
「自社のこだわりの乳製品、もっと多くの人に届けたいのに、新しい売り先がなかなか見つからない…」とお悩みではないでしょうか。大手メーカーとの価格競争や、既存の卸売ルートへの依存により、利益率が低下している企業は少なくありません。現在、酪農・乳製品製造業が高収益化を目指すためには、製品の価値を適正価格で評価してくれる新規顧客の開拓が急務となっています。
本記事では、飲食店や小売店との直取引を実現するために必要な「提案型営業」の進め方や、効率的な提案手法をわかりやすく解説していきます。最後までお読みいただければ、自社の強みを活かした販路開拓の戦略が明確になり、利益率向上への第一歩を踏み出せるはずです。
乳製品の販路開拓を取り巻く現状と課題

乳製品製造業における販路開拓は、単に売り先を増やすことだけが目的ではありません。持続可能な事業を構築するためには、現状の構造的な課題を理解し、それを打破する戦略が必要になります。まずは、業界全体が直面している課題について整理します。
既存の卸売顧客への依存と利益率の低下
多くの乳製品メーカーが、卸売業者を通じた販路に依存しています。この取引は安定的な出荷が可能である反面、仲介手数料が発生するため、メーカー側の利益率が圧迫されやすい傾向にあります。また、最終的に手に取る消費者の反応を直接把握することが難しく、需要の変化に対して製品開発や販促策を迅速に反映できない点も大きな課題です。利益体質を改善するためには、卸売に頼りすぎない直取引の割合を増やし、付加価値を適正に還元できる体制への転換が求められます。
大手メーカーとの価格競争の激化
市場の多くを占める大手メーカーとの価格競争は、小規模・中堅メーカーにとって避けるべき土俵です。潤沢な資金と広大な流通網を持つ企業に対し、価格のみで勝負しようとすれば、コスト削減の限界に直面します。特に汎用的な乳製品であればあるほど、価格のみが購買決定要因となりやすく、結果として消耗戦を強いられます。他社との差別化を図るためには、自社商品の産地・製法・ストーリー・特定の用途への特化など、価格以外の付加価値を明確に打ち出し、選ばれる理由を構築する必要があります。
営業担当者不在による新規開拓の停滞
製造現場や品質管理に注力するあまり、専門の営業担当者を配置できていない企業も少なくありません。その結果、既存の取引先からの注文に対応する「要望に答えるだけの営業」になりやすく、新規開拓に向けた積極的な営業活動が手薄になっています。商品の需要を汲み取り、ターゲットに対して適切な提案を行うという営業の仕組みそのものが組織に定着していないことが、販路拡大を阻む要因となっています。限られた人手や時間の中で、いかに効率的で自ら動く営業体制を構築するかが、成長への分かれ道となります。
【ターゲット別】乳製品の高単価な新規販路と特徴

乳製品の利益率を高めるためには、価格競争に巻き込まれにくい「高単価な新規販路」を開拓することが重要です。卸売への依存から脱却し、製品の付加価値を正当に評価してくれる取引先を見極める必要があります。ここでは、乳製品メーカーが狙うべき代表的なターゲット層と、それぞれの市場が持つ特徴について具体的に説明していきます。
飲食店との直取引:カフェ・レストラン・ホテル
カフェやホテルなどの飲食店は、こだわりの食材を求める傾向が強く、直取引による高単価での契約が狙いやすいターゲットです。「地産地消」や「牧場直送」といった背景やストーリー性が付加価値となり、他店との差別化を図りたい飲食店の需要と合致すれば、安定した長期的な取引に繋がります。
小売店への提案:高級スーパー・百貨店・地域密着型店舗
高級スーパーや百貨店は、品質や製法にこだわった高価格帯の乳製品を好む顧客層を抱えています。一般的な量販店とは異なり、希少性やブランド力が評価されやすいのが特徴です。また、地域密着型の店舗は、地元産品としての魅力を直接消費者にアピールしやすく、地域ブランドとしての認知拡大に有効です。
菓子・食品メーカー向けの中間原料としてのBtoB展開
洋菓子店や食品メーカーに対し、チーズや生クリームなどを「中間原料」として提案するBtoB(法人取引)展開も有力な販路です。相手企業の製品の品質向上や、製造工程における原価改善(VA/VE提案)に繋がる提案ができれば、安定した大口受注が期待できます。自社製品が相手のビジネスにどう貢献できるかという視点が重要です。
直取引で利益率を高める「提案型営業」の進め方

直取引において高単価な契約を獲得し、利益率を向上させるためには、単に製品のカタログを渡すだけの営業では不十分です。顧客の課題に寄り添い、自社製品を通じて解決策を提示する「提案型営業」を取り入れることが必要となります。ここでは、具体的な実践手順を解説します。
自社製品の「強み」の言語化と差別化
直取引を成功させる第一歩は、自社製品の強みを明確に言語化することです。単に「美味しい」ではなく、「特定の地域でしか採れない生乳を使用」「特別な発酵技術で賞味期限を延長」など、顧客が他社から乗り換える明確な理由を提示します。この付加価値が価格競争を回避する武器となります。競合との違いを分析し、独自の魅力を論理的に説明できるように整理しましょう。
顧客の原価改善やメニュー開発に貢献するVA/VE的視点の活用
「商品売り」から脱却し、VA/VE(価値分析・価値工学)の視点を取り入れることが重要です。「当社のチーズで調理工程を簡略化でき、人件費を含む原価を削減できる」「この牛乳で高利益率な新メニューが開発できる」など、顧客の課題解決や利益向上に直結するメリットを提示します。相手のビジネスモデルに貢献する具体的な提案が、成約に繋がります。
商談を有利に進めるサンプル提供と効果的な資料作成
付加価値と提案内容を的確に伝えるため、商談時の準備を徹底しましょう。乳製品は実際の味わいが重要となるため、最適な状態で試食できるようサンプルの提供方法を工夫してください。同時に、口頭での説明を補完する提案資料も必須です。製品のスペックだけでなく、原価改善シミュレーションやメニュー展開例などを記載することで、成約率と商談の質は飛躍的に高まります。
乳製品の販路開拓を実践する営業方法

提案型営業の準備が整ったら、実際のターゲットに向けて売り込みを開始します。ここでは、能動的に顧客へ働きかける「アウトバウンド」手法から、見込み顧客側から問い合わせさせる「インバウンド」手法まで、販路開拓の方法について解説します。
ターゲットリストの作成とアウトバウンド営業:電話・DM・FAX
自社の強みを求めているターゲットリストを作成し、電話やDM・FAXを活用して、こちらから積極的に提案する「アウトバウンド営業」を実施します。リスト作成時は、業種や地域だけでなく、こだわり食材を扱う店舗など詳細な条件を絞り込むことが重要です。初回連絡の際は単なる商品の紹介ではなく、相手の課題解決に繋がる提案を端的に伝えます。断られる前提で台本や文面の改善と実行を繰り返し、継続的な接触を図る仕組み作りが必要です。この時にFAXを使用する場合は、先ほど紹介した「サンプルの提供」を紙面に記載すると反応率が上がります。実際に成果を出した食品製造メーカーの紙面サンプルは以下になります。
食品展示会・地方創生商談会への出展とフォロー対応
食品展示会や地方創生をテーマとした商談会は、購買意欲の高いバイヤーと直接接点を持てる絶好の機会です。ブース装飾や試食の提供方法を工夫し、自社製品の強みを視覚と味覚で訴求します。名刺交換だけでは成約に繋がらないため、会期終了後は迅速にフォロー対応や進捗確認の連絡を入れ、商談予定を獲得するまでの導線設計が重要です。
WebサイトやSNSを活用したインバウンド集客
WebサイトやSNSを活用し、ターゲット自らの問い合わせを獲得する「インバウンド集客」も並行して行います。サイト内には製品情報だけでなく、飲食店や小売店向けの導入事例、生産者のこだわりを充実させ、検索からの流入(集客)を図ります。SNSでは製品の活用レシピや製造風景を発信し、認知度を高めることで、中長期的な問い合わせ獲得を目指します。
営業体制を拡大させる「営業代行」の活用戦略

新規開拓の重要性を理解していても、社内に営業マンがない場合は、外部の専門家である「営業代行」の活用が有効な選択肢となります。特にBtoB領域の直取引を目指すにあたり、プロの営業力を借りることで、自社の負担を抑えながら素早く販路を拡大することが可能です。ここでは、具体的な活用戦略について解説します。
乳製品・BtoB領域における営業代行活用のメリット
最大のメリットは、採用や育成のコストをかけずに即戦力の営業マンを確保できる点です。BtoBの商流に精通したプロが、ターゲット選定から見込み顧客の獲得、商談対応などを代行するため、社内の人材は製品開発や製造業務に専念できます。結果として、短期間での売上規模拡大が期待できます。
自社に最適な営業代行会社の選定基準
代行会社選びでは、食品業界やBtoBの新規開拓において具体的な実績があるかを確認することが重要です。単なるテレアポ代行ではなく、提案型営業のノウハウを持ち、自社製品の付加価値を深く理解して商談できる代行会社を選びましょう。各代行会社の事例まとめページや、記載されていない最新の代行実績を直接確認して、自社に適しているか判断しましょう。
費用対効果を高める業務委託のポイント
費用対効果を最大化させるには、委託範囲の明確化が重要です。初期の連絡やリスト作成のみを任せるのか、商談やクロージングまで一任するのかによって費用体系が変わります。自社の課題に合わせて最適なプランを選択し、定期的に活動結果をもとに分析・改善することで、投資対効果を確実に高めることができます。
まとめ:自社の強みを活かした販路開拓戦略を実行しよう
乳製品の販路開拓を成功させ、利益率を向上させるためには、従来の卸売依存や価格競争から脱却することが大切です。本記事で解説したように、自社製品の強みを明確にし、飲食店や小売店、食品メーカーなどに対して価値分析や価値工学の視点を取り入れた「提案型営業」を実践することが、高単価な直取引獲得の鍵となります。
また、社内の人手不足が課題となる場合は、BtoB新規開拓に強い営業代行を戦略的に活用することで、効率的な事業拡大が可能です。自社の魅力を最大限に活かせるターゲットを見極め、確実な新規開拓戦略を実行に移していきましょう。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。