
競合の多い倉庫業界において、ただ待つだけの営業では「空きスペースを埋めたい」「新規荷主を獲得したい」という目標を達成することは難しいです。
本記事では、荷主が倉庫に求める「お客様が感じている倉庫業に求めていること」を紐解き、顧客から継続して選ばれるための具体的なポイントについて解説します。
最後までお読みいただければ、自社が発信すべき強みを理解し、どう営業活動を進めるべきかが明確になり、新規開拓を前進させるヒントが得られます。
倉庫業を利用する顧客(荷主)が求めていることとは?

新規開拓を成功させる第一歩は、顧客である荷主が「倉庫に何を求めているのか」を正確に把握することです。荷主が倉庫選びで重視する主要な選定基準を4つ解説します。
トータルコストの適正化(単なる保管料の安さではなく費用対効果)
荷主は「坪単価」や「パレット単価」といった単純な保管料の安さだけを見ているわけではありません。入出庫にかかる荷役料、流通加工費、さらには配送拠点までの横持ち費用やエンドユーザー(消費者)への配送料を含めた「物流全体のトータルコスト」を気にしています。
そのため、「保管料は安いが、ミスが多くて対応コストがかかる倉庫」よりも、「少し割高でも、作業品質が高くクレーム対応や返品処理のコストが下がる倉庫」のほうが、結果的に費用対効果が高いと判断されやすくなります。
立地条件と配送ネットワークの利便性
倉庫の立地は、荷主のサプライチェーンに直結する重要な要素です。
「主要な高速道路のインターチェンジや港に近いか」といったアクセスの良さはもちろん、「ラストワンマイル(最終拠点から消費者まで)の配送網を構築しやすいか」「特定の路線便・宅配業者の集荷時間に融通が利くか」など、立地と配送ネットワークを掛け合わせた利便性が強く求められています。
物量の波動(時期による増減)に対する柔軟な対応力
EC通販や季節商材(アパレル、イベント用品など)を扱う荷主にとって、繁忙期と閑散期の「物量の波動」は大きな課題です。
「セール時期に急激に物量が増えても、スペースや作業人員を柔軟に確保してもらえるか」という拡張性や柔軟性は、荷主にとって非常に安心感があり、倉庫選びの強力な決め手となります。
WMS(倉庫管理システム)などのIT化による正確性と効率化
現代の物流において、正確な在庫管理は必須条件です。荷主は「いつでも自社の在庫状況や出荷状況をリアルタイムで把握したい」と考えています。
WMS(倉庫管理システム)を導入し、荷主側の受発注システム(カートシステムやERP)とスムーズにデータ連携ができるIT対応力は、誤出荷を防ぐだけでなく、荷主側の事務作業を大幅に削減できるため、高く評価されます。特に、バーコードやハンディターミナルを使った検品体制、ロット・賞味期限単位でのトレーサビリティ管理など、業種特有のIT要件にどこまで対応できるかも、荷主が比較検討する際の判断材料になります。
継続的に利用される倉庫として選ばれるための手順

顧客のニーズを理解した上で、実際に「選ばれる倉庫」になるためにはどのような行動や対応が必要なのでしょうか。具体的な手順を3つに分けて解説します。
自社の強みを明確にし、ターゲットを絞る
「何でも預かります」という汎用的なアピールでは、価格競争に巻き込まれがちです。まずは自社の強み(USP:Unique Selling Proposition)を明確にしましょう。
「アパレル商材の検針・タグ付けなどの流通加工が得意」「定温・冷蔵倉庫の設備がある」「大型機械や建材の保管実績が豊富」など、自社が勝てる領域を定義します。強みが明確になれば、「どこの業界の、どんな荷主を狙うべきか」というターゲットが自然と絞り込めます。
御用聞きから脱却し、荷主の課題を解決する「提案型営業」へ
「空きスペースがあるので使いませんか?」という単なる御用聞き営業では、荷主の心を動かすことはできません。
荷主が抱えている「誤出荷が多くて困っている」「物流担当者が退職してしまい、業務が回らない」といった潜在的な課題をヒアリングし、「当社のこの設備とノウハウを使えば、その課題をこう解決できますよ」と提示する「提案型営業」へ切り替えることが重要です。
柔軟なコミュニケーションとトラブル時の迅速な対応力を伝える
物流業務において、イレギュラーな事態やトラブルを完全にゼロにするのは困難です。だからこそ、荷主は「トラブルが起きた際の対応力」を重視しています。
ここでの柔軟性は、先述したスペースや作業人員といった物量波動への物理的なキャパシティとは別の話です。遅延や商品破損が発生した際に、ごまかさずに迅速かつ誠実な報告ができるか。チャットツールなどを用いて日頃から密なコミュニケーションが取れるか。こうした「人」が関わる部分での柔軟な対応力が、継続的な契約(リピート)に繋がる最大の要因になります。
新規開拓を成功させる具体的な営業手法と体制づくり

戦略が固まったら、次はいよいよ実行に移ります。しかし、多くの倉庫業では「現場が忙しくて営業する時間がない」という課題に直面します。ここでは、無理なく新規開拓を進めるための手法と体制づくりについて解説します。
ターゲットリストの精査と、効果的な提案手法の選定
自社の強みが活かせるターゲットに基づき、営業する企業のリストを作成します。リストができたら、自社の工数とターゲット層に合わせた営業手法を選定します。
テレアポ・DM: 特定の業界やエリアに絞って直接自社を提案したい場合に有効です。
展示会への出展: 一度に多くの見込み客と名刺交換ができ、対面で信頼構築がしやすい手法です。
Web集客(SEO・広告): 「倉庫 委託」など、すでに課題が明確になり顕在化している荷主を検索経由で集めることに適した手法です。自社が対応できる荷物の特性や設備、実績をWebサイト上で発信しておくことで、Google検索だけでなくAI検索経由でも、倉庫を探している荷主に見つけてもらいやすくなります。検索・AI検索からの問い合わせ獲得を目的としたWeb集客の仕組みづくりを行う場合は、長期的な施策となるので、外注を検討することも選択肢の一つです。
3つの手法を紹介しましたが、倉庫業ならではの効果的な営業手法として「FAX営業」も有効な施策です。
以下の動画でも解説致しましたが、メーカーやEC事業者、卸売業などのお客様は、すでにどこかの倉庫と取引している場合がほとんどです。そのため、1社ずつ地道に営業をかけても「今は間に合っている」と断られやすくなります。
重要なのは、「今まさに倉庫を切り替えたい・拡張したい」と考えている企業を効率よく見つけ出すことです。FAX営業であれば、自社に専任の営業マンがいなくても、自社の強みを数千社規模に一瞬で一斉に届けることができ、タイミングよく切り替えを検討していた荷主からの反響を効率的に集めることが見込めます。
動画でご紹介したFAX営業ですが、自社での対応が厳しい・紙面の作成方法がよくわからないという場合は、営業リスト・FAX紙面の作成、配信設定などを一括で我々は対応していますので、お気軽にご相談ください。
現場対応と営業活動を両立させるための社内体制の構築
多くの中小規模の倉庫では、所長や現場責任者が営業を兼任しており、「現場のトラブル対応や既存顧客のフォローに追われ、新規開拓に手が回らない」という悩みを抱えています。
これを解決するには、「週に半日は現場を離れて営業活動に専念する時間をブロックする」「現場の流れをマニュアル化し、特定の担当者に依存しない体制を作る」など、社内の業務フローを見直し、意図的に営業活動のためのリソースを捻出する体制構築が必要です。
人手不足の中で現場対応と営業を両立させるという課題は、倉庫業に限った話ではありません。運送業における人手不足と利益確保の両立については、以下でも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
物流業の利益改善について|人手不足でも売上確保を両立させる経営戦略とは?
【補足】人手不足の場合は「営業代行」という選択肢も
「頭では分かっていても、どうしても社内で営業担当を採用・育成する時間がない」という場合は、外部の営業代行サービスを活用するのも有効な手段の一つです。
物流業界の動向に詳しい営業代行であれば、即戦力として「提案型営業」を任せることができます。自社は現場の品質向上やオペレーション改善に集中しつつ、1日でも早く空きスペースを埋めることが可能になるので、費用対効果の高い選択肢となります。
まとめ
荷主に選ばれる倉庫であり続けるためには、自社の強み(USP)を明確にした上で、御用聞きではなく課題解決型の提案営業へ踏み出すことが次の一歩になります。
まずは自社の強みを棚卸しし、その強みが最も響く荷主像を具体的に描くところから始めてみましょう。ターゲットが明確になれば、テレアポ・Web集客・FAX営業など、自社に合った新規開拓の手法も選びやすくなります。
「強みは見えているが、営業に割ける人員や時間がない」という場合は、外部の営業代行サービスを情報収集の選択肢に加えてみるのも一つの方法です。まずは資料で、自社の課題に合う進め方かどうかを確認してみてください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。