
法人営業では、「どの企業に営業をかけるか」という営業先リストの作成はできても、「いつ、どのように声をかければ響くのか」というタイミングの見極めは簡単ではありません。
個人の住宅購入が感情的な要因で動くことが多いのに対し、企業の不動産取引は経営資源の最適化という明確な目的で動く点に特徴があります。裏を返せば、その目的=経営課題を理解できれば、法人営業のタイミングや方法が的確につかめるようになります。
本記事では、企業が不動産の専門家を必要とする代表的な3つの転機と、新人担当者でも実践できる提案の進め方について詳しく解説致します。
法人顧客が動く決定的な「3つのタイミング」

法人が不動産取引を検討するのは、不動産そのものが目的ではなく、経営上の課題を解決する手段として不動産が選択肢に上がったときです。ここでは代表的な3つの転機を紹介します。
①財務体質を改善し、企業価値を高めたい時
企業は資産効率の向上を継続的に求めており、保有不動産を売却して賃貸に切り替える「オフバランス化」によって総資産を圧縮し、投資家評価に関わる総資産利益率(ROA、当期純利益を総資産で割った指標)の向上を目指すニーズが生まれます。
キャッシュフローの確保: 遊休資産の売却や、自社物件を売却したうえで賃借を続ける「セール・アンド・リースバック」により、運転資金や新規事業への投資資金を確保したいタイミングは、提案の好機です。
特別利益の計上: 帳簿価格を上回る価格での売却により、当期の決算を押し上げたいという財務上の需要も存在します。
②事業の効率化や拠点の再編を迫られている時
老朽化した設備や非効率な拠点配置は、維持管理コストの増大という形で経営を圧迫します。
未利用地を放置するリスク: 国土交通省「令和5年法人土地・建物基本調査 結果の概要」(2025年9月公表)によると、法人が所有する宅地等のうち12.4%が低・未利用地であり、そのうち74.8%が5年以上前から低・未利用の状態にあります。さらにその約56%は「今後も転換の予定はない」土地であり、放置が長期化しやすい実態がうかがえます。こうした土地は不法投棄や企業イメージ低下のリスクを抱えており、有効活用の提案が求められます。
拠点の集約・建て替え: 業務効率化を目的とした工場の集約や本社移転は、既存不動産の売却と新規土地取得がセットで発生する重要な局面です。
③事業承継やリスク管理が必要な時
経営者交代(事業承継)や、企業の社会的責任(CSR)が問われるタイミングです。
資産整理: 後継者の負担軽減や相続税対策として、不要な不動産の整理が必要になります。
環境・法務リスクへの対応: 土地に潜む土壌汚染や、建物に含まれるアスベストといったリスクを、将来のトラブルを防ぐために今のうちに解消しておきたいという心理も、取引のきっかけになります。
新人でも実践できる!提案の進め方

法人の窓口担当者が求めているのは、単なる物件紹介ではありません。「この不動産をどう扱えば自社の利益になるのか」に担当者の悩みは集約されています。ここでは、新人さんでも実践できる提案の進め方を3つに分けて紹介します。
事前準備としての情報収集
登記情報や有価証券報告書(上場企業を中心に開示される財務資料)から、遊休地や老朽物件の保有状況、財務状況を調査し、相手企業が抱えていそうな課題を仮説として立てておくことが重要です。
専門家との連携
銀行や税理士、会計士などの士業と連携することで、企業の経営課題に踏み込んだ、信頼性の高い営業が可能になります。あわせて、対応できる業種や実績を自社サイトで発信しておくことも有効です。CRE戦略やセール・アンド・リースバックをGoogleやYahooなどの検索エンジンで情報収集や解決方法について調べている企業の総務・経営企画担当者に自社を見つけてもらう窓口が増えることや、SEO対策(検索エンジンへ見つけられやすくする施策)を行う事で専門家として人やインターネットから認知される機会が広がります。
また、最近はAIを活用し解決方法や企業を探す方も増えている為、検索・AI検索経由で問い合わせを増やし、Web経由での集客を増やす仕組みづくりを取り入れる事で人件費や工数を割かずにお客様と接点を取ることができます。自社での運用が厳しいという場合は代行サービスなども検討しましょう。
意思決定に関する手順の理解
法人取引では、一定規模以上の取引について、取締役会での決議など厳格な手順を経る必要があります(取締役会設置会社が重要な財産を処分・譲受けする場合は、会社法362条4項1号により取締役会の決議事項とされています)。決議には時間を要することも少なくないため、必要資料の作成サポートやスケジュール調整の助言ができれば、単なる業者ではなく「自社の経営に関わるパートナー」としての立場を築けます。
登記情報や有価証券報告書からの仮説立てから、意思決定に関する伴走まで、新規開拓の一連の実務を自社だけで回すには相応の時間がかかります。新規顧客への初期接点となる声掛けにお困りの場合は、開封された状態でオフィスに届くFAXを使った営業を取り入れる事で、見込みの高い顧客へ割く時間を作る事が可能になります。実際に自社の対象となる企業が対応可能地域に何件いるか知りたいという場合は下記をご利用ください。
まとめ
法人顧客の獲得で鍵となるのは、物件そのものの魅力ではなく、「顧客の経営効率向上や財務体質改善にどう貢献できるか」を示せるかどうかです。顧客となる企業にとってただの取引先でなく、頼りになる企業として経営課題に踏み込む姿勢こそが、長期的な取引関係につながります。
営業先となる企業情報やリスト収集、提案する時間や工数を抱えきれないと感じたら、お気軽にご相談ください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。