちた時期にそのまま仕事が減り、閑散期の波も大きくなります。とはいえ、警備の仕事には詳しくても、どこに・何を・どう伝えて営業すれば新しい取引先が増えるのかは、業務は見えにくいものです。
この記事では、警備を依頼してくれる取引先(発注者)を増やす集客方法を、2号警備(交通誘導・雑踏警備)を中心に説明していきます。狙う発注者の決め方、案内する前にそろえる自社情報、集客方法ごとの向き不向き、問い合わせを受注と継続取引につなげる受付体制までを順に取り上げて解説します。
警備業の集客は「誰から仕事を受けるか」を決めることから始まる
警察庁「令和7年における警備業の概況」によると、令和7年12月末時点の警備業者数は1万949業者で、そのうち2号警備業務を行う業者は8,768業者(80.1%)でした。交通誘導や雑踏警備は多くの会社が手がけている分野で、同じ地域に同じ業務を提供する会社が並びやすい状況にあります。
そのなかで「どこからでも仕事を受けます」という売り込みをしても、発注者からはほかの会社との違いが見えません。まずは、自社がどの発注者から仕事を受けたいのかを決めるところから始めます。
業務区分によって発注者は変わる
警備業務は、警備業法第2条第1項で4つの区分に分けられています。区分によって警備を依頼する相手が異なるため、営業先も変わります。
| 区分 | 主な業務 | 主な発注者の例 |
|---|---|---|
| 1号警備 | 事務所・商業施設・駐車場などでの盗難等の事故を防ぐ業務(施設警備など) | ビル・施設の管理会社、施設の所有者、商業施設の運営会社 |
| 2号警備 | 人や車両が混雑する場所、通行に危険がある場所での事故を防ぐ業務(交通誘導・雑踏警備) | 建設会社、設備・電気通信・管工事などの専門工事会社、イベント主催者 |
| 3号警備 | 運搬中の現金・貴金属・美術品等の盗難等の事故を防ぐ業務(輸送警備) | 金融機関、現金や貴重品を扱う事業者 |
| 4号警備 | 人の身体に直接付き添って危害を防ぐ業務(身辺警護) | 企業、個人、イベント関係者 |
本記事では、このうち2号警備の発注者に絞って説明します。
2号警備の主な発注者と、狙いやすい相手
交通誘導の依頼が発生するのは、道路に面した場所での工事や、資材・重機の搬入出がある現場です。こうした現場を持つ会社が2号警備の発注者になります。
- 元請けの建設会社(土木・建築)
- 設備関係の専門工事会社(電気、電気通信、管工事、空調など)
- 道路関連の工事会社(舗装、道路維持、区画線など)
- 解体工事・外構工事などの会社
- イベント主催者や施設の運営者(雑踏警備)
上記以外に、ほかの警備会社から人員の応援を受ける下請けの案件もあります。ただ、受注先を増やして単価や仕事量を安定させたいと考えるのであれば、工事会社などの発注者と直接取引する比率を上げていくことが目標になります。
大手ゼネコンより地域の中小建設・設備会社が取引を始めやすい理由
大手ゼネコンの現場は規模が大きい一方、すでに付き合いのある警備会社が決まっている場合が多く、新しく取引を始めるハードルは高いです。受注先を増やす警備会社にとって取引を始めやすいのは、地域に根ざした中小規模の建設会社や、設備・電気通信工事の会社です。
こうした会社の現場は「1〜2名で足りる」「工期が短い」「日程が急に変わる」といったものが多く、小回りの利く地元の警備会社が重宝されます。担当者と決裁者の距離も近いため、話がまとまれば直接取引につながりやすい相手です。
また、交通誘導は「どこに頼んでも同じ」と見られやすく、相手を絞らずに案内すると価格だけで比べられる傾向もあります。反対に、「○○市周辺の小規模な管工事の交通誘導」「夜間の電気通信工事に伴う警備」のように、得意な業種や地域をはっきりさせておくと、発注者にとって「こういう現場ならあの会社が得意だったよな」と思い出してもらいやすくなります。
発注者に案内する前に整理しておくこと
狙う発注者が決まったら、次は相手に伝える自社の情報を言語化します。ここが曖昧なままだと、どの方法で自社を売り込んでも「結局何を頼める会社なのか」が伝わりません。
対応できる業務・エリア・人数・時間帯を具体的にする
発注者が知りたいのは、「自社の現場をこの会社に頼めるかどうか」です。次の項目を、言葉と数字で書き出しておきましょう。
- 対応業務:交通誘導、雑踏警備、駐車場警備など
- 対応エリア:「○○市および周辺市町村」など、市町村単位で
- 最少人数:「1名から対応」など
- 時間帯:夜間・早朝・土日祝の可否
- 依頼の受付期限:「前日○時までの依頼なら翌日配置可能」など
上記とあわせて、他社と比べたときの強みも整理します。たとえば「急な依頼への配置の早さ」「交通誘導警備業務検定の合格者が何名在籍しているか」「特定エリアでの現場経験の長さ」などが例です。これらを、発注者側の「急な工期変更で人が足りない」「有資格者の配置が必要な現場がある」といった困りごとに結びつけて説明できるように準備しておくと、案内の内容が具体的になります。
発注者が確認する情報を揃える(認定番号・保険・有資格者)
初めて取引する警備会社について、発注者は「きちんとした会社かどうか」を確認したいと考えます。実績が少ない段階では特に、相手が自分で確かめられる情報を示しておくことが信頼の材料になります。証明できる情報の例は以下です。
- 公安委員会の認定番号(警備業の認定を受けていることの証明)
- 所在地・連絡先
- 賠償責任保険などの加入状況
- 有資格者の在籍数(交通誘導警備業務検定1級・2級など)
有資格者については、高速自動車国道・自動車専用道路と、各都道府県の公安委員会が認定した路線で交通誘導を行う場合、検定合格警備員の配置が求められます。対象となる路線は都道府県ごとに異なるため、自社の営業エリアで該当する路線を確認しておくと、発注者からの相談に答えやすくなります。
また、取引先によっては、取引開始時に会社情報や保険加入状況などの確認を求められる場合があります。問い合わせを受けてからお待たせすることのないよう、書類のスキャンやコピーなどすぐに出せる形でまとめておきましょう。
受けられる仕事量を人員から逆算しておく
2号警備では、配置できる警備員の数がそのまま受けられる仕事量の上限になります。営業をした結果、依頼が来たのに人が足りず断ってしまった場合、その発注者からの次の相談は来にくくなります。
平日昼間・夜間・土日それぞれに何名まで出せるかを把握し、その範囲で受けられる量から自社の提案を始めましょう。新しい取引先が増えて人員が足りなくなるかもと不安に思う場合は、案内する地域や件数を段階的に広げるなど、営業の進め方と人員確保の計画をあわせて考えましょう。
警備会社の主な集客方法と、向いている営業方法
警備会社が発注者を増やす方法には、主に次の4つがあります。どれか1つが正解というわけではなく、自社の取引先の状況や、使える手間・時間に合わせて選びます。
| 方法 | 向いている状況 | 手間 | 始めるまでの時間 |
|---|---|---|---|
| 紹介・既存取引先からの拡大 | すでに取引先があり、現場での評価を得ている | 小さい(既存の関係の中で相談する) | すぐ始められる |
| 自社ホームページ・地域検索 | 発注者が地域名で警備会社を探す場面に備えたい | 最初の情報整理と、その後の更新 | 公開までに準備期間がかかり、検索で見つけてもらうまでにも時間がかかる |
| 工事会社への直接案内(FAX営業) | 業種・地域を決めて、まだ接点のない会社にまとめて知らせたい | 紙面と送り先リストの準備(代行の利用も可能) | 準備が整えば比較的早く案内できる |
| 電話営業・飛び込み営業 | 近隣の少数の会社と直接話したい | 1社ごとに時間と人手がかかる | すぐ始められるが、回れる件数は限られる |
紹介・既存取引先からの拡大
最も始めやすいのは、今の取引先から仕事を広げる方法です。同じ取引先の別の現場や別の営業所、取引先と付き合いのある協力会社など、すでに自社の働きぶりを知っている相手を起点にすると話が早く進みます。現場での評価がそのまま紹介の理由になるため、日々の現場対応が営業活動にもなります。
ただし、紹介は相手次第で増減し、自社でコントロールしにくいのが難点です。取引先が1〜2社に偏っている状態のままでは、その会社の工事量に自社の売上が左右されます。元の勤務先の取引先を頼って独立する場合の仕事の取り方については以下の記事でも解説しています。
自社ホームページと地域検索での見つけてもらいやすさ
工事会社の担当者が、新しい警備会社を探すために「地域名+警備会社」「地域名+交通誘導」などで検索することがあります。こうした場面で見つけてもらい、サービス利用を検討してもらうための入口が自社のホームページです。
掲載する内容は、先ほど解説した対応業務・エリア・人数・時間帯、認定番号、有資格者数などが中心です。企業情報などの法人としての情報ページや会社概要だけでは、発注者にとって「現場を頼めるか」を判断できません。
あわせて、Googleビジネスプロフィール(Googleの検索結果や地図に会社情報を表示できる無料の仕組み)に登録しておくと、地域名で検索されたときに所在地や電話番号が表示されやすくなります。登録する住所・電話番号・営業時間は、ホームページに記載した内容と合わせましょう。
地域名で検索されたときに見つけてもらいたいが、必要な情報をどう掲載すればよいか分からないなどお困りの場合は、外部に運用を任せるという方法もあります。弊社は更新・改善と合わせて、Google検索だけでなくAI検索から問い合わせにつなげるWeb集客サービスを提供していますので、もしもの場合はご検討ください。
工事会社へ直接案内する(FAX営業)
ご紹介したネットでの集客は、サイトを見られる状態にするために様々な施策が必要になり運用に手間がかかりますが、根本的に探しに来た人にしかサービス内容を見てもらえません。まだ自社を知らない工事会社にこちらから知らせる方法として、FAXで案内を送るFAX営業があります。送り先を業種と地域で絞り込めるため、出動できる範囲の工事会社にだけ営業できる点が、警備会社と相性の良いところです。
取り入れる際に大切なのは、どの業種・地域の会社に送るか。そして、「誰に送るか」が変われば「何を伝えるか」も変わります。以下は送り先事に伝えるべき内容の例です。
- 電気通信工事の会社に送る場合:夜間・短時間の工事に対応できること、1名から配置できること
- 道路舗装・道路維持の会社に送る場合:有資格者の在籍数、複数名での配置実績
- 地域の建設会社全般に送る場合:対応エリア、急な依頼への対応可否
また配信先は、自社の警備員が出動できる範囲の市町村と、自社の強みが生きる業種から決めることで成果に繋がります。実際に、宇都宮市で開業した警備会社が、宇都宮市および周辺市町村の建設業・設備関係の企業へFAXを配信し、直後に11件の反応(反応率0.37%)があった事例もございます。紙面の内容や配信先の選び方については、以下で説明しております。サンプル紙面もダウンロードできますので、ご活用ください。
宇都宮市で開業した警備会社が建設・設備業へFAX営業|初回3,000件の配信で11社が反応、4社と新規契約
電話営業・飛び込み営業
電話や訪問は、相手の反応をその場で確かめられ、現場の予定や困りごとを直接聞ける方法です。近所の工事会社や、工事現場の看板で施工会社名を見かけた会社など、少数の相手に絞って当たる場合に向いています。
一方で、工事会社の担当者は日中現場に出ていることもあり、電話がつながりにくかったり、訪問しても不在の可能性も高いです。1社ごとに時間がかかるため、多くの会社に知ってもらう手段としては限界がありますが、FAXなどで事前に紙面を送った後、反応のあった会社に電話で詳しい話を聞きながら信頼と安心感を確保する組み合わせた営業方法も有効な手段の一つです。
問い合わせを受注と継続取引につなげる
どの営業方法で案内しても、問い合わせが来た後の対応次第で、受注できるかどうか、次も頼まれるかどうかが変わります。
問い合わせへの受付体制を事前に決めておく
警備の依頼は、現場の日程や必要な人数が決まった段階で発生することが多く、「明日1名お願いできますか」といった急な相談も珍しくありません。尚且つ、問い合わせの電話が、そのまま見積もりや配置の相談になる場面が多い業種です。
そのためにも、営業を始める前に次のことを社内で事前に決めておきましょう。
- 電話を受ける担当者(現場に出ている時間帯の対応も含めて)
- その場で答えられる範囲(基本料金、対応できる日時・人数など)
- 折り返しにかかる時間の目安
やむを得ない場合もありますが、返答が遅れることで、発注者はほかの警備会社に連絡してしまいます。すぐに答えられない場合でも、「○時までに折り返します」と伝えられるように社内で対応ルールを決めておくと、相手は次の手配を判断しやすくなります。
人数合わせで終わらない現場提案
「何名必要ですか」と聞いて人数どおりに配置するだけでは、ほかの警備会社との違いが伝わらず、価格で比べられやすくなります。可能であれば現場の図面や周辺の道路状況を事前に確認し、「この交差点は夕方に渋滞しやすいので、迂回路の案内看板と人員をこう配置すると、近隣からの苦情を減らせるかもしれません」といった、現場を見たうえでの配置を提案しましょう。
現場が終わった後に当日の状況を簡単に報告し、次の現場の予定を聞いておくことも、継続取引につながる行動です。発注者にとって「段取りを一緒に考えてくれる警備会社」になれれば、価格だけで比べられる場面は少なくなっていきます。
まとめ
警備業の集客は、次の順番で進めると取り組みやすくなります。
- 誰から仕事を受けるかを決める:2号警備なら、地域の中小建設会社や設備・電気通信工事の会社が取引を始めやすい相手に絞る。
- 自社情報を整える:対応業務・エリア・人数・時間帯、認定番号・保険・有資格者、人員から見た受注量の上限をまとめる。
- 自社に合う方法を選ぶ:紹介で広げられる余地があるか、地域検索で見つけてもらえる状態か、接点のない会社にこちらから知らせる必要があるかで判断する。
- 受付体制を作る:電話の担当者、その場で答えられる範囲、折り返しの目安を決めてから営業を始める。
紹介や既存取引先だけでは取引先が増えない場合は、業種と地域を決めて工事会社へ直接案内する方法が選択肢になります。送り先リストの準備から紙面の作成、FAXの配信までをまとめて任せたい場合は、一度ご相談ください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。