
動画制作のスキルや実績はあるのに、法人向けの新規開拓がうまくいかず悩んでいませんか?コンペでの価格競争や、単価の低い下請け案件ばかりで利益率が上がらない現状から脱却するには、営業手法の根本的な見直しが必要です。動画市場が拡大し参入者が急増する現在、単なる「制作スキル」のアピールだけでは企業から選ばれません。
本記事では、高単価な直案件を獲得するための「提案型営業」の具体的な手法から、人手不足を補う営業の仕組み化までをまとめて解説します。本記事の内容を実践することで、クライアントの課題を解決する取引先として選ばれ、継続的に受注できる体制を構築できます。
動画制作会社における法人営業の重要性と現状

法人向け動画制作の分野において、自社主導で営業活動を行う重要性は年々高まっています。どれほど優れた制作スキルや最新の機材を備えていても、案件の依頼を待っているだけの姿勢では、安定した売上基盤を構築することは困難です。特にBtoB(企業間取引)の領域では、クライアントが抱える事業課題を解決する手段として動画が求められており、制作会社側から能動的に価値を提示する営業力が必要となっています。ここでは、現在の動画制作を取り巻く市場環境と、積極的な法人営業が求められる背景について解説します。
動画市場の拡大に伴う競争の激化
通信環境の向上や各種SNSの浸透により、動画を活用した集客市場は急速に拡大しています。需要の増加に伴い、制作ツールの発展によって参入ハードルが下がり、個人のクリエイターやWeb制作会社など他業種からの参入が相次いでいます。結果として市場の競争は激化しており、単なる「質の高い動画を作れる」というアピールだけでは競合に埋もれやすく、安易な価格競争に巻き込まれるリスクが高まっています。
下請けや代理店依存から脱却する必要性
多くの制作会社が広告代理店からの孫請けや、単価の低い外注案件に依存している現状があります。しかし、この構造では利益率が圧迫されるだけでなく、クライアントの真の課題に直接触れる機会が失われてしまいます。中長期的な事業成長を目指すには、自社の強みを直接企業に売り込み、高利益率な直案件を獲得する体制への移行が急務です。独自の法人顧客を開拓し、下請けからの脱却を図ることが重要です。
動画制作の法人営業を成功に導く事前準備

法人営業を本格的に開始する前に、基盤となる事前準備を徹底することが成約率を大きく左右します。行き当たりばったりの売り込みや、他社と同じような汎用的な営業トークでは、多忙な企業の担当者に話を聞いてもらうことはできません。自社の強みや制作実績を客観的に整理し、ターゲット企業に対して「なぜ数ある制作会社の中から自社を選ぶべきなのか」を明確に提示できる状態を作ることが必要です。ここでは、商談の成功率を飛躍的に高めるために欠かせない3つの事前準備について具体的に解説します。
自社の強みとターゲット業界の明確化
自社独自の強みを言語化し、提案する業界を絞り込みます。「製造業の採用動画に強い」「物流業界向けの実写に特化」など得意領域を明確にすることで、競合との差別化が可能です。ターゲットを絞るほど、顧客特有の課題に刺さる解決策を提示できるようになります。
商談を有利に進める事例の構築
過去の制作実績をまとめた事例は、営業の強力な武器です。単に美しい映像を並べるのではなく、「どのような事業課題に対し、どう提案し、結果的にどんな成果が出たか」という制作背景まで記載することが重要です。顧客が自社の課題解決を具体的にイメージできる構成に仕上げましょう。
費用対効果を提示できる提案資料の準備
BtoBの商談では、映像のクオリティ以上に「投資に見合う効果(ROI)があるか」が厳しく問われます。動画導入による問い合わせ数の増加シミュレーションや、営業コストの削減効果などを数値で示せる提案資料を準備しましょう。決裁者が社内稟議を通しやすい客観的データを用意することが成約の鍵です。
新規案件を獲得する法人営業の具体的な手法とは?

事前準備が整ったら、実際の営業活動に移ります。自社の課題や目的に応じて、自ら問い合わせを取りに行く営業(プッシュ型)と問い合わせを待つ営業(プル型)の2つの手法を組み合わせることが、高利益率な直案件獲得の鍵となります。下請けから脱却し、能動的にターゲット企業を開拓する代表的な4つの営業手法について、それぞれの特徴とポイントを解説します。
テレアポ営業:受付突破から商談獲得のコツ
テレアポは、自社が狙うターゲット企業へ直接声を掛けることができる有効な手段です。受付を突破するには「映像制作の売り込み」ではなく、相手のメリットとなる「課題解決」を簡潔に伝えるトークスクリプトが大切です。決裁者へ繋ぐため、事前に企業の動向を調べ、具体的な改善策を示唆することで商談の獲得率が向上します。
メール営業:開封率と返信率を高める件名・文面
メール営業は低コストで広く営業できる反面、読まれずに破棄されやすいのが難点です。開封率を上げるには、件名に「【貴社向けの動画活用案】〇〇の課題解決について」など個別性を持たせることが重要です。文面では自社の実績を長々と語るのではなく、相手企業の業界動向や悩みに触れ、それに対する具体的な解決策を簡潔に記載して返信を促します。
メールの読まれずに破棄されやすい特徴を逆手に、手元に残る郵送DMやFAXを活用する事も効果的です。送る場合は売り込み感を感じさせず、相手にとってメリットとなる特典(オファー)と、仮説を立てた課題の解決策を提示することで反応率を上げます。
SNS・自社サイトを活用した反響型の集客
長期的な資産となるのが、自社サイトやSNSを通じたインバウンド(反響型)営業です。実績動画の掲載に加え、「BtoB企業向け動画の活用法」といった検索エンジンの最適化に特化したコンテンツを発信し、検索からの流入(集客)を狙います。自社の専門性をアピールすることで、価格競争になりにくい質の高い見込み客を継続的に獲得する仕組みが構築でき、営業工数の削減にも繋がります。
クラウドソーシングやビジネスマッチングの活用
自社の実績が少ない段階では、ビジネスマッチングサービスなどの活用も一つの手です。顕在化している案件に直接応募できるため、初動の見込み顧客獲得に役立ちます。ただし、競合が多く価格競争に陥りやすいため、単なる見積もり提示ではなく独自の付加価値を添えた提案を心がけ、次回以降の直接取引(直案件)に繋げていく視点が大切です。
成約率を劇的に上げる「提案型営業」の実践方法

法人営業において、自社を選んでもらうためには単に「綺麗な映像を作る」以上の価値提供が必要です。顧客の真の課題に深く寄り添い、解決策として動画を活用する「提案型営業」の実践こそが、成約率を飛躍的に高める最大の鍵となります。ここでは、単発の依頼から継続的な取引関係へと発展させるための具体的な実践方法を解説します。
制作にとどまらない「事業課題の解決」を軸にした提案
企業が動画制作を依頼する背景には、「売上を伸ばしたい」「採用を強化したい」などの事業課題が必ず存在します。映像の技術をアピールするのではなく、顧客の課題を深く理解し、「動画をどう活用すればその課題を解決できるか」を提示する提案型営業が成約の鍵です。制作業者ではなく、専門的な知識を持っている立場としての立ち位置を確立しましょう。
初回商談で必ず押さえておくべきヒアリング項目
初回商談では、顧客の潜在的な課題を引き出すヒアリングが重要です。「動画の用途」や「予算」だけでなく、「現状の課題」「最終的な目標(KGI・KPI)」「競合との差別化ポイント」を深掘りします。これらの項目を事前にリスト化し的確な質問を投げることで、的を射た提案が可能になり、顧客からの信頼感も大きく向上します。
競合とのコンペを勝ち抜く提案書作成と提案手法
コンペ(相見積もり)を勝ち抜くには、ヒアリング内容に基づいた独自性のある提案書が必須です。構成案や見積もりだけでなく、動画完成後の「運用フロー」や「期待される費用対効果」まで具体的に記載します。プレゼンでは専門用語を避け、決裁者が「自社の課題が解決するイメージ」を持てるよう、論理的かつ情熱的にストーリーを語ることが成約への近道です。
不毛な値引き交渉を回避する価値提案
価格競争に巻き込まれないためには、VA/VE(価値分析/価値工学)の考え方を取り入れた提案が有効です。単なる値引きに応じるのではなく、「目的を満たしつつコストを抑える代替案」や「少しの追加予算で得られる大きな付加価値」を提示します。価格妥当性を論理的に説明し、納得感のある予算配分を提案することで高利益率な案件を獲得できます。
営業マン不足を解消する「営業代行」の戦略的活用

動画制作会社の多くは、クリエイターやディレクターが営業を兼任しているなど、営業工数の不足という課題を抱えています。日々の制作業務に追われる中で、新規開拓を安定的かつ継続的に行うことは容易ではありません。そこで有効なのが、BtoBに特化した「営業代行」の戦略的に活用することです。自社の人員は付加価値の高い企画提案や制作業務に集中させつつ、見込みの高い顧客の開拓は、プロに委ねることで、効率的な案件獲得の仕組みを構築できます。ここでは、営業代行の活用メリットと選び方について解説します。
動画制作会社がBtoB営業代行を利用するメリット
営業代行の最大のメリットは、テレアポなどの見込みがありそうな顧客を獲得するという、手間のかかる業務をプロに任せ、自社は商談や提案、制作に専念できる点です。BtoB営業のノウハウを持つ代行会社であれば、的確なサービス提案が期待できます。また、専任の営業担当者を採用・育成するコストや離職リスクを抑えつつ、必要なタイミングで柔軟に営業活動を拡大できるため費用対効果にも優れています。
失敗しない営業代行会社の選び方と自社連携のコツ
選定時は「BtoBの無形商材(制作・ITなど)の営業実績が豊富か」を必ず確認しましょう。単なる架電数ではなく、自社の強みを理解し質の高い商談を創出できるかが重要です。連携のコツは、定期的なミーティングで訴求ポイントを微調整することです。現場での顧客の反応を共有し合い、営業方針を継続的に改善する体制の構築が成功に繋がります。
継続受注と利益率アップを実現する仕組み化
新規顧客の開拓は重要ですが、制作会社として安定した売上基盤と高い利益率を確保するためには、獲得したクライアントからの継続受注(リピート)を増やす「仕組み化」が重要です。一般的に、新規顧客の獲得には既存顧客の維持よりも多くのコストや工数がかかるため、せっかくの直案件を単発で終わらせてしまうことは経営において大きな機会損失となります。ここでは、納品後の関係構築や営業工程の数値管理を通じて、持続的に利益を生み出す仕組みを構築する手法について解説します。
納品後の分析と別部門への横展開
動画納品後は、実際の反響や効果(再生回数やCV率など)を確認する状況確認と分析の場を必ず設けましょう。効果検証から次なる改善策や別パターンの動画を提案することで、単発案件を継続受注に引き上げることができます。また、顧客の信頼を得た段階で、同企業内の別部門(採用、広報、別事業部など)を紹介してもらう横展開を狙うことで、営業コストをかけずに優良案件を獲得しやすくなります。
営業活動の数値化による改善策の構築
属人的な営業から脱却するには、架電数・接触数、問い合わせ獲得率、商談化率、成約率といった各営業工程の数値化(KPI設定)が重要です。数値を可視化することで「問い合わせは取れるが提案段階で失注する」といった課題が明確になります。感覚ではなくデータに基づいた改善施策を立案し、改善と実行を繰り返すことで、組織全体の営業スキルが底上げされ、安定した案件獲得の仕組みが完成します。
まとめ:動画制作の法人営業は「提案力」と「仕組み化」が鍵
動画制作市場の参入者が増え競争が激化する中、下請けから脱却し高利益率な直案件を獲得するには、単なる「映像制作スキルのアピール」からの転換が必要です。自社の強みを明確にし、クライアントの事業課題を根本から解決する「提案型営業」を実践することが、他社との差別化と成約率の飛躍的な向上に直結します。
また、クリエイティブ業務と並行して新規開拓を続けるためには、人手不足を補う視点も欠かせません。BtoBに特化した営業代行の活用や、数値を可視化するKPI管理など、営業活動そのものを属人化させない「仕組み化」を取り入れることが重要です。適切な価値提案によって価格競争を回避し、納品後も効果測定を通じた分析と共有を徹底することで、継続的に発注される取引先としての強固な関係を築き上げましょう。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。