軽貨物の仕事を元請けからの委託や配送マッチングサービスで受けていると、単価や仕事量を自分で決めにくいと感じる場面が多いのではないでしょうか。元請けを通さずに直接依頼してくれる荷主(直請け)が増えれば、条件を荷主と直接話し合えるようになり、特定の元請けに仕事量を左右されることも減らせます。
ただ、直請けの荷主がどこにいて、接点の無い相手に何を伝えればよいのかは、配送の現場経験だけでは見えにくい営業の知識やコツが必要になる部分です。
この記事では、荷主探しの主な方法と各手法が向いている場面、直請けの荷主になり得る会社の探し方、最初の連絡で伝える内容、契約前に書面で確認しておくことを順に説明していきます。
軽貨物の荷主探しの主な方法と向いている場面
荷主との接点の作り方は、大きく5つに分かれます。どれか1つに絞る必要はなく、今の稼働状況と、条件をどこまで自分で決めたいかに合わせて組み合わせるのが現実的です。
まず先に、下請けと直請けの違いを振り返っていきます。元請け経由の仕事では、運賃から手数料や中間マージン(手数料)が差し引かれることが多く、単価や稼働日も元請けの条件に従うのが基本です。直請けでは荷主と直接条件を話し合える反面、事故や破損、支払いの遅れが起きたときも、荷主と自社の間で対応することになります。
配送マッチングサービス・求貨求車の掲示板
アプリやWeb上で、荷主や運送会社が出した案件に応募する方法です。登録すればすぐに案件を探せるため、開業して間もない時期の稼働確保や、空いた時間を埋める手段として使いやすい方法です。
空車と荷物を照らし合わせる「求貨求車」の掲示板も、仕組みはこれに近いものです。ただし、多くの事業者が同じ案件を見ているため条件は比べられやすく、サービスの手数料がかかる場合もあります。その後の継続的な取引に発展するかどうかは、案件次第です。
運送会社・元請けからの業務委託
運送会社と業務委託契約を結び、決まったルートや案件を任される方法です。自分で営業をしなくても一定の仕事量を確保しやすく、配送の経験を積む段階にも向いています。
その代わり、単価や稼働日、担当エリアなどの条件は元請けが決めるのが基本です。1社からの委託に頼る割合が大きいほど、契約条件の変更や案件の打ち切りがそのまま収入に響きます。
同業者や既存の取引先からの紹介
同業の軽貨物事業者や、すでに取引のある荷主から、別の荷主を紹介してもらう方法です。紹介者を通じて一定の信頼がある状態で話が始まるため、条件の相談に進みやすい傾向があります。
一方で、紹介はいつ発生するか分からず、自分から受注先件数を増やすことは難しく、日頃の仕事ぶりが次の紹介につながるものとして、ほかの方法と並行して続けていく方針が良いでしょう。
荷主企業へ直接提案する(訪問・電話・FAX・郵送)
荷物の発送がありそうな会社を自分で選び、訪問や電話、FAX、郵送で直接案内する方法です。声をかける相手を自分で決められるため、自社の車両やエリアに合う荷主を狙って探せます。
直請けの荷主を自分から増やしにいける方法ですが、相手を選び、文面やトーク内容を考え、連絡を続ける手間がかかります。電話や訪問は1件ごとに時間を取られるため、配送の合間に進めるなら、FAXや郵送のように相手の都合のよいときに読んでもらえる手段の方が組み込みやすい場合もあります。
自社サイトなどで荷主に見つけてもらう
自社のWebサイトに対応エリアや運べる荷物を載せておき、配送先を探している荷主に見つけてもらう方法です。検索で配送先を探している荷主から、直接問い合わせが入る可能性があります。
ただし、掲載してすぐに問い合わせが入るとは限らず、情報を充実させるまでには時間がかかります。
5つの方法の違いをまとめると、次のとおりです。
| 方法 | 始めやすさ | 単価・条件を自分で決められるか | 仕事量の安定性 | 自分にかかる手間 |
|---|---|---|---|---|
| マッチング・掲示板 | すぐ始めやすい | 決めにくい | 案件次第で変動 | 少ない |
| 業務委託 | 始めやすい | 元請けが決める | 契約中は安定しやすい | 少ない |
| 紹介 | 自分では増やしにくい | 相談しやすい | 紹介の頻度次第 | 少ない |
| 直接提案 | 準備が必要 | 直接話し合える | 荷主が増えれば安定しやすい | 多い |
| 自社サイト | 準備と時間が必要 | 直接話し合える | 問い合わせ次第 | 情報の更新が必要 |
直請けにつながりやすいのは、紹介・直接提案・自社サイトの3つです。このうち、自分から相手を選んで件数を増やしていけるのは直接提案です。
直請けの荷主はどんな会社か
日常的に荷物の発送がある業種から探す
直請けの荷主候補になるのは、自社の製品や商品を取引先へ届ける必要がある法人です。製造業や卸売業のように、部品や製品、商品の出荷が日常的に発生する業種では、配送を外部の事業者に頼む場面があります。
弊社サービスを利用した企業の事例で紹介している軽貨物運送業の方は、製造業へFAXを送ったところ、自動車部品メーカー、ワインメーカー、印刷会社などから引き合いがありました。同じ製造業でも、扱う製品によって運ぶ荷物の中身は大きく異なります。
軽貨物運送会社が製造業・卸売業へFAX営業|直請けの荷主開拓で約2年、毎週反応が続いた事例
自社の車両・エリア・対応品目から送り先を絞る
送り先を考えるときは、業種の一覧から選ぶよりも、自社が何を運べるかから逆算する方が絞り込みやすくなります。冷蔵・冷凍に対応した車両があるか、どのエリアなら無理なく回れるか、精密機器やガラス製品、食品などを扱った経験があるかを書き出してみてください。
そのうえで、その荷物を日常的に出していそうな業種と、自社のエリア内にある会社を組み合わせる事で、送り先の候補が具体的になります。扱う業種を絞るほど、その業種の荷物に合わせた説明ができるため、営業時の説明内容にも説得力が増します。
業種と地域から営業先の候補を探す場合は、サンプルとして提供している業種を指定できる営業先候補のリストをご活用ください。
荷主へ直接営業する際に伝えること
初めて連絡する荷主は、こちらの会社のことを何も知りません。相手が短い時間で「自社の荷物を任せられそうか」を判断できるよう、伝える内容を具体的にしておくことが大切です。
運べるもの・便の種類・エリア・受付時間を具体的に示す
案内の中心は、何を・どのような形で運べるかです。取扱品目(部品、電子機器、食品など)や、冷蔵・冷凍、壊れやすい荷物への対応可否を、相手がわかる・馴染みのある言葉で書きます。
また、便の種類も示しておくと、荷主は自社の使い方に当てはめやすくなります。お急ぎ配送、1回限りの単発便、決まった曜日や時間に回る定期便、1台を貸し切るチャーター便のうち、対応できるものを挙げ、対応エリアと受付時間もあわせて共有しましょう。荷物を丁寧に扱うことやスタッフの対応など、自社が大切にしている点は、具体的な事実として添えると伝わりやすくなります。
最初の連絡や書類を送付する際、相手が「なぜ自社にこの連絡が届いたのか」を理解できるようにします。日頃から製品の出荷がある会社だと考えて案内している、と最初に伝えるだけでも、こちらに興味をもってもらいやすくなります。荷主が配送で困りそうな場面を想像し、それに対応できる点を示す意識も持っておきましょう。
最初は「依頼」ではなく「資料送付」「対応可否の確認」を入口にする
運送の依頼は、いつもの配送会社が使えない、急ぎの荷物が出たなど、荷主側の事情で突然発生することがあります。案内を受け取った時点では依頼の予定がない荷主も多いため、最初から契約や商談を求めると、返信をもらう機会そのものを逃しやすくなります。
直請け契約の前に確認すること
書面で取り決めておく項目
直請けでは、元請けが用意していた契約条件を、荷主と自社で一から決めることになります。口頭のやり取りだけで仕事を始めると、支払いや追加作業をめぐって認識がずれたときに、トラブルになりやすくなります。
少なくとも、次の項目は書面やメールで残しておきましょう。
- 運賃と、その計算方法(距離・時間・個数など)
- 支払いの締め日と支払日
- 高速代や駐車場代などの経費をどちらが負担するか
- 荷積み・荷降ろし以外の付帯作業の有無と、その料金
- 待機時間が発生したときの扱い
- 事故や破損が起きたときの賠償範囲
- 貨物保険の加入状況
条件を書面にすることを避ける荷主や、契約にない作業を無償で求める荷主との取引は、慎重に検討し、最悪の場合は取引を見送る方が安全です。初めての直請けほど条件を急いで決めがちなので、引き受ける前に一度確認する時間を取ることをおすすめします。
取引条件の明示に関する法令と、事業者としての前提
2026年1月1日から、下請法が改正されて「中小受託取引適正化法(取適法)」となり、荷主が自社の販売品や製造品などの運送を運送事業者に委託する取引の一部が「特定運送委託」として対象に加わりました。対象となる取引では、荷主側に発注内容などを書面またはメールなどで明示する義務や、60日以内に支払期日を定めて支払う義務などが課されます。
ただし、実際に対象となるかどうかは、荷主と運送事業者それぞれの資本金・従業員数や、委託の内容によって決まります。詳しくは公正取引委員会の取適法特設サイトで確認できます。
また、従業員を使わずに一人で事業をしている場合は、2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)」の対象になり得ます。この法律では、業務を委託する事業者に対し、報酬の額や支払期日などの取引条件を書面またはメールなどで明示することを義務付けています(公正取引委員会 フリーランス法特設サイト)。
事業者側の前提として、2025年4月から貨物軽自動車運送事業者には、営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、届け出ることが義務付けられています。一人で事業をしている場合も対象で、2025年3月末までに事業の届出をした事業者は、2027年3月までに選任すればよいとされているので、注意しましょう(国土交通省:貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正)。
まとめ
軽貨物の荷主探しは、マッチングや業務委託で稼働を確保しながら、直請けの荷主を少しずつ増やしていくのが現実的な進め方です。直請けの荷主は、製造業や卸売業のように荷物の発送が日常的にある会社の中から、自社の車両・エリア・扱える荷物に合う相手を選ぶと見つけやすくなります。
案内では、送り先の業種に合わせて運べるものと便の種類を具体的に伝え、最初は資料送付や対応可否の確認など、返信しやすい入口を用意します。荷主が増えてきたら1社への依存を避けながら複数の荷主との取引を育て、条件は書面で取り決めておくことが、安定した事業の土台になります。
法人の荷主へ直接案内したいものの、案内文の作成や送り先の選定まで手が回らない場合は、営業代行も選択肢の1つとしてあります。各営業代行会社によって得意とする手法は異なりますが、FAXを検討中の場合、案内文の作成から営業先リストの準備、FAX配信までを弊社が代行しています。自社で今できることから始めてみましょう。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。