
清掃業者に依頼を検討している企業の担当者の多くは、「日常清掃」「定期清掃」「巡回清掃」の違いを正確に理解していません。そのため、清掃の技術力を自社目線でアピールしても、担当者にとっては違いが分かりにくく、提案が響きにくいことがあります。
法人向けの日常清掃案件は、毎日または週数回の継続業務として契約が積み上がりやすく、個人向けのスポット依頼に比べて売上の見通しを立てやすいという特徴があります。一方で、「どこから営業をかければよいか分からない」「決裁者に話を聞いてもらえない」「相見積もりで価格だけを比較されてしまう」といった悩みも少なくありません。
本記事では、日常清掃という業務形態にしぼり、3つの清掃業務の違いを踏まえた提案の仕方、営業リスト作成・初回連絡・ヒアリング・見積もりという新規開拓の手順、施設別に刺さる訴求のポイントまで合わせて解説します。
企業向け日常清掃案件を獲得する意義

法人向けの日常清掃は、契約期間中は毎月一定の売上が見込める「ストック型」の収益です。個人向けのスポット依頼と異なり、半年〜1年以上の契約が標準となることが多く、企業側も清掃費用を必要経費として予算化しているため、契約が継続しやすいという特徴があります。安定した売上の見通しが立てられれば、スタッフの教育や機材投資といった中長期の計画も立てやすくなります。
顧客の「分からない」を解消する!清掃業務の基礎知識

提案の第一歩は、顧客自身が整理できていない清掃サービスの「種類」を分かりやすく説明することでサービスの理解が深まり、提案内容に耳を傾けてくれます。ここでは主に3つのサービスに分けてそれぞれの違いについて再認識していきましょう。
毎日の美観と衛生を保つ「日常清掃」の役割
日常清掃は、ゴミ回収やトイレ清掃、掃除機がけなど、施設で毎日発生する汚れを取り除く作業です。提案の際は、単なる作業内容としてではなく、「従業員の働く意欲の向上」「来客への第一印象の改善」「感染症対策」といった、清掃から得られるメリットを伝えることが重要です。始業前や終業後など、業務の邪魔にならない時間帯に対応できる点も、有効なアピール材料になります。
専門機材で徹底的にリセットする「定期清掃」
定期清掃は、床のワックス掛けやエアコン内部の洗浄など、日常清掃だけでは落としきれない汚れを専門機材で処理する作業で、月に1回から半年に1回程度の頻度で実施します。清掃箇所や汚れ具合によって適切な頻度は変わるため、現地の状況を踏まえてご提案ください。日常清掃とセットで年間スケジュールとして提案することで、「建物の維持管理にかかる手間を削減できる」という価値を伝えやすくなります。
複数拠点を効率よく管理する「巡回清掃」
巡回清掃は、スタッフが車両で複数の物件を回り、短時間で要点を絞って清掃するスタイルです。マンションの共用部や無人店舗のほか、オフィスビルの共用部等でも利用されています。管理会社やオーナーに対しては、「コストを抑えながら最低限の美観と防犯効果を維持できる」という費用対効果を訴求し、作業前後の写真付き報告書を提出することで、現地に立ち会えない管理者からの信頼を得やすくなります。
担当者が納得する「清掃プラン」の組み合わせ提案術

顧客の予算や施設の課題に合わせて、複数の清掃を組み合わせて提案することで、成約率と顧客単価の両方を高めやすくなります。
たとえば、日々の美観を重視するオフィスには「週3回の日常清掃に、半年に1回の床の定期清掃をセット」で提案する、予算を抑えたい顧客には「毎日2時間の清掃から週2回の巡回清掃へ切り替えてコストを抑え、浮いた予算で年1回のエアコン分解洗浄を行う」といったメリハリのあるプランを提示する、といった方法が考えられます。単一プランだけを提示するのではなく、複数の選択肢を示すことで、自社の予算や課題に合ったプランを選びやすくなります。
法人契約を勝ち取る!新規開拓から受注までの流れ

質の高い営業リストの作成とターゲット選定
営業の第一歩は、自社のリソース(対応エリア、稼働時間帯、得意な施設ジャンル)に合ったターゲットの絞り込みです。たとえば、早朝の短時間作業が得意であればオフィスやクリニック、深夜対応が可能であれば飲食店といったように、自社の強みが活きる施設や業種を見極めます。Googleマップの検索結果や企業データベースを活用してリスト化しておくと、営業対象が明確になり、その後の営業トークも事前に組み立てやすくなります。
リストの収集は自力で集める方法もありますが、リスト収集ツールを活用したり、リストそのものを購入あるいはレンタルすることも可能です。実際に自社が今想定しているターゲット企業が実際に何件あるか気になる場合はツールやサンプルを活用して把握してみましょう。
決裁者へ直接届く初回連絡の手法
法人営業では、社長や総務担当者、施設管理者といった決裁者との接点をいかに作るかが重要です。テレアポ、DM(郵送・FAX)、飛び込み、問い合わせフォーム営業など複数の手法がありますが、単に「清掃の営業です」と伝えるだけでは断られやすいため、「衛生環境の改善とコストの最適化」など、相手にとってのメリットが伝わる切り口を用意することが重要です。
DMやFAXで訴求する場合は、冒頭に仮説立てした送り先の課題とその解決策を提示する事や、初回お試し価格や訪問見積もりの案内などの特典(オファー)を記載して、問い合わせのハードルを下げることが大切です。またFAX紙面の場合、モノクロで印刷される為画像やQRコードなどを記載すると潰れて見えなくなってしまう事や営業臭を強く押し出してしまう為、反応率を下げてしまう場合もあるので注意しましょう。
実際のFAX紙面の構成やデザイン、文面のイメージや作り方を知りたい場合は、サンプルもあわせてご確認ください。
現場の潜在的な課題を引き出すヒアリングの極意
初回の商談では、自社をアピールする前に、現状をしっかりヒアリングすることが重要です。すでに他社に依頼している施設であれば、現状の仕上がりへの満足度に加えて、「トイレの臭いや、目に付きにくい場所のホコリが気になっていないか」といった、清掃のプロだからこそ気づける視点で質問すると、顧客自身が気づいていなかった課題を引き出しやすくなります。こうした潜在課題への言及は、信頼関係を築くきっかけにもなります。
相見積もりを制する差別化された企画書・見積書の作り方
複数社での相見積もりが一般的な法人取引では、見積書の「見せ方」で差をつけることが重要です。「日常清掃一式:〇円」とまとめるのではなく、作業箇所と頻度を細かく記載した清掃仕様書を添付しましょう。スタッフの教育体制、トラブル発生時の対応フロー、鍵の管理方法などのセキュリティ対策を明記しておくことで、担当者は「ここなら安心して任せられる」と感じ、社内の稟議を通しやすくなります。
【施設別】顧客に刺さる提案手法

同じ日常清掃でも、施設や事業によって決裁者が重視するポイントは異なります。ここでは、施設ごとにどのような切り口で訴求すると響きやすいかを整理します。業種別の料金相場や相見積もり対策をより詳しく知りたい場合は、下記も合わせてご参照ください。
ハウスクリーニング業者必見!法人集客を成功に導く戦略および費用相場
オフィス・一般企業:業務効率化と従業員エンゲージメントを訴求
オフィスへの提案では、「従業員が本業に集中できる環境づくり」を軸に伝えます。自社スタッフによる持ち回り清掃は、本来の業務時間を削っているという見えないコストを指摘したうえで、プロへの委託によって業務効率化につながる点をメリットとして提示します。
清潔なトイレや休憩室は、従業員満足度の向上や採用活動における好印象にもつながります。実際、2026年6月に発表されたプロパティデザイン社の調査では、待遇が良くても働きたくないと感じるオフィス環境の理由として「トイレが汚い」が最も高い割合を占めており、清潔さが職場への満足度に影響することがうかがえます。
参考:月刊総務オンライン「清潔感のないオフィスはNG」(プロパティデザイン調べ、2026年6月4日発表)
医療機関(クリニック等):院内感染対策と清潔感を訴求
医療機関では、衛生管理と院内感染対策が最優先事項です。患者は待合室やトイレの清潔さに敏感なため、交差感染を防ぐための清掃道具の使い分け(カラーコーディング)など、専門的なノウハウを具体的に伝えることが重要です。
こうした美観の維持が、患者の安心感や口コミでの評価につながるという経営目線のメリットもあわせて提案すると、担当者の関心を持たれやすくなります。
商業テナント・店舗:顧客満足度(CS)への貢献を訴求
飲食店や小売店、美容室では、清潔感がそのまま売上やリピート率に影響します。特に飲食店の油汚れやトイレの臭いは、顧客満足度を下げる要因になります。
ぐるなびの調査では、不衛生と感じた飲食店には二度と行かなかったという回答が6割を超えており、清潔感の欠如が来店客の行動に直結することがうかがえます。店舗のスタッフは清掃に時間を割きにくいことが多いため、「開店前・閉店後の短時間対応」という利便性は、店長やオーナーの負担軽減ニーズに応える提案になります。
参考:テンポスフードメディア「飲食店の衛生管理とは?清潔感が売上に与える影響と対策を解説」(ぐるなび調べ)
マンション・アパート管理会社:入居率・資産価値の維持を訴求
不動産管理会社やオーナーへの提案では、「入居率の維持」と「資産価値の維持」が主な提案軸になります。エントランスの汚れやゴミ置き場の乱れは、内見時の第一印象を損ない、空室リスクを高めます。定期清掃・日常清掃によって共用部を綺麗に保つことは、退去の防止と新規入居者の獲得につながる取り組みです。
管理会社は多忙なことが多いため、清掃後の写真付き完了報告書を提出し、現地確認の手間を減らす提案も好意的に受け止められやすくなります。
BtoB取引を成功させるための注意点と心構え

既存業者からの切り替え(リプレイス)を促すベストなタイミング
法人営業では、すでに他社の清掃業者と契約しているケースがほとんどです。無理に即時の切り替えを迫るのではなく、相手の契約更新月や決算期、オフィスの移転・改装のタイミングをヒアリングし、そこに向けて提案することが基本になります。現在の業者への不満(清掃品質の低下など)をヒアリングできたタイミングで、一部エリアの無料お試し清掃を提案すると、スムーズな切り替えにつながりやすくなります。
契約後のトラブルを防ぐ業務仕様書の明確化と品質管理
契約時には、「言った・言わない」のトラブルを防ぐため、業務仕様書を必ず作成しましょう。清掃範囲、具体的な作業内容、頻度、ゴミの廃棄ルールを書面で明確にしておきます。特に、基本料金の日常清掃に含まれる範囲と、別途見積もりが必要な定期清掃との境界線は、事前にすり合わせておくことが重要です。現場スタッフにも仕様書を徹底することで、担当者によって品質にばらつきが出ることを防げます。
契約締結後から始まる長期的なリレーション構築
日常清掃の契約は、締結してからが本番です。定期的に企業担当者を訪問・連絡し、仕上がりへの評価や清掃スタッフのマナーについてヒアリングするアフターフォローが欠かせません。こうした丁寧なコミュニケーションの積み重ねは、他社への乗り換え防止だけでなく、定期清掃の追加発注や他施設の紹介といった、新たな案件にもつながります。
まとめ:課題に寄り添う提案で、日常清掃の法人開拓を進めよう
法人向けの日常清掃案件は、安定した売上の柱になる一方で、「安く掃除をします」という売り込みだけでは価格競争に巻き込まれやすくなります。日常・定期・巡回清掃の違いを踏まえたプラン提案と、施設ごとに刺さる訴求のポイントを押さえたうえで、営業リストの作成からヒアリング、見積書の見せ方まで一連の手順を丁寧に進めることが、法人契約の獲得につながります。
自社に法人営業に関するノウハウがない・人手や工数を割くことが出来ないという場合は、営業活動そのものを外部に委託するという選択肢もございます。本記事で紹介した決済者に届きやすいFAX営業をお考えの場合は、下記の代行サービス詳細もあわせてご確認ください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。