健康食品やサプリメントをネット通販で売ってきたものの、広告費をかけ続けないと売上が保てず、利益が残りにくいと感じたことはありませんか?改善策として、エステサロンや整体院などの店舗に商品を置いてもらいたいと考えたものの、店で売るのに許可は要るのか、店頭でどこまで説明してよいのか、取引のない店に営業すればよいのかが分からない…そうした悩みを持つ健康食品メーカー・販売元の方に向けた記事です。
錠剤・カプセル・粉末など、常温で保存できる包装済みの健康食品を仕入れて売るだけであれば、店側に食品衛生法の許可や届出、薬剤師などの資格は原則いりません。ですが導入にあたって気をつけたいのは、店頭での説明やPOPの表現です。メーカーが「説明してよい範囲」と販促物、取引条件を揃えることで、店は導入を判断しやすくなります。
本記事では、店舗・サロンを販路にする利点と注意点、店で売るときの許可・届出、店頭の説明やPOPで守る表示と広告のルール、健康食品を扱いやすい業種、導入店への提案と取引条件、取引のない店舗への案内方法について解説します。
健康食品の販路を店舗・サロンに広げる利点と注意点
ネット通販は全国の消費者に届けられる一方、広告費をかけ続けないと売上を保ちにくい面があります。その点、店舗・サロンへ商品を卸すことは、通販を続けながら売上の柱を増やす方法のひとつです。
店舗・サロンで売る3つの利点
1つ目は、店のスタッフと来店客の間に、すでに信頼関係があることです。
卸先となる整体院やサロンに来店するお客様は、日頃から施術や接客を受けているスタッフから商品の説明を聞くことになります。ネット上で初めて商品を知る場合と比べて、常連顧客は店舗スタッフをその道のプロと認識している為、商品の特徴や効果に納得したうえで買ってもらいやすくなります。
2つ目は、定期的に来店する業態が多いことです。
エステサロンや整体院、フィットネスジムは、同じお客様が数日・数週間ごとに来店します。そのため次の来店時にスタッフが使い心地をヒアリングでき、気に入ったお客様には継続購入を促しやすく買ってもらいやすくなります。
3つ目は、来店客の健康に関する関心がはっきりしていることです。
美容に関心のある方はエステサロンに、運動や体づくりに取り組む方はジムに集まります。自社商品の特徴や効果が合う客層の店に売り込む事で、商材のターゲット層に直接商品を届けられます。
店舗販路で気をつけること
店舗への卸値は、消費者に直接売る小売価格より低くなります。この背景として、店側が利益を得られる価格に変更する必要があるためです。また、1店あたりで売れる数はそこまで多くない為、法人取引で売上を伸ばすには取扱店の数を増やしていくことが前提になります。
さらに、売れ行きは卸す店で売り込むスタッフの説明に左右されます。スタッフはあくまでも該当商品の専門家ではないため、何をどう説明すればよいかをメーカーが伝える必要があります。
店舗・サロンで健康食品を売る際の許可と届出について
店が仕入れて売る場合は許可・届出が要るのか?
健康食品は、法律上は「食品」に分類されます。医薬品のような販売の制限はなく、店側が仕入れて売るために薬剤師などの資格は必要ありません。
ですが食品衛生法では、2021年6月1日から、飲食店などの営業許可に加えて「営業届出」の制度が始まりました。営業許可が必要な業種と、届出の対象外とされた業種を除き、食品を扱う営業には保健所への届出が必要です。
届出の対象外には、常温で長期間保存しても腐敗・変敗など品質の劣化による食品衛生上の危害のおそれがない包装食品の販売業が含まれています。錠剤・カプセル・粉末などの健康食品を、包装されたまま仕入れて売るだけのサロンや整体院は、多くの場合がこれに該当するため、許可も届出も原則として不要です。
一方で、冷蔵・冷凍が必要な商品を売る場合や、店で商品を小分けする場合、ドリンクにして消費者に提供する場合は、届出や許可の対象になることがあります。届出では、届出者の氏名、施設の所在地、営業の形態、主に扱う食品、食品衛生責任者の氏名などを保健所に提出します。どの扱いになるかは、店の所在地を管轄する保健所で確認します。
このほか、店側が店頭だけでなくネットでも販売する場合、特定商取引法による通信販売の表示のルールが加わります。また、医薬品の成分を含むものは、健康食品として販売しても医薬品とみなされ、薬機法の規制を受けます。導入を検討する店から「うちで売るのに何か手続きは要るのか?」と聞かれる場合もあるため、メーカー側は自社商品の保存方法と形状を踏まえて、この点を説明できるよう事前に把握しておきましょう。
メーカーが製造・輸入する場合の手続き
自社で健康食品を製造する場合は、作る食品の種類や工程によって、営業許可が必要なもの(清涼飲料水製造業、菓子製造業など)と、届出で足りるものに分かれます。「食品製造業許可」という1つの許可があるわけではないため、管轄の保健所で確認してください。もしOEMで製造を委託している場合は、製造所の側で許可や届出を行います。
また、海外から輸入する場合は、輸入のたびに検疫所へ食品等輸入届出を行います。(参考:東京都健康安全研究センター「健康食品を取り扱う際の確認ポイント」)
なお、紅麹関連製品の事案を受けて、サプリメントの定義や、製造管理(GMP:適正製造規範)を義務づける範囲、営業許可・届出のあり方が国の審議会で検討されています。2026年6月19日の中間とりまとめでは、錠剤・カプセル剤などはGMPの遵守を義務づけることが適当とされ、営業許可・届出のあり方は厚生科学審議会で検討するとされました。制度が改正された際、厚生労働省・消費者庁が情報を発信するのできちんと確認しましょう。
参考:食品衛生基準審議会 新開発食品調査部会「サプリメントの規制の在り方に関する中間とりまとめ」(PDF)
店頭の説明・POPで守る表示と広告のルール
薬機法:医薬品のような効能をうたわない
いわゆる健康食品(機能性表示食品などの保健機能食品以外)は、病気の治療や予防、身体の組織機能の増強といった、医薬品のような効能をうたえません。「肝機能の改善」「視力回復」といった表現は、この規制に当たります。厚生労働省の通知(いわゆる46通知)では、「疲労回復」「体力増強」「老化防止」なども医薬品的な効能の例に挙げられています。
この規制は、容器・包装やチラシだけでなく、店頭での口頭の説明も対象です。サロンや整体院では、施術中の会話で来店顧客の体の悩みを聞くことが多く、その流れで悩みと商品を結びつけて話した場合、医薬品的な効能をうたったことになります。
卸先のスタッフが迷わないよう、メーカーは「説明してよい範囲」を事前に書類などで渡しておきましょう。原材料、1日の目安量、飲み方、味、栄養補給としての位置づけなど、商品の事実を中心にした説明の例と、避ける表現の例を詳細にまとめることで、スタッフは安心して案内できます。
景品表示法・健康増進法:実際より優れていると思わせない
「飲むだけで10kg痩せる」のように、実際よりも著しく優れていると誤認させる表示は、景品表示法と健康増進法で禁止されています。広告には、店内のPOP、チラシ、パンフレットのほか、口頭による説明も含まれます。
また、2つの法律は、違反したときの扱いが異なります。健康増進法の虚偽誇大表示の禁止は「何人も」が対象で、違反には指導、勧告、命令があり、命令に従わない場合は罰則があります。景品表示法では、措置命令に加えて、優良誤認表示などに課徴金が課されることがあります。2024年10月1日施行の改正では、過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者が再び違反した場合の加算(1.5倍)や、故意の優良誤認表示・有利誤認表示への直接の罰則(100万円以下の罰金)が設けられました。
消費者庁の留意事項では、健康食品の表示の責任を負うのは製造業者・販売業者と整理されています。メーカーが作って店に渡したPOPやチラシでも、表現によっては、メーカーだけでなくそれを使って売る店も責任を問われることがあります。導入店に表現のルールを伝えることは、メーカーと店の双方を守ることにも繋がります。
食品表示と保健機能食品のルール
健康食品も食品として、食品表示法に基づき、容器包装にアレルギー表示や栄養成分表示などを行う必要があります。表示に誤りがあると、商品の回収が必要になることがあります。
アレルギー表示については、2026年4月1日の食品表示基準の改正で、表示が義務となる特定原材料に「カシューナッツ」が加わりました。表示を切り替えるための経過措置は2028年3月31日までのため、カシューナッツを使う商品は、ラベルを更新し、店に渡すカタログや規格書の記載もラベルと合わせる必要があります。(参考:消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」)
機能性表示食品と特定保健用食品(トクホ)については、届け出た(許可を受けた)範囲の機能だけを表示できます。店頭のPOPや口頭の説明でも、その範囲を超えないようにしましょう。サプリメント形状の機能性表示食品は、2026年9月1日から、GMPに基づく製造管理が完全に義務化されました。また2024年9月1日から、機能性表示食品の届出者と特定保健用食品の許可を受けた者には、医師の診断を受けた健康被害の情報を得たときに、行政へ情報提供することが義務づけられています。販売店に報告の義務があるわけではありませんが、店側に寄せられた体調に関する申し出をメーカーに連絡してもらう取り決めをしておくと、届出者として対応しやすくなります。(参考:消費者庁「機能性表示食品について」/厚生労働省「いわゆる『健康食品』のホームページ」)
健康食品を扱いやすい店舗・サロンの業種
売り先を選ぶときは、自社商品の客層・価格帯と店の客層が合うか、店に物販の棚や受付での販売の仕組みがあるかを確認します。代表的な業種は次のとおりです。
| 業種 | 来店客の関心 | 合いやすい商品の例 | 店での売り方 |
| エステサロン・美容室 | 美容、食生活 | コラーゲンなど美容を意識した原材料の商品、健康茶 | 施術後の店販、受付での販売 |
| 整体院・接骨院 | 体づくり、日常の健康管理 | プロテイン、ビタミン・ミネラルのサプリメント | 受付・待合での販売 |
| フィットネスジム・スポーツ施設 | 運動、体づくり | プロテイン、運動時の栄養補給用の食品 | 受付での販売、トレーナーからの案内 |
| 牛乳宅配など定期訪問の業態 | 日々の食生活 | 常温で保存できる健康食品、飲料 | 定期配達に同梱、注文票での追加注文 |
| ホテル・旅館のスパや売店、セレクトショップ | 旅の記念、こだわりの品 | 地域の特産品を使った商品、ギフト向けの商品 | スパでの店販、土産としての販売 |
整体院と接骨院は、同じように見えても別の業態です。接骨院は柔道整復師が施術を行う施術所で、整体院には民間資格の施術者や資格を持たない施術者も含まれます。どちらの場合も、施術の一環として商品を勧めると、体の不調が改善するかのように受け取られやすいため、「説明してよい範囲」に沿って案内してもらいましょう。また、エステサロンでも、施術と商品を組み合わせた効果をうたう説明は避けるべきです。
介護施設の場合、入居者の食事や栄養に施設の管理栄養士や医師の判断が入り、施設内の売店や面会の家族向けの販売など、扱い方が施設ごとに異なるため、この表には含めていません。
上記の表を参考に提案する業種と地域が決まったら、次は実際に営業をかける法人リストをつくりましょう。弊社では、FAX番号入りの営業先リストのサンプルを提供していますので、対象の企業件数を把握したいと思う場合はご活用ください。
導入店への提案と取引条件
店に残る利益と「売る手間」を減らす支援を示す
店側は新しい商品を置くかを、売れるか、店に利益が残るか、スタッフの負担が増えないかで判断します。提案の際は、卸値だけでなく、想定する小売価格と1個あたりに店へ残る利益を数字で提示しましょう。その際、既存の施術メニューや会員プランと組み合わせた売り方を提案すると、店側が売り方のイメージがしやすくなります。
また、スタッフの負担を減らす支援も提案に含めましょう。本記事でご説明した謳い文句やルールに沿った表現のPOPやチラシをメーカーが用意する、スタッフ向けに商品の説明会を開くなど双方にとって安全な対応を取り入れている旨を伝えましょう。
提案資料には、最低限次の項目をまとめておくと安全です。
- 卸値と想定小売価格(店に残る利益)
- 最低発注数、納品方法、送料
- 賞味期限、保存方法
- 原材料、アレルゲン
- 店側で手続きが要るかどうかの整理
- 説明してよい範囲と、用意できる販促物
- 取引の形(委託販売か買取か)
委託販売と買取の違いと取り決めておくこと
顧客となる店との取引の形には、主に委託販売と買取があります。
| 項目 | 委託販売 | 買取 |
| 商品の所有 | 売れるまではメーカー | 納品した時点で店 |
| 売れ残りの負担 | メーカー(回収する) | 店 |
| メーカーへの入金 | 売れた分を精算するとき | 取り決めた支払い条件に従う |
| 在庫の確認・回収・精算の手間 | メーカー側に残る | 少ない |
| 卸値の考え方 | 店の取り分を差し引いて精算 | 店が在庫を持つ分、卸値を下げる考え方がある |
初めて取引する店には、店が在庫を抱えずに済む委託販売から提案すると、導入を検討してもらいやすくなります。店側も売れ行きが分かり、徐々に信頼関係ができてから買取への移行を提案しつつ、その分卸値を下げる事でメーカーは入金が早まり、店は1個あたりの利益が増え、互いにとってメリットとなります。
いきなり買取の場合でも、次の点を取引前に決めておきましょう。
- 返品や、賞味期限が近づいた在庫の扱い
- 精算・支払いの周期
- 来店客から体調に関する申し出があった場合の連絡先と連絡方法
取引のない店舗・サロンに案内を届ける方法
店舗・サロンのオーナーは施術や接客が仕事の中心で、展示会に足を運ぶ機会が限られます。また、顧客が新しい店販商品を探す時期を取引のない会社が外から知ることも困難です。そんな状況でも、自社商材を対象企業に知ってもらう機会を常につくることで、商談機会を獲得します。ですが、急な飛び込み営業は、接客の時間を割いてしまいかえって印象が悪くなる可能性もあります。そんなときはFAX・郵送DM・チラシなどの紙媒体を活用して初回連絡を行ってみましょう。
紙媒体での営業は、電話や訪問と違って施術や接客の手を止めさせず、手が空いたときに読んでもらえますし、営業の専任者がいない会社でも、定期的に案内を送ることができます。紙面には、店に残る利益、最低発注数、委託販売に対応できるか、サンプルを用意しているかなど、提案資料の要点を載せましょう。実際に弊社のFAX営業代行を活用して取引先を開拓した事例は以下の動画で解説しています。
まとめ
店舗・サロンへの卸で店がためらいやすいのは、手続きよりも、商品をどう説明して売ればよいかという点です。メーカーが説明してよい範囲と販促物、取引条件まで用意して提案することで、店側が検討しやすくなります。
まずは、自社商品のラベル、説明文、販促物の表現を、薬機法・景品表示法に従って点検しましょう。そのうえで、商材を利用するターゲットが多くいる法人を考え、委託販売か買取か、卸値と最低発注数はどうするかなどを決めておくと、営業活動にすぐ移ることができます。
取引のない店舗・サロンへの案内を外部に任せたい場合は、案内する業種・地域の選定から、商品案内をまとめたFAX紙面作成、営業先リストの準備、配信対応までを代行する、営業代行サービスもご検討ください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。