寿司屋の魚の仕入れ先はどこ?鮮魚店・水産卸が寿司店と取引を始める方法

寿司屋の魚の仕入れ先はどこ?鮮魚店・水産卸が寿司店と取引を始める方法

寿司屋と取引をしたい鮮魚店・水産卸にとって、最初の壁になるのは「今の仕入れ先で足りている」という返事です。多くの寿司屋は市場の仲卸などを活用し魚を揃えているため、直接提案しても、すぐに仕入れ先を切り替えてもらえるほど簡単ではありません。

取引の糸口は、寿司屋が今どこから、どのように魚を仕入れているかを知ったうえで、既存の仕入れ先では手薄な部分に一品から入ることが重要です。

本記事では、寿司屋の仕入れ先の実態と、仕入れ先を選ぶ基準を整理し、鮮魚店・水産卸が新規取引を始める方法、定期注文につなげる納品と提案について解説します。

寿司屋は魚をどこから仕入れているか?

市場の仲卸・鮮魚店・業務用ECの使い分け

寿司屋の代表的な仕入れ先が、中央卸売市場の仲卸業者です。仲卸は、卸売業者が産地から集めた水産物を仕分けて、市場へ買い出しに来る小売店や飲食店に販売します。店主が早朝に市場へ出向いて自分の目で魚を選ぶ店もあれば、なじみの仲卸に電話で注文して届けてもらう店もあり、方法は様々です。

豊洲市場協会と東京水産振興会が2019〜2020年度に、豊洲市場の買出人(市場で仕入れる事業者)を対象に行ったアンケートでは、有効回答806件のうち、業態で最も多かったのは寿司屋(43%)でした。また、寿司屋の水産物の仕入れのうち、豊洲市場の仲卸業者から仕入れる割合は79%とのことです。

参考:東京水産振興会「アンケートにみる『豊洲市場の現在地』第2回 買出人アンケート①」

市場以外では、近くの鮮魚店や卸業者に配達してもらう方法や、飲食店向けの業務用の鮮魚仕入れサイト(業務用EC)で注文する方法もあります。市場が遠い店や、仕込みの時間を市場通いに割けない店では、こうした仕入れ先が選択肢になります。さらに、1つの仕入れ先ですべてをまかなうのではなく、魚種や用途によって仕入れ先を使い分けている店もあります。

仕入れ先を複数持つ背景として、魚種ごとに水揚げが安定しないこともあります。農林水産省の「令和7年漁業・養殖業生産統計」(概数値)によると、令和7年の漁業・養殖業の生産量は357万7,400トンで前年より1.6%減り、このうち海面漁業の漁獲量は270万500トンで3.1%減少。魚種別では、真鰯やさば類が増えた一方、かつおなどは減っており、魚種によって増減が分かれています。海水温の上昇や海流の変化によって、サンマ、スルメイカ、サケなどの不漁が長期化しているとの報告も確認しました。

参考:農林水産省「令和7年漁業・養殖業生産統計」/水産庁「令和6年度 水産白書 特集 海洋環境の変化による水産業への影響と対応」

鮮魚店・水産卸が入り込む余地として、こうした既存の仕入れ先では手に入りにくい魚種や、揃わない日の穴を埋める部分にあります。

個人店とチェーン店で異なる仕入れの決め方

同じ寿司屋でも、誰が仕入れ先を決めているかは店の形態によって異なります。営業に取り掛かる前に、発注を決めているのが店主なのか、本部なのかを確認することで、利用を検討頂く可能性を高めることに繋がります。。

店の形態仕入れを決めている人の例提案前に確認すること入り方の例
個人経営の寿司店(カウンター中心)店主(大将)が自ら目利きして選んでいる場合がある市場に通っているか、どの魚種を誰から仕入れているか市場で手に入りにくい魚種・産地の一品を試してもらう
数店舗を展開する
寿司店
店主・料理長、または仕入れ担当者店ごとに仕入れているか、まとめて仕入れているか店舗数分の量と規格をそろえられることを示す
回転寿司・持ち帰り寿司などのチェーン本部の購買担当が決めている場合がある店舗に発注の権限があるか、本部の窓口はどこか本部の窓口へ、供給できる量・規格・期間を示して提案する

また、チェーン店の中には、産地から直接買い付ける独自の調達ルートを持つ企業もあります。店舗の担当者に案内を渡しても本部で判断される場合もあるため、窓口を確認してから提案してください。

寿司屋が仕入れ先を選ぶときの基準

寿司屋が仕入れ先を選ぶときの基準

前述の豊洲市場のアンケートでは、仕入れで重視する点(5点満点)として「水産物の鮮度」(4.87点)、「水産物の品質」(4.86点)、「水産物の安全性(HACCPなど)」(4.51点)が上位でした。一方、「加工・パッケージング」や「配送サービス」は点数が伸びていません。市場で仕入れている寿司屋に選ばれるためには、まず鮮度と品質をどう示せるかが問われます。

寿司ネタとしての品質を担保できるか

寿司屋では、同じネタを旬の間続けて提供することもあり、おまかせコースの組み立てや仕込みの段取りも、届く魚の状態を前提に決めています。そのため、時々極上の魚が入ることよりも、毎回一定以上の品質で届くことが求められます。日によって脂の乗りやサイズに大きなムラがあると、献立に組み込むことができません。

品質の安定を伝えるには、「いつも良い魚を入れています」という言葉よりも、産地、漁獲日または入荷日、締め方、サイズの幅といった具体的な情報を毎回伝えることが判断材料となります。

サク取り・締め方・ロットの要望に応じられるか

寿司屋からの要望には、次の3つがあります。

  • 加工:丸魚(一尾)のほか、半身やサク取りでの納品が可能か
  • 締め方:神経締め・血抜きなどの指定に応じられるか、締めた時刻を共有できるか
  • ロット:1尾単位や少量での注文、日々の数量変更にどこまで応じられるか

前述のアンケートでは加工や配送の重視度は高くありませんでしたが、こうした対応が評価されやすいのは、市場に通う時間が取れない店や、仕込みの手間を減らしたい店です。すべての寿司屋が求めるものとしてではなく、相手に合わせて示す条件として準備しておきます。

欠品時に代わりのネタを出せるか

魚種ごとの水揚げは年によっても日によっても変わるため、予定していた魚が入らない日を避けることはできません。その時、寿司屋が見ているのは欠品そのものより、発生した際の対応です。

入荷しないことが分かった時点で即連絡し、「今日は〇〇が入らないが、状態の良い△△がある」など代わりの商品を共有し、握り・つまみなどの用途、サイズ、価格帯が近い代わりのネタを示せるかどうかが問われます。取引の初めに、欠品時に代わりの魚を送ってよいか、連絡だけにするか、店で扱わない魚種は何かなど事前にすり合わせる事で、当日の対応がスムーズになります。

また、欠品ではなく品質が普段より落ちる場合も同じです。状態の良くない魚を黙って届けても、職人は包丁を入れた時点で気づきます。悪い情報ほど納品前に伝えることが、取引につながる信頼となります。

寿司屋との新規取引を始める方法

既存の仕入れ先があることを前提に「一品から」提案する

寿司屋にとって仕入れ先を変えることは、届く魚の品質が読めなくなるリスクでもあります。そのため、最初から全面的な切り替えを求めるより、以下のような「一品から」試してもらう提案をすることで受け入れられやすくなります。

  • 既存の仕入れ先では手に入りにくい魚種や、自社が得意とする産地の魚
  • 旬の端境期に、定番ネタの代わりになる魚
  • サク取りなど、店の手間が大きい加工を済ませた魚

提案時は、相手の仕入れ方によって押し出す商品を変えることが重要です。市場に通っている店には、産地・締め方・入荷日といった鮮度と品質の根拠と、市場で手に入りにくい魚種を伝えます。市場に普段通っていない店や仕入れを効率化したい店には、配達やサク取りなどの対応を伝えます。提案時には試食用のサンプルとして持参するなど、実際に包丁を入れて身質を確かめてもらうと、説明だけでは伝わらない部分を判断してもらえます。

寿司屋へ商品の魅力をまとめた案内を届ける

訪問できる店の数には限りがあるため、まだ接点のない寿司屋には、自社の存在を知ってもらうために、DMやFAXなど手元に残る商品案内を届けて関心を持ってもらう方法があります。送り先は、鮮度を保って届けるあるいは郵送できる対応地域と、自社の商品に価値を感じてもらえる店の形態で絞り込みましょう。チェーン店へ提案する場合は、店舗ではなく本部宛てに送る事で決裁権を持つ方に判断してもらいやすくなります。

実際にFAXを活用した新規開拓の例として、静岡県で鮮魚・冷凍マグロの卸売を営む水産仲卸業者が、それまで取引のなかったスーパー15店舗と契約した事例を解説している動画や、実際の紙面サンプルなども公開しておりますので、是非参考に活用ください。

水産仲卸業のFAX営業代行事例|1.2万件配信が生んだ4年以上継続の取引先開拓

定期注文につなげる納品と提案

定期注文につなげる納品と提案

旬・産地の情報を先に伝える

契約が結べても、注文された魚をそのまま届けるだけの関係では、他の仕入れ先と価格だけで比べられやすくなります。寿司屋は季節感のあるネタや他店との違いを出せるネタを探しているため、「来週から〇〇産の良質なウニが入ります」「この白身は今の時期、昆布締めに向いています」といった、産地の状況や旬の魚種を先回りして伝える提案が大切です。

提案を具体的にするためには、各顧客のおまかせ構成や、よく使うネタ、好むサイズを把握し、取引が始まった店には、LINE公式アカウントなどでその週の入荷見込みをまとめて送ることで、店主が献立を考える材料になります。

梱包と温度管理を寿司ネタ向けに整える

寿司屋は届いた箱を開けたときに、氷の当て方、魚体の向き、水抜きの状態を見て、業者が魚をどう扱っているかを判断します。身が氷や水に直接触れて傷まないように詰めることは、次の注文を左右する要素のひとつです。

サク取りなど切り身にして納品する場合、温度管理が基準になります。食品衛生法に基づく規格基準では、切り身またはむき身にした生食用の鮮魚介類(凍結させたものを除く)は、清潔で衛生的な容器包装に入れ、10℃以下で保存しなければならないと定められています。丸魚のまま納品する場合は対象外ですが、サクや切り身で出す場合は対象になります。

参考:消費者庁「食品別の規格基準について」生食用鮮魚介類(PDF)

寿司は魚を生で提供するため、アニサキスへの対応も職人にとって判断が必要な点です。厚生労働省は事業者向けの予防策として、新鮮な魚を選んで速やかに内臓を取り除くこと、目視で確認して除去すること、-20℃で24時間以上の冷凍、加熱などを挙げており、一般的な料理で使う酢での処理や塩漬け、醤油やわさびでは死滅しないとしています。納品する側が、内臓をいつ取り除いたか、冷凍したことがあるかを伝えられると、職人はその魚をどう扱うか判断しやすくなります。

参考:厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」

連絡の速さと、身質の改善を次の納品に活かす

寿司屋は仕込みの前にその日のネタを決めるため、問い合わせへの返事や入荷の連絡が遅れると、献立や仕込みの段取りに影響が出ます。そのためにも、連絡がつきやすい時間帯と手段を取引前にすり合わせ、仕込み前に返事ができる体制を整えましょう。

納品した後は、脂の乗り、身の締まり、サイズが店の期待と合っているかなど細かくヒアリングし、次の仕入れで選ぶ魚に反映させましょう。店ごとの好みを記録することで、担当者が替わっても同じ水準で納品できますし、顧客に寄り添ったやり取りを重ねることは、注文を受けるだけの業者から、さらに深い信頼関係を構築することへ繋がり、切り替えを防ぎます。

まとめ

寿司屋の多くは、市場の仲卸などにすでに仕入れ先を持っています。新規取引の入口となるのは、既存の仕入れ先では手薄な魚種や端境期のネタです。まずは1品お試しの提案から初め、取引を獲得したあとは、品質の根拠を毎回示し、欠品や品質の変化の共有など密な連絡と改善を重ねることで定期的な注文につながっていきます。

記事内で紹介したように、自社が出せる魚種・産地・締め方・加工対応・最小ロット・納品エリアを洗い出すことから始めてみましょう。

新規開拓に取り組みたいが、人手や工数を割くことが出来ない場合は、紹介したFAXやDMを活用した営業を行う、または営業そのものを外部に依頼することで、1日でも早く新規開拓に取り組むことができます。自社の課題と目的に合わせて適した営業方法から進めてみましょう。

上部へスクロール