
紹介できる求職者はいるのに、紹介先となる求人が足りず決定まで進まない。求人企業との接点が知人の紹介や既存の取引先に偏り、新しい取引先が増えない。人材紹介会社の法人営業では、こうした悩みがよく聞かれます。企業に電話をしても「求人広告で足りている」「派遣会社に頼んでいる」と返され、人材紹介との違いをうまく伝えられないまま終わることもあります。
厚生労働省が発信する「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」によると、有料職業紹介事業の報告を提出した30,561事業所のうち、1年間に就職の実績があった事業所は13,946事業所で、半数に満たない状況です。決定を出し続けるには、紹介先となる求人企業との接点を継続して作っていく必要があります。参考:厚生労働省「職業紹介事業の事業報告の集計結果について」
本記事では、手元の求職者から狙う企業を決める方法、人材派遣・求人広告との違いやメリットを正確に説明する方法や、電話・FAX・Webを活用し企業との接点の作り方、決定後に次の求人を任される関係値づくりについて解説します。
人材紹介の法人開拓で、最初に狙う企業を決める
手元の求職者から、狙う業種・職種・地域を決める
人材紹介の営業は、企業から求人を預かる「求人開拓(企業側の営業)」と、求職者と面談して仕事を紹介する「求職者対応」の2つに分かれます。決定が出ないとき、足りないのが求人なのか求職者なのかを切り分けないまま営業量だけを増やしても、成果につながりにくくなります。
求人開拓で最初に決めるのは、どの企業から当たるかです。基準にするのは、今手元に抱えている求職者です。たとえば、製造業の生産管理経験者が多いなら、その地域に工場を持つ企業を候補にするなど、登録している求職者の職種、経験した業界、年齢層、希望する勤務地を整理することで、紹介しやすい人材の傾向が見えてきます。
手元に紹介できる人材がいる状態で企業に連絡すると、「求人をいただけませんか」ではなく「御社の〇〇職に合いそうな、△△の経験を持つ方がいます」という提案から話を進めることができ、電話を受けた企業にとっても、具体的な提案をされることで検討しやすくなります。
求人を出している企業から営業先リストを作る
狙う業種・職種・地域が決まったら、営業先のリストを作りましょう。作成時はまずはじめに、業種・地域・従業員規模で候補となる企業の母数を把握します。従業員規模は、採用を決めるのが誰か(経営者か人事担当者か)など、採用人数の見込みを考える手がかりにもなります。
独自に収集する以外にもリストを購入あるいはレンタルする方法もあります。リスト作成を考えている業種や地域にどれだけの対象企業があるかを確認するために、サンプルをお配りしているのでご活用ください。
人材派遣・求人広告との違いを説明するための基礎

雇用関係と、派遣の期間制限・適用除外業務
企業の担当者が人材紹介と人材派遣を混同しているケースも少なくありません。違いを正確に説明できることで、自社の状況に合う手段を判断しやすくなります。
| 人材紹介 | 人材派遣 | 求人広告 | |
| 雇用契約を結ぶ相手 | 求人企業(直接雇用) | 派遣会社 | 求人企業(直接雇用) |
| 業務の指示 | 求人企業 | 派遣先の企業(派遣契約で定めた業務の範囲内) | 求人企業 |
| 期間の制限 | なし(雇用契約の内容による) | 原則3年(例外あり) | なし(雇用契約の内容による) |
| 候補者探し・選考の手間 | 紹介会社が候補者を探し、推薦する | 派遣会社が就業する人を選ぶ | 企業が応募を集め、選考する |
| 向いている場面 | 長く働く社員を採りたい、専門職を探したい | 急な欠員を埋めたい、期間の決まった業務がある | 応募を広く集め、自社で選考できる |
人材紹介で採用した求職者は企業の社員になるため、社員として育成や配置を考えられます。ただし、配置転換ができるのは労働契約や就業規則の範囲内です。2024年4月からは、労働条件の明示事項に「就業場所・業務の変更の範囲」が加わったため、「直接雇用なら自由に配置を変えられる」といった説明をすることは避けましょう。参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
派遣の場合、受け入れ期間の制限があり、同じ事業所で派遣を受け入れられるのは原則3年(事業所単位)で、同じ派遣労働者を同じ組織単位(課など)で受け入れられるのも原則3年(個人単位)です。事業所単位の期間は、過半数労働組合等の意見を聴いたうえで延長できます。尚、派遣会社に無期雇用されている派遣労働者や60歳以上の派遣労働者などは、期間制限の対象外です。参考:厚生労働省「派遣先の皆様へ」(期間制限に関するリーフレット)
また、派遣では働けない業務(適用除外業務)もあります。具体的に、港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院・診療所などでの医療関係の業務(一部例外あり)、弁護士・社会保険労務士などの士業の業務(一部例外あり)が該当します。建設現場の作業員や警備員のように、これらの業務の人材を探している企業にとって、派遣を受け入れることは選択肢になく、直接雇用を前提とする人材紹介を提案できる場面です。
費用の発生の仕方
人材紹介の手数料は、法律で認められた範囲でしか受け取れません。厚生労働省令で定める上限の範囲で受け取る「上限制手数料」か、紹介会社が厚生労働大臣に届け出た手数料表に基づく「届出制手数料」のどちらかで決まります。料率や金額は紹介会社ごとの手数料表によるため、企業には自社の手数料表をもとに説明しましょう。
手数料表によっては、求人を受け付けた時点で発生する手数料を設けている紹介会社もあります。自社の料金体系が入社時にのみ手数料が発生する成功報酬型であれば、「採用が決まらなければ費用はかからない」と説明することができます。掲載料がかかる求人広告や、就業時間などに応じて料金を払い続ける派遣と比べ、採用1人あたりの費用が事前に分かるため、企業は採用計画や予算を立てやすくなります。
企業に伝える人材紹介のメリットと懸念への答え方

採用担当者の工数を減らせる
求人広告を活用して募集すると、応募者の対応、書類選考、面接日程の調整、条件の交渉までを企業が自ら行います。人材紹介の場合、紹介会社が候補者を探し、要件に合う人を選んで推薦し、日程調整や条件の確認も間に入って進めます。この点は、経営者や総務担当者が人事を兼ねている中小企業にとって判断材料になりやすい部分です。採用のたびに本業の時間を割いている企業にとって、「応募対応や日程調整を任せられる」ことを具体的に伝えましょう。
求人票の作成を手伝う場合、明示が必要な労働条件にも注意しましょう。2024年4月からは、紹介会社が職業紹介を行う際も、業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期契約を更新する場合の基準(更新上限を含む)を明示する必要があります。企業からこれらの条件を聞き取り、求人票に反映できることも、紹介会社が担える作業のひとつです。
参考:厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」
自社の募集では出会いにくい人材に「非公開でも」打診できる
求人広告に応募してくるのは、転職活動をしている人が中心です。紹介会社は、登録者の中から「今すぐではないが、条件が合えば転職を考える」人にも声を掛けることができます。専門的な資格や経験を持つ人材のように、求人広告を出しても応募が集まりにくい職種では、この違いが企業の関心を引きます。
また、求人を公開せずに募集できる点もメリットの一つです。新規事業の立ち上げメンバーや管理職の後任など、社内外に知られたくない採用の場合、求人広告で広く募集するのは難しいです。紹介会社を通せば、条件に合う候補者にだけ打診することができます。
「手数料が高い」「早期退職が心配」への答え方
人材紹介を使っていない企業、あるいは使うのをやめた企業には、それぞれの理由があります。よく聞かれる懸念点と、答え方の例は以下です。
| 企業の懸念 | 答え方の例 |
| 手数料が高い | 自社の手数料表と返戻金(返金)制度を最初に示す。求人広告の掲載費と、応募対応にかかっている社内の時間を合わせて比べてもらう |
| 入社してもすぐ辞めてしまうのでは? | 返戻金制度の内容と、入社後のフォロー体制を説明する |
| 要件に合わない人を大量に送られたことがある | 推薦する人数を絞り、1人ずつ推薦理由を添えて紹介する運用を伝える |
返戻金制度は、紹介で就職した人が早期に離職した場合、手数料の全部または一部を返す制度です。返戻金制度に関する事項は、求人者と求職者の双方に明示することが法令で求められています。最初の商談で示せるよう、手数料表とあわせて書面に記載し準備しておきましょう。
他社の紹介会社を使っている企業には、これまでの対応で困ったことをヒアリングしましょう。「推薦の数は多いが要件に合わない」「連絡が遅い」といった不満が分かれば、自社の場合、何をどのように変えられるか具体的に伝えることができます。こうした懸念への答え方を社内で共有しておくことで、担当者によって説明がばらつくことも防げます。
求人広告・派遣を利用中の企業には併用から提案する
「求人広告を出している」「派遣会社に頼んでいる」という返事は、断りの言葉であると同時に、その企業に採用の必要があることを示しています。既存の手段を否定して切り替えを求めるより、併用から提案する事で話を聞いてもらいやすくなります。
求人広告を出している企業には、広告では応募が集まりにくい職種だけを任せて頂く提案、派遣を使っている企業には、急な欠員は派遣で埋めながら、並行して正社員を人材紹介で探す、という組み合わせを示せます。この時、前述の期間制限があるため、「受け入れ期間の終わりが近い派遣社員がいるか?」「その業務をこの先も社員で担う予定か?」を確認することで、直接雇用を検討するきっかけに繋がります。
求人企業と接点を作る営業方法
電話・FAX・問い合わせフォームを活用し企業に提案する
まだ取引のない企業に知ってもらう手段には、電話、FAX、企業サイトの問い合わせフォームなどを活用し、直接売り込む方法があります。
電話は担当者と実際に会話ができますが、採用担当者や決裁権を持つ方と話ができるまでに時間がかかる場合もあります。受付担当者に用件を聞かれた際は、「〇〇職の経験を持つ方の紹介について、採用のご担当者様に直接ご案内したい」と、具体的な人材の話を伝えると取り次いでもらいやすくなります。問い合わせフォームを活用する場合、営業目的の連絡を受け付けないと明記している企業には送らないよう配慮しつつ、目を通してもらうために件名を工夫して送りましょう。
また、電話がつながりにくい企業や、多くの企業に効率よく案内したい場合は、FAXを営業に活用することが効果的です。物理的に物として残るため、採用担当者が手の空いたときに読めることが利点です。1点注意事項として、紹介できる人材の例を載せる場合、求職者の氏名や現在の勤務先など、個人が特定できる程詳細な情報を載せてはいけません。実績や利用するメリットなど、読み手が知りたい会社やサービスの情報を丁寧に伝えましょう。
得意領域をネットで発信し、問い合わせが来るサイトをつくる
企業に案内を届ける方法と並行して、採用に困っている企業から見つけてもらう方法もあります。企業の担当者は、職種や地域、業界の名前と「人材紹介」などの単語を組み合わせて働く人材を探すこともあります。
情報収集をしている方に向けて、得意な職種・業界、対応エリア、これまでに扱ってきた求人の傾向、手数料や返戻金制度の考え方、採用が決まるまでの流れなど、検討材料となる情報を詳細に掲載しておくと、自社に合う紹介会社か判断できます。職種別・業界別の採用の進め方をお役立ちコラムとして発信することで、様々な検索からサイトをクリックされる入口を増やすことができます。
Googleなどの検索エンジンだけでなくAI検索でも表示されるサイトにする為には、多くの知識が必要になります。自社の業務を止めることなくサイトを改善させるためには更新を外注することも手段の一つです。
次の求人を任される!信頼関係をつくるには

入社後のフォローで早期退職を防ぐ
紹介した人材が決定したにも関わらず、入社して早期に辞めてしまった場合、返戻金で売上が減るだけでなく、企業からの信頼も損ないます。入社が決まった後も、紹介者へヒアリングを行い、紹介者と企業の双方に働きぶりや困っていることを聞きましょう。
「聞いていた業務と違う」といった声があれば、企業に伝えて調整するなど対応しましょう。企業から聞いた評価や要望は、次に同じ企業へ推薦する人を選ぶ材料にもなります。
採用計画を定期的に聞き、公開前の求人を相談してもらう
求人が求人媒体に掲載されてから連絡するのでは、他の紹介会社や求人広告と横並びの競争になります。取引が始まった企業には定期的に連絡し、欠員が出そうな部署、事業計画に合わせた増員、退職予定者の有無などを都度伺いましょう。この時、事業計画や予算を決める時期の前に連絡をすることで、採用計画を相談してもらいやすくなります。
決定した人材の活躍の様子を伝えつつ「次の採用の予定はありますか?」と話の流れで確認すると、「同じような人がもう1人ほしいかも」という依頼に繋がる場合もあります。公開前の段階で相談される信頼関係を構築することは、他社への切り替えを防ぐことにもなります。
まとめ
人材紹介の法人開拓は、手元にいる求職者から狙う企業を決め、「こういう方がいます」と具体的な話から入ることが重要です。提案の際は、派遣・求人広告との違いや手数料・返戻金制度を正確に説明できるよう準備し、電話やFAX、自社サイトなど企業と接点を作る手段を複数持っておくと、求人の確保が既存の取引先だけに頼らない形になっていきます。まずは自社の強みを洗い出し、抱えている人材に需要を感じる企業を絞り込んでみましょう。
本記事で紹介したFAX営業を取り入れる場合は紙面サンプルや、成果を出した企業の提案方法を参考にご活用ください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。