新規開拓の手段としてFAXDMを考えているものの、「FAXDMは規制された」「送ると違法になるらしい」と聞いて、踏み切れずにいる方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、法人に向けて自社の商品・サービスを案内するFAXDMは、原則として特定商取引法(以下、特商法)のFAX広告規制の「対象外」です。ただし、送り先が個人事業主の場合などは判断が分かれることがあります。また、法律上の義務がない場面でも、送り方によってはトラブルを招きます。
この記事では、特商法のFAX広告規制がどのような送信を対象にしているのかを条文に沿って確認し、法人宛てにFAXDMを送る前に押さえておきたい点を説明します。
FAXDMは違法か|法人宛ての営業FAXは特定商取引法の規制対象外
FAXDMを送ること自体を一律に禁じる法律はありません。2017年12月1日に施行された改正特商法でFAX広告の規制が設けられましたが、法人に向けて営業目的で送るFAXDMは、原則としてこの規制の対象になりません。
なぜ対象外になるのかは、規制する条文と、適用を除外する条文の2段階で見ると理解しやすくなります。
規制されているのは「一般消費者向け通信販売のFAX広告」
規制の中心は特商法第12条の5です。通信販売を行う事業者が、相手の承諾を得ないまま、商品やサービスの販売条件をFAXで広告することを禁じています。この条文自体は、送り先を一般消費者に限る書き方にはなっていません。
規制の対象が一般消費者向けに絞られるのは、第26条第1項第1号の適用除外があるためです。同号は、契約の相手方が「営業のために若しくは営業として」締結する取引には、通信販売に関する規定を適用しないと定めています。
会社が業務に使う設備や部材、サービスを法人に案内するFAXは、相手が事業のために結ぶ取引の案内にあたります。そのため、第12条の5でFAX広告を規制し、第26条で事業者間の取引を除外するという構造により、法人宛ての営業FAXはFAX広告規制の対象外と整理されます。条文はe-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」で確認できます。
判断基準は相手の名義ではなく「取引の目的」
注意したいのは、送り先が会社や事業者であれば自動的に適用除外になるわけではない点です。消費者庁の通達では、相手が事業者の名義であっても、主として個人用・家庭用に使うための契約であれば、特商法が適用されるという考え方が示されています。
判断が分かれやすいのは、個人事業主や、自宅と事務所を兼ねた番号に送るケースです。たとえば工務店に建築資材を案内するのは事業のための取引と言えますが、同じ番号に家庭向けの商品を案内すると、個人としての取引とみなされる可能性があります。相手の名義ではなく、案内する商品・サービスが相手の事業に使われるものかどうかで考えるのが基本です。自社商材の特徴的にどちらに該当するのか判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に確認してください。
消費者宛てのFAX広告に課される規制
一般消費者に向けた通信販売のFAX広告には、次の義務が課されます。法人宛てのFAXDMには原則として適用されませんが、何が規制されているのかを知っておくと、自社の送信が対象外かどうかを判断しやすくなります。
| 規制項目 | 内容 |
|---|---|
| 承諾のない送信の禁止 | 請求や承諾を受けていない相手に、FAX広告を送ってはならない |
| 承諾・請求の記録の保存 | 承諾や請求を受けたことの記録を作成し、広告を送った日から1年間保存する |
| 受け取りを拒否する方法の表示 | 相手が広告の受け取りを拒否する意思を伝えるためのFAX番号を表示する |
| 通信販売の広告表示事項の表示 | 販売価格や支払方法、事業者の名称・住所・電話番号など、通信販売の広告に必要な事項を表示する |
| 拒否した相手への再送の禁止 | 受け取りを拒否された相手には、改めて請求や承諾を受けない限り広告を送ってはならない |
記録の保存期間や拒否方法の表示は、特商法の施行規則で具体的に定められています。
これらの規定に違反した場合は、主務大臣による指示(第14条)や業務停止命令(第15条)といった行政処分の対象となります。さらに、指示に違反すると6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第71条)、業務停止命令に違反すると3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第70条)の対象となり、いずれも併科される場合があります。
法人宛てFAXDMを送る前に確認すること
法人宛てであれば、特商法のFAX広告規制は原則として適用されません。ただし、何も確認せずに送って良いというわけではありません。送信前に、送信先リストと紙面の記載事項の2点を確認してすることをおすすめします。
送信先リストの出所と個人情報の扱い
送信先リストに担当者の氏名や、個人事業主の氏名・連絡先が含まれている場合、それらは個人情報保護法上の個人情報にあたる可能性があります。リストを使う前に、どのような経路で集められた情報なのかを確認しておく必要があります。
名簿業者からリストを購入する場合は、販売元が「オプトアウト(配信停止)」の手続きをとっているかが確認点のひとつです。個人情報保護法第27条第2項は、本人の同意を得ずにオプトアウトの方式で個人データを第三者に提供する事業者に対し、所定の事項を本人が知りうる状態に置いたうえで、個人情報保護委員会へ届け出ることを求めています。購入前に、販売元がこの届出を行っているかを確認しておきましょう。
会社名や代表番号など、法人そのものの情報だけで作ったつもりのリストでも、担当者名など個人を特定できる情報が紛れ込んでいないかを確認しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
配信停止の受付窓口と送信者情報を紙面に明記する
法人宛てのFAXDMでは、配信停止の受付方法や送信者情報の表示は、特商法上の義務ではありません。
それでも弊社では、法人宛てのFAXDMでも、配信停止を受け付ける欄と、送信者の社名・住所・電話番号・FAX番号を紙面に記載することを基本とし、サービスを提供しています。誰から届いたのか、不要なときにどう伝えればよいのかが分からないFAXは、受け取った企業に不信感を与えやすいためです。
あわせて、配信停止の依頼を受けた番号は記録し、以降の送信先から外すことをおすすめしています。法律上の義務がなくても、断られた相手に送り続ければ、自社の評判を損なうことにつながります。
送信先リストの用意や案内文の作成まで自社で一から行うのは、少人数の会社では負担が大きく、普段の業務と並行して進めることが厳しいと感じる方もいらっしゃると思います。弊社では、商品案内の作成から営業先となる企業リストの準備、FAX配信までを代行しています。営業マンがいない企業の方や、開業前の事業者の方でもご利用できますので、ご検討ください。
違法でなくてもトラブルを招く送り方
特商法の規制対象外であっても、送り方によってはクレームや、取引先候補との関係悪化を招きます。起こりやすいのは、自社の商品・サービスを必要としていない企業へ、件数を優先して大量に送るケースです。受け取る側にとって関係のない商材の案内は、用紙やトナーを使わせるだけの迷惑なFAXと受け止められやすくなります。
クレームを防ぐ為には、配信件数よりも、提案する商品・サービスと送信先企業の需要が合っているかを重視することが大切です。業種や地域、用途などから必要としていそうな企業に絞り込むことで、受け取る側にとって意味のある案内になりやすく、トラブルを避けることだけでなく、反応率の向上にもつながると考えています。
クレームや送信時間のマナーについては以下の記事でも解説しています。
事例でわかるFAXDMクレーム対策|起きた時の即時対応からリストによる事前対策
そのFAXマナー違反かも?プロが教える正しい送り方と機密情報の注意点
まとめ
FAXDMが特商法の規制にかかるかどうかは、まず送り先が一般消費者か、事業として取引する相手かで判断します。法人宛てでも、個人事業主や自宅兼事務所の番号に送る場合は、案内する商品・サービスが相手の事業に使われるものかを確認してください。
そのうえで、送信先リストの出所に問題がないか、配信停止の依頼を受け付けて送信先から外せるかを、送信前に確かめておきましょう。この準備を整え、需要のある企業に絞って送ることが、FAXDMを新規開拓に活かす前提になります。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。