食品卸が飲食店の新規開拓で価格競争を抜け出す方法|安さを生かす提案と接点の作り方

食品卸が飲食店の新規開拓で価格競争を抜け出す方法|安さを生かす提案と接点の作り方

他社より安い価格で業務用食材を案内しても、取引につながらない。値下げをして取引先を増やしたものの、配送や人件費を差し引くと利益がほとんど残らない。既存の取引先と知り合いからの紹介だけでは、新しい店が増えていかない。業務用食材を飲食店に卸している食品卸からは、こうした悩みがよく聞かれます。

安さは強みになりますが、飲食店に魅力を伝えるときは、1kgあたりの単価だけでなく、仕込みにかかる時間や使い切れずに捨てる分まで含めた「店にとっての総額」で示すと、価格以外の理由でも選ばれやすく、単価の安さ以外のメリットを理解する事で、取引のない店と接点を作る手段が増え、新規開拓の土台にもなります。

本記事では、飲食店が仕入れ先を決める際に見ている基準、安さをトータルコストで提案する方法と計算の考え方、飛び込み・紹介・FAX・Webでの接点の作り方、サンプルから継続取引につなげる進め方を解説します。

飲食店が仕入れ先を決める基準と、
価格競争で利益が残らない理由

値下げで取引先を増やしても利益が残りにくい

帝国データバンクの調査によると、2026年上半期の飲食料品卸売の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は133件で、前年同期の126件から5.6%増えました。2024年以降は年250件を超えるペースが続き、倒産の4割以上が負債5000万円未満の小規模な業者です。

背景として挙げられているのが、食品の仕入れ価格上昇分を販売価格に転嫁できていないことです。天候不順による収穫量や相場の不安定さ、円安による輸入食材の値上がり、包装資材や運送費の上昇が重なる一方、消費者の節約志向で安い商材へ需要が移っています。相場で仕入れ値が動く生鮮品や、特売に使われる日配品を扱う業者ほど、転嫁が進みにくいと分析されています。

参考:帝国データバンク「『飲食料品卸売』の倒産動向(2026年上半期)」

同業の卸業者だけでなく、取引先である飲食店も、状況は厳しくなっています。2026年上半期の飲食店の倒産は473件で、上半期として過去最多、4年連続の増加です。食材費や光熱費の高騰、賃上げによって利益が圧迫されており、仕入れ先に対して原価を抑える提案を求める店は少なくありません。

卸も店もコストが上がっている中で、安さをだけを売りに取引先を増やすと、卸側に値下げの余地がなくなった時点で需要がなくなります。そのため、取引のきっかけが価格だけだと、より安い業者が現れたときに乗り換えられやすいという問題もあります。

飲食店が仕入れ先を決めるときに見ていること

飲食店は、価格だけでなく、メニューを安定して出し続けられるかを含めて仕入れ先を決めています。店側が確認していることと、卸が提案で示せる材料を整理すると次のようになります。

飲食店が見る基準店側が確認していること卸が提案で示せる材料
価格原価率に収まるか、値上げがどのくらいの頻度であるか単価に加え、仕込み・廃棄を含めた1食あたりのコスト
品質・規格メニューの味や見た目がぶれないか規格・歩留まり(使える部分の割合)、サンプル
安定供給欠品したときに代わりの品があるか代替品を提案できる体制、在庫の持ち方
注文・納品のしやすさ少量や急な注文に応じてもらえるか、納品時間が合うか最低発注量、配送エリア・時間帯、小分け納品

新規取引の場合、顧客側は今の仕入れ先から変えることになります。上記で記載した提案で示せる材料を、商談の前に自社の言葉で説明できるよう準備することで、「今の業者と何が違うのか」という質問を具体的に答えることができます。

業務用食材の「安さ」をトータルコストで提案する

業務用食材の「安さ」をトータルコストで提案する

自社の強みと、安くできる理由を言語化する

営業に出る前に、自社がなぜ安く出せるのかを言葉にしておきます。たとえば次のような理由です。

  • 産地やメーカーと直接取引しているため、中間の流通コスト(手数料)が少ない
  • 特定の分野(冷凍食品、乾物、調味料など)の品揃えに絞り、まとめて仕入れている
  • 自社便で配送しているため、配送料を抑えられる
  • 一次加工品の取り扱いが多い

理由を先に伝えるのは、飲食店が安い仕入れ先に対して「品質は大丈夫か」「最初だけ安くて、すぐ値上げされるのではないか」と考えるためです。安さの理由が分かれば、店はその価格が今後も続くものかを判断できます。

さらに、強みを言語化することで、営業すべき店や業態の特徴も見えてきます。小ロット・当日配送に対応できるなら、保管スペースの限られた個人経営の店。大容量の定番品が安いなら、席数の多い店やホテル・旅館、給食を提供する施設。一次加工品が多いなら、仕込みに人を割けない店が候補になります。

また、単価の安さがそのまま強みになる品目もあります。食用油、米、小麦粉、調味料、冷凍のポテトのように、規格がほぼ決まっていて使用量が多い定番品は、店が同じ規格どうしで価格を比べられるため、単価の差がそのまま伝わります。こうした品目は、単価で比べてもらって構いません。一方、肉・魚・野菜のように加工の度合いや歩留まりで使える量が変わる品目は、次に説明するトータルコストで示すことが重要です。

仕込み時間と廃棄ロスを含めて1食あたりのコストで比べる

飲食店が食材にかけている費用は、仕入れ値だけではありません。仕込みにかかる時間や人件費など、トータルコストで説得したい場合は、次の項目を共有しましょう。

  • 食材の仕入れ単価
  • 仕込みにかかる時間(スタッフの時給をかけて金額にする)
  • 歩留まり(皮・骨・筋などを除いて、実際に料理に使える割合)
  • 使い切れずに捨てている量
  • 発注や保管にかかる手間

単価だけでなく、「1食(1皿)あたりのコスト」として提示することで、店側は今の仕入れと比べやすくなります。

仮の数値による計算例

項目A:未加工品B:カット済み品
1kgあたりの仕入れ単価900円1,150円
1kgあたりの仕込み時間15分なし
仕込みの人件費(時給1,200円で計算)300円0円
歩留まり90%100%
使える分1kgあたりのコスト約1,333円1,150円
1食(100g使用)あたりのコスト約133円115円

例を見ると、単価はBのほうが250円高いものの、仕込みの人件費と歩留まりを含めた時、1食あたりのコストはBのほうが低くなります。カット野菜、骨取り済みの魚、加熱済みの肉といった一次加工品は、このような見せ方で提案すると価値が正しく伝わります。また、この計算方法は、各店舗が設定している時給や仕込み時間、捨てている量がそれぞれ違うため、事前にヒアリングしたうえでの提案方法となります。最初は仮の数値で考え方を見せつつ、商談の中で各数字を聞いて反映させると、その店だけの提案資料となります。

逆に、計算してもトータルコストが下がらない品目を、無理に加工品へ切り替える提案は避け、定番品のように単価で選ばれる品目と、トータルコストで選ばれる品目を分けて提案する事を心がけると、店から見て筋の通った話になります。

取引のない飲食店と接点を作る方法

取引のない飲食店と接点を作る方法

飛び込み・ルート営業は配送ルートの近くから始める

飛び込みやルート営業を行う場合、今の配送ルートの近くから対象店舗を選びましょう。取引が始まった際、大幅にルートを変更することなく配送が可能になるため、1回の配送で回れる店が増えるほど配送コストの負担が軽くなります。訪問の際はランチ営業が終わってからディナーの仕込みに入るまで(14〜16時頃が目安)を基本にし、居酒屋のように夕方から仕込みに入る店は時間帯を業態ごとに確かめましょう。初回訪問では売り込みよりも、先ほど紹介した強みと安くできる理由を1枚にまとめた資料などを配ることを目標に顔を覚えてもらいましょう。

既存取引先から紹介してもらう

既存の取引先に、同業の知り合いや系列店を紹介してもらう方法です。紹介は、すでに自社を使っている店を通じた話になるため、初めての店でも話を聞いてもらいやすくなります。さらに、紹介した既存顧客と紹介された店の双方に、サンプルや初回の配送料の無料などの特典を用意すると、紹介する事自体にメリットを感じてもらい頼みやすくなります。

FAXで業態を絞って案内し、サンプル希望を募る

日々の業務をこなしながら対応できる営業には時間や人手に限りがあります。その場合は、配送エリア内の店にまとめて自社を知らせる方法として、FAXを活用しましょう。送り先は、自社の強みが生きる業態を絞り込むことが前提です。総合食品卸であれば、飲食店だけでなく、次のような事業者も営業先の候補になります。

  • 洋食、居酒屋、ラーメン店などの飲食店(業態ごとに使う食材が異なるため、それぞれに送る内容を変える)
  • ホテル・旅館(朝食・宴会で使う大容量の食材)
  • ベーカリー(小麦粉、油脂、パンの具材)
  • 高齢者施設などの給食を提供する施設
  • 弁当・惣菜の製造販売店

営業でFAXを活用する際は、返信してもらう目的を「発注」ではなく「サンプル希望」に置くことで、読み手にとって接点をつくるハードルが低くなり、商品自体を体験したうえで判断頂けます。サンプル希望を返信の目的にした紙面の例として、冷凍食品の製造会社がパン屋に案内した事例があります。紙面の組み立て方の参考になりますので活用ください。

冷凍えびカツの食品会社がパン屋へFAX営業|8,000件配信で反応率1.50%、50件の契約につながった事例

BtoB EC・マッチングサイト・自社サイトで見つけてもらう

店の側から仕入れ先の候補として自社を見つけてもらう方法もあります。業務用食材のBtoB向けECサイトや、飲食店と卸をつなぐマッチングサイトに商品を載せることで、新しい仕入れ先を探している担当者の目に触れます。載せる内容は価格だけでなく、調理例、歩留まり、最低発注量、配送エリアを書くことで、顧客にとって自店に合うかを判断できます。

既存のプラットフォームを活用する事も重要ですが、同業他社も同じく掲載している為、常に比較されている状況とも言えます。そこで、自社サイトにも顧客が知りたい情報を載せておくと、Googleなどで自社を見つけてもらう入口になります。取扱品目、対応できる業態、配送エリア、一次加工品のコスト比較の考え方などの強みや判断材料をページとして増やすことで、検索から自社を知ってもらえる機会が広がります。

GoogleやYahooなどの検索エンジンだけでなく、AI検索でも表示されるサイトを作りたい・維持したいけど自社で対応する時間や知識が無いと悩む場合は外部に改善と更新を依頼することで業務の手を止めることなく問い合わせの来るサイトを構築できます。

商談から本導入、継続取引につなげる

サンプルは試す条件を決めてから渡す

初回の商談では、カタログを広げる前に店の状況を聞きましょう。聞く項目は、仕込みにかかっている時間と人数、使い切れずに捨てている食材、今の仕入れ先で困っていること(欠品、納品時間など)、見直したいメニューです。ここで聞いた数字や課題が、トータルコストを店の実際の数字で計算し直す材料になります。この時、他店での使われ方や保存・調理のコツを話せると、顧客にとって経営を含めた相談ができる相手になります。

サンプルを渡す前に次の条件を決めておきましょう。

  • 何を、どれだけ渡すか(品目と数量)
  • どのくらいの期間、試してもらうか
  • 誰に評価してもらうか(料理長か、オーナーか)
  • いつ連絡して感想を聞くか

条件を決めずに渡すと、使われないまま時間が過ぎたり、納品や契約の権利のない立場の方からの感想で終わったりします。サンプルは原価と発送の手間がかかるため、ヒアリングで自社の商品が合うと分かった店に絞って渡しましょう。感想を聞くときは、調理のしやすさや味の調整が必要かを確かめつつ、ヒアリングの情報をもとに1食あたりのコストを示すことで、本導入の判断材料を提供することができます。

導入後は欠品・誤納品への対応と納品の工夫で乗り換えを防ぐ

取引が始まってから店が仕入れ先を見直すきっかけになりやすいのが、欠品や誤納品です。そのためにも、欠品が分かった時点で早めに連絡し、規格の近い品や別の産地の品を代わりに提案できる体制を作っておきましょう。誤納品が発生した場合、差し替えの手順と届けられる時間をすぐに伝えられるよう社内で連係をとっておきましょう。

納品の面では、各顧客の店舗保管スペースに合わせた小分け、厨房で開けやすい荷姿、仕込みの時間に間に合う納品時間など、店の作業に合わせた工夫をすると、安さだけで選ばれた取引先に比べて、他社から安い見積もりが届いたときにも乗り換えられにくくなります。

まとめ

業務用食材の安さは、単価だけで示すと値下げ競争になりやすく、仕込み時間や廃棄を含めた店の総額で示すと、価格以外の理由でも選ばれやすくなります。規格の決まった定番品は単価で、加工度や歩留まりで差が出る品目はトータルコストで、と分けて提案するのが基本です。接点を作る手段は、飛び込み・紹介・FAX・Webのどれか1つに頼らず組み合わせた営業方法を取り入れることが大切です。

まずは最初の一歩として、自社の強みと安くできる理由を洗い出し、価値を感じてもらえる業態と地域を絞りましょう。営業先と合わせて、サンプルの品目・期間・評価者などの方針を社内ですり合わせることで、どの方法で新規顧客と接点ができても商談をスムーズに進められます。

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