近年、営業組織の分業化が進み、インサイドセールスやカスタマーサクセスといった職種が広く普及しました。しかし、どちらも非対面で顧客と接する機会が多いため、具体的な業務内容や目標とするものの違いが分かりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。
効率的な組織運営を実現するには、各部門の定義を正しく理解し、適切な連携を図ることが大切です。
本記事では、営業に関して初心者の方に向けた両職種の根本的な違いや役割、求められるスキルを比較表を交えて徹底解説します。読み終える頃には、自社における最適な役割分担や、今後のキャリアパスを明確にイメージできるようになります。
インサイドセールスとカスタマーサクセスの定義と根本的な違い
インサイドセールス(IS)とカスタマーサクセス(CS)は、どちらも「非対面(オンライン)でのコミュニケーション」を主体とするため、混同されやすい職種です。しかし、営業活動における「役割と連絡するタイミング」が決定的に異なります。インサイドセールスは「契約前」の見込み顧客を対象とし、カスタマーサクセスは「契約後」の既存顧客を対象とします。このタイミングの違いを理解することが、それぞれの役割を整理する為に重要な点となります。
インサイドセールス(IS)とは:商談機会の創出
インサイドセールスは、マーケティングが獲得した見込み顧客(リード)に対して、電話やメール、Web会議を用いて商材を提案する職種です。主な目的は、顧客の抱える課題や悩みをヒアリングし、自社商材(サービスや商品)への関心を高めることで「より意欲の高い商談」を生み出すことにあります。外勤営業(フィールドセールス)へ効率よく案件を渡すための、橋渡し役としての機能を担います。インサイドセールスの詳細については下記でも詳しく解説しておりますので合わせてお読みください。
カスタマーサクセス(CS)とは:既存顧客のLTV最大化
カスタマーサクセスは、自社商材を購入・契約した後の顧客に対し、より使いこなして顧客の悩みや課題に対してより成果を出してもらうように、支援する職種です。単なる「受け身のサポートセンター」ではなく、顧客の成功を自ら能動的に働きかける点が特徴です。解約(チャーン)を防止し、継続利用や1つ上のプラン(アップセル)や別のオプション等を組み合わせること(クロスセル)を促進することで、1人の顧客により多くの利益をもたらして貰える(顧客生涯価値/LTV)ように促す役割を担います。
比較表で見る!インサイドセールスとカスタマーサクセス4つの違い
インサイドセールスとカスタマーサクセスは、どちらも「顧客との接点」を担いますが、その性質は大きく異なります。まずは、両者の主な違いを一覧表で整理しました。
| 比較項目 | インサイドセールス(IS) | カスタマーサクセス(CS) |
|---|---|---|
| ターゲット | 未契約の見込み顧客(リード) | 契約済みの既存顧客(ユーザー) |
| 主な目的 | 商談の創出・案件化 | 解約防止・LTVの最大化 |
| アプローチ | 課題の掘り起こしと動機付け | 活用促進と成功への伴走 |
| 主な指標(KPI) | 商談設定数・有効商談数 | 解約率(チャーンレート)・NRR |
1. ターゲットとなる顧客が置かれている状況の違い
両者の最も大きな違いは、向き合う顧客の状態です。インサイドセールスは、まだ自社の商材を導入していない「見込み顧客」を対象とします。一方、カスタマーサクセスは、すでに契約を締結し、実際にサービスや商品を利用している「既存顧客」を対象とします。つまり、「成約」という境界線を挟んで、前工程と後工程に分かれています。
2. 追求すべき役割と目的の違い
インサイドセールスの役割は、見込み顧客の関心を高め、フィールドセールス(外勤営業)が商談を行える状態にすること、契約という出口までスムーズに送り届ける「パイプラインの創出」が目的です。対してカスタマーサクセスの役割は、導入後の顧客がサービスを使いこなし、当初目的としていた顧客が抱えた課題や悩みを解決する、達成するよう導くことが目的です。これにより、長期的な信頼関係を築き、顧客生涯価値(LTV)を高めることを目的とします。
3. 具体的な業務内容と声掛けの違い
インサイドセールスは、マーケティングが獲得した名簿に対し、電話やメールで「今、話を聞くべき理由」を提示する攻めの提案が中心です。カスタマーサクセスは、導入直後の操作支援(オンボーディング)や定期的な状況確認(ヘルスチェック)を行い、顧客が抱える活用上の障壁を取り除く「伴走型」の声掛けをする点に特徴があります。
4. 設定される目標(評価指標)の違い
評価指標も、役割に合わせて明確に分かれます。インサイドセールスは「商談設定数」や、受注に繋がる質の高い商談を供給したかを示す「有効商談数」が主な目標となります。カスタマーサクセスは、顧客が離脱しないことを示す「解約率(チャーンレート)」や、既存顧客からの収益維持・拡大率を示す「NRR(売上継続率)」などが重視されます。
インサイドセールスの主な業務内容と求められるスキル
インサイドセールスは、単に電話をかけるだけの職種ではありません。マーケティング部門から引き継いだ見込み顧客(リード)を精査し、受注確度の高い状態まで引き上げる「育成」を担います。ここでは業務フローと、成果を出すために欠かせないスキルを紹介します。
リードナーチャリング(見込み顧客の育成)と選別
獲得したばかりのリードが、すぐに導入を検討している事はごく稀です。インサイドセールスは、定期的な情報提供や事例紹介を通じて顧客の関心を育てる「リードナーチャリング」を行います。その過程で、BANT条件(予算・権限・ニーズ・導入時期)などをヒアリングで確認し、今すぐ商材を提案すべきか?の優先順位(スコアリング)を判断する役割を担います。BANT条件に関しては以下の記事で詳しく解説しておりますので、合わせてお読みください。
フィールドセールスへの適切なトスアップ
商談を設定する際は、単にアポイントを取るだけでなく、フィールドセールスにとって「受注を決めやすい状態」で引き渡す(トスアップ)ことが重要です。顧客が抱える深い悩みや、過去の検討経緯、成功事例などの詳細な情報をメリットとして共有します。この情報の質が、最終的な成約率を大きく左右するため、部門間の密な連携がとても重要になります。
インサイドセールスに求められるヒアリング能力と仮説構築力
インサイドセールスには、相手の言葉の裏にある課題を汲み取る高い「ヒアリング能力」が求められます。また、相手の業界や職種から「このような課題を抱えているのではないか」と予測する「仮説構築力」も重要です。定型的なトークスクリプトに従うだけでなく、顧客一人ひとりに寄り添った具体的な提案を行うことで、信頼を獲得し商談へと繋げます。
カスタマーサクセスの主な業務内容と求められるスキル
カスタマーサクセスは、契約後の顧客が抱える「サービスを導入したけれど使いこなせない」という悩みを解消し、サービスを活用して課題の成功へと導く役割を担います。顧客が問い合わせをして解決に導く受動的なカスタマーサポートとは異なり、顧客の状況をデータで把握し、先回りして支援を行う能動的な動きが求められます。
オンボーディング(導入支援)による早期定着化
オンボーディングは、契約直後の顧客に対して初期設定や操作方法のレクチャーを行う工程です。顧客がサービスに対して初めて「価値」を感じるまでの期間を短縮させることが最大の目的です。ここで躓くと解約リスクが急増するため、定着化に向けたマニュアル整備や電話などで講習を行うなど、丁寧かつ迅速な立ち上げ支援を行います。
契約更新の管理とアップセル・クロスセル提案
定期的な利用状況のモニタリングを行い、更新時期が近づいた顧客に対して継続利用を働きかけます。また、利用が定着している顧客には、さらに上のプランへの移行(アップセル)や別機能の追加(クロスセル)を提案します。顧客のビジネス成長に合わせた最適な提案を行うことで、解約を防ぎつつ収益アップを目指します。
カスタマーサクセスに求められる課題解決力と並走・支援能力
カスタマーサクセスには、顧客の目標達成を阻む要因を特定し、解決策を提示する「課題解決力」が欠かせません。単なるツールの説明係ではなく、顧客にとって頼れる取引先として信頼を得るためのコミュニケーション能力も重要です。相手の状況に深く寄り添い、長期的な関係性を築きながら成果に関わる「並走型」の姿勢が求められます。
ISとCSが連携する際の情報共有の重要性
インサイドセールス(IS)とカスタマーサクセス(CS)は、一見関係のない部署のように見えますが、一貫した顧客体験を提供するためには隣り合わせの関係です。インサイドセールスが獲得した「顧客の期待値」が正しくカスタマーサクセスに引き継がれないと、導入後のギャップが生じ、早期解約の原因となります。組織の壁を超えたスムーズな連携こそが、事業成長の鍵を握ります。
顧客体験を一貫させるデータ共有の役割
インサイドセールスからカスタマーサクセスへ情報を渡す際、単なる契約内容だけでなく、検討時の懸念点や導入によって解決したい「真の目的」を共有することが大切です。これにより、顧客は「また一から説明しなければならない」というストレスを感じず、一貫したサポートを受けられます。信頼関係を損なわずに円滑な支援を開始するためには、この「情報共有」の質が極めて重要です。
共通ツール(CRM/SFA)による情報の一元管理
インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携を支えるのは、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)によるデータの一元管理です。過去の架電履歴、メールのやり取り、ヒアリングした課題がリアルタイムで共有されていれば、カスタマーサクセスは顧客の背景を深く理解した状態で伴走できます。属人化を防ぎ、組織全体で顧客の状態を可視化することで、適切なタイミングでのフォローが可能になります。各ツールの詳細については以下の記事でも解説していますので、合わせてお読みください。
【詳細】SaaS特有の部門間連携については
本記事では一般的なインサイドセールスとカスタマーサクセスの役割の違いを中心に解説していますが、SaaS(Software as a Service)ビジネスにおける「THE MODEL」型の組織運営や、さらに踏み込んだ部門間連携の最適化手法については、別記事で詳しく解説しています。SaaS特有の目標設計や運用フローに興味がある方は、ぜひそちらの専門記事も併せてご覧ください。
どっちが向いている?職種別の適性
インサイドセールスとカスタマーサクセスは、共通して「高いコミュニケーション能力」が求められますが、その発揮の仕方は異なります。自身の性格やこれまでの経験、将来設計に照らし合わせて、どちらの職種がより適しているかを検討することが重要です。
インサイドセールスに向いている人の特徴
インサイドセールスには、目標達成への執着心が強く、効率的に業務改善を継続できる人が向いています。短時間で多くの顧客と接触するため、瞬時に相手の需要を察知し、的確な切り返しができる瞬発力が重要です。また、商談という「機会」を創り出すことにやりがいを感じ、人をやる気にさせるよう促す事が上手な人にとって非常に魅力的な職種といえます。
カスタマーサクセスに向いている人の特徴
カスタマーサクセスには、顧客の課題に対してじっくりと腰を据えて向き合い、解決まで寄り添うことに喜びを感じる人が向いています。一過性の成果ではなく、長期的な信頼関係の構築やLTVの向上を重視する心構えが必要です。顧客の状況を深く理解するための共感力に加え、データを分析して論理的な改善策を提示するコンサルティング能力も求められます。
インサイドセールスを増やしたい!強化したいと悩む経営者の方へ
新しくインサイドセールス部を立ち上げたいと考えている方や、始めたばかりで人手が足りないと悩む場合は代行会社を利用する事もおすすめです。人を集める事に時間やお金もかかり、教育にも同様にコストが発生します。いち早く業務を定着させたい!今よりも商談化の質を上げたいと思う場合、プロの知識や知見から自社にノウハウを吸収する事も大切です。以下の記事では代行会社の比較とおすすめまとめを紹介しておりますので、よろしければお読みください。
また、新規の顧客を開拓する為に代行会社を検討される場合は、是非私たちの行っているFAX営業代行サービスもご検討ください。FAXと言うアナログなツールが、圧倒的に安い金額でWeb広告よりも大きな成果を生み出す事もできます。興味のある方は是非ご利用企業インタビューを参考に検討頂けますと幸いです。
まとめ:インサイドセールスとカスタマーサクセスの相乗効果
インサイドセールスとカスタマーサクセスは、それぞれ「商談創出」と「既存顧客の成功」という異なる目標を持っています。しかし、両者が密に連携し、顧客情報を円滑に共有することで、単なる売上向上に留まらない強力な相乗効果を生み出します。
この連携が機能することで、顧客は導入前から導入後まで質の高い体験ができることは、結果としてLTV(顧客生涯価値)の最大化と事業の持続的な成長が実現します。各部門の役割を正しく理解し、共通のゴールを見据えた組織体制を構築することが、これからのBtoBにおいて重要な戦略となるでしょう。まずは現場での細かな情報共有から、一歩ずつ改善を進めてみてください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。