
「特定の大手顧客への依存から脱却し、自社の技術を新市場で活かしたい」と悩む電子部品メーカーは少なくありません。自動運転やIoTなど新領域の需要が拡大する今、かつてないビジネスチャンスを掴むため1日でも早い新規開拓が課題となっています。
本記事では、電子部品製造業が新たな法人顧客や提携先を開拓すべき理由と、自社の工数を削らずに効率よく販路を拡大する手法について解説します。なお、本記事は電子部品(部品・材料そのもの)を製造する事業者様を対象としています。計測機器・制御機器等、完成品としての電子機器を製造されている場合は、対象読者がやや異なりますのでご了承ください。
電子部品製造業が新規顧客・提携企業を探すべき3つの理由

なぜ今、電子部品メーカーにとって新規開拓が急務となっているのでしょうか。その背景には、業界構造の変化と新たな需要の拡大があります。
特定業界・既存顧客への依存リスクの回避
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)電子部品部会の直近データ(2026年4〜6月期)によると、日本の電子部品需要は自動車向けが30.4%、通信機器向けが19.0%を占めており、この2分野で約半分の需要を構成しています。特定分野や少数の大手顧客に依存するビジネスモデルは、完成品メーカーの減産や海外移転、あるいは業界全体の不況が起きた際に、売上減少の直撃を受けるリスクがあります。取引先を多角化し、リスクを分散させることは、企業存続のための重要な経営課題と言えます。
ブラックボックス化された自社技術の「異業種展開」
積層セラミックコンデンサ(MLCC)をはじめ、一部の製品カテゴリでは日本の電子部品メーカーが世界的に高い市場シェアを持っており、「すり合わせ技術」による独自の製造ノウハウがその強みとなっています。他社には簡単に真似できないブラックボックス化されたその技術力は、既存の業界内だけでなく、これまで接点のなかった異業種からも高く評価される可能性を秘めています。自社の技術を客観的に見つめ直し、新たな用途を提案する動きが求められています。
次世代市場(CPS/IoT・カーボンニュートラル等)での早期シェア獲得
政府が掲げる「デジタル田園都市国家構想」に基づく地方創生・DXの流れや、世界的なカーボンニュートラルの潮流により、現実世界のデータを収集・制御するエッジ領域の重要性が増しています。これに伴い、市場調査各社もセンサやアクチュエータといった電子部品の需要拡大を予測しています。急成長が見込まれる次世代市場において早期にシェアを獲得するには、今すぐ行動を起こす必要があります。
製品別:自社の強みを活かせるターゲット企業の探し方

では、実際にどのような企業へ自社の技術を提案すべきでしょうか。製造している部品のカテゴリ別に、ターゲットとなる業界と提案の切り口をご紹介します。
受動部品の提案先(コンデンサ・抵抗器・インダクタ等)
ターゲット: 産業用ロボット、航空宇宙、EV(電気自動車)、再生可能エネルギー関連機器メーカー
提案の切り口: 大電力への対応力や、極限環境下(高温・高湿・高振動など)における高い耐久性、ノイズ対策、長期にわたる安定稼働の実現などを切り口に提案します。
接続部品の提案先(コネクタ・スイッチ・リレー等)
ターゲット: 医療機器、ウェアラブル端末、IoTデバイスメーカー
提案の切り口: 最終製品の小型化・軽量化への直接的な貢献や、次世代通信に向けた高周波対応、人命や重要データを扱う機器における長寿命・高信頼性の担保を強みとして打ち出します。
変換部品およびセンサ類の提案先(音響部品・モーター等)
ターゲット: スマート家電、自動運転モビリティ、アグリテック(農業IoT)、スマートファクトリー関連企業
提案の切り口: 高精度なデータ収集による機器のインテリジェント化(機械やシステムにAIや情報処理の機能を持たせること)や、緻密な制御による省電力化・効率化への貢献など、次世代の付加価値を生み出すコアパーツとしての役割をアピールします。
新たな顧客・提携先との出会いがもたらすメリット

異業種への営業を成功させることは、単なる「一時的な売上アップ」だけでなくそれ以上の大きな利益と成長を企業にもたらします。
高収益化と価格競争からの脱却
成熟した既存市場では、どうしても価格競争に巻き込まれやすいです。しかし、自社の技術が高く評価されるニッチ市場や成長産業へ参入できれば、製品の「価値」で勝負することができ、利益率の向上が見込めます。
オープンイノベーションによる新製品の創出
異業種の企業からは、「さらに小型化できないか」「これまでにない耐熱性が欲しい」といった新たな要求スペックが提示されます。その高いハードルに応える過程自体が自社の技術力を底上げし、結果として次世代の主力製品を生み出すきっかけとなります。
単なる「サプライヤー」から「共同開発企業」への昇格
完成した部品を納入するだけの関係性から脱却し、クライアントの開発初期段階から入り込むアライアンス(技術提携)を組むことが理想です。提携企業としてのポジションを確立できれば、他社へのリプレイス(切り替え)を防ぎ、継続的かつ強固な取引基盤を構築できます。
法人顧客・提携先の見つけ方

新たな顧客との接点を持つための手法には、以下のような方法があります。それぞれのメリットデメリットを確認し、自社の目的に沿った方法を取り入れてみましょう。
展示会・技術マッチングイベントへの出展
メリット: 実物の部品を見せながら、相手企業の技術担当者や決裁者と直接対話ができるため、技術や製品に関する反応や担当者の意欲や熱量を確認できる為、より質の高い商談に繋がりやすい手法です。
デメリット: 出展費用やブース設営費などの参加すること自体へのコストが最低限かかり、見せ方によっては平均以上のコストがかかる場合も。また、名刺交換後の継続的な接点づくりを行う必要があるため、中長期的な営業工数や人手が必要になります。
デジタルマーケティング(自社サイト・専門ポータルサイト掲載)
メリット: 自社の技術に関心を持つ顧客からのインバウンド(待ちの営業)が期待でき、営業マン個人の力を排除した24時間稼働する集客の仕組み化が可能です。近年はGoogle検索だけでなく、生成AIによる検索経由で情報を探す担当者も増えています。また、専門のポータルサイトやマッチングサイトを活用する事で、今すぐ利用したいと考えている企業に向けて自社を発信する事ができます。
デメリット: SEO対策(検索エンジンの評価を上げる施策)を取り入れ、検索順位を上げる事や、安定した問い合わせを獲得出来るサイト状況にするには、ある程度の時間がかかります。また、サイト自体の網羅性や改善を定期的に行う為には、専門的なWeb運用の知識が社内に必要となるため、イチから勉強するとなると時間も労力もかかります。
自社での対応が出来ない・専門職員を雇う手間もないと言う場合は、AI検索対策も取り入れたサイト改善サービスもご検討ください。
アウトバウンド営業(直接営業)
メリット: 自社の部品を必要としていそうな異業種のターゲットをピンポイントで絞り込み、1日でも早く自社の技術で貴社の悩みを解決出来ますよ、というように直接提案を持ちかけることができます。アウトバウンド営業にはテレアポ・訪問・DMやFAXなど様々な手法があり、単体では無く組み合わせて活用する事も効果的です。
デメリット: 顧客リストの作成から初回連絡、商談までに膨大な工数がかかります。自社の営業担当の工数が割かれ、既存顧客への対応や名刺交換をした企業へのフォロー対応がおろそかになるリスクがあります。
工数不足を補い出会いを創出する「営業代行」
新規開拓の手法は様々ですが、多くの電子部品メーカーが直面するのが「人手不足の壁」です。そんな課題を解決する「営業代行」サービスを活用することで自社にどんなメリットがあるか紹介します。
新規開拓における最大の課題は「人手不足」
新しい顧客と出会うことの重要性や、それがもたらす恩恵は理解していても、実行に移せない企業は少なくありません。日本の電子部品メーカーの多くは、主業務である「研究開発」や「生産技術の向上」に重点を置いており、不慣れな新規開拓のために貴重な人材を割くのは現実的ではないというのが実情です。
営業代行を活用し、自社の強み(技術)に集中する
そこで、人手や工数不足を補う有効な選択肢の一つとなるのが、営業の外注する営業代行です。新規開拓におけるリストアップから初期連絡、商談機会の獲得までを営業のプロに任せることで、自社は技術力を落とすことなく、並行して異業種へ提案することが可能になります。
異業種・新市場へのテストマーケティングとして活用
営業代行は、単なる労働力の補填ではありません。「自社では気づかなかった製品の新しい使い道」の発見や、Web集客よりもはるかに早いスピードでの「新市場のリアルな反応」を収集が可能です。自社の営業組織を柔軟に拡張する感覚で、リスクを抑えながらテストマーケティングを実行できるのが最大の強みです。
営業代行はそれぞれ営業手法や対応範囲が異なります。効率よく多くの企業への提案したいと考えている場合は、FAX営業代行もご検討ください。
まとめ
激動の電子部品業界において、特定の取引先への依存から脱却する「新規開拓」は、企業の存続と成長に必要不可欠です。新たな顧客との出会いは売上や利益率の向上をもたらしますが、そのために自社の貴重な人手や時間(技術者や既存営業)に新規営業を疲弊させては本末転倒です。
自社の強みである「開発・生産体制」をしっかりと守りつつ、最短距離で理想の提携先を開拓する手段として、「営業代行サービス」も取り入れてみてはいかがでしょうか。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。