自社でWeb広告を出しているものの、成果が出ているのか判断できない。あるいは、これから検索広告を始めたいが、社内に運用できる人がいない。そうした状況で広告運用代行への依頼を考え始めたものの、何をどこまで任せられるのか、毎月いくらかかるのか、自社の予算で頼む価値があるのかが分からず、迷っていませんか。
本記事では、広告運用代行に任せられる業務の範囲と、広告費と手数料の関係を含めた費用の仕組み・相場について解説し、自社運用と代行のどちらが合うかの判断基準についてまとめました。導入するとなった場合、事前に社内で決めておくこと、依頼先を比較する時のポイントも合わせて紹介します。見積もりや相談の前の準備にお役立てください。
広告運用代行で任せられる業務
広告運用代行とは、Google広告やYahoo!広告などのWeb広告について、出稿の準備から日々の調整、効果測定までを外部の会社に任せるサービスです。どこまでを標準の業務とするかは会社や契約によって異なるため、見積もりの段階で業務範囲を具体的に確認しておくことが大切です。
代行会社に依頼できる主な業務
運用代行の中心となるのは、次のような業務です。
- キーワード・配信の設計:どの検索語句で広告を表示するか、どの地域・時間帯に配信するかを決めます。
- アカウントの構築:広告媒体の管理画面で、キャンペーンや広告グループといった配信の設定を作ります。
- 広告文の作成と入稿:検索結果に表示される見出しや説明文を作成し、配信を始めます。
- 入札額・予算の調整:クリック単価の上限や1日あたりの予算を、成果を見ながら調整します。
- 効果測定とレポート:表示回数やクリック数、問い合わせなどの成果(CV:コンバージョン)の件数を集計し、報告します。
- 改善提案:数値の変化から原因を考え、キーワードや広告文、予算配分の見直しを提案します。
別料金・対象外になりやすい業務
次のような業務は会社によって運用代行の料金に含まれる場合もあれば、別料金のオプションや対象外となる場合もあります。
- 広告をクリックした人が最初に見るページ(LP:ランディングページ)の制作・改修
- バナー画像や動画など、広告素材の制作
- 問い合わせ件数などを計測するためのタグ(計測用のコード)の設置や、計測環境の整備
特に計測の設定は、広告の成果を正しく判断するための前提になります。自社サイトへのタグ設置を誰が行うのか、設定に費用がかかるのかについては、契約前に確認しておきましょう。
広告運用代行の費用の仕組みと相場
支払う費用は「広告費」と「運用手数料」
広告運用代行を利用する場合、費用は大きく次の3つに分かれます。
- 広告費:GoogleやYahoo!などの広告媒体に支払う費用です。検索広告では、広告がクリックされるたびに発生します。
- 運用手数料:代行会社に支払う、運用業務の対価です。
- 初期費用:アカウントの構築や配信の初期設計にかかる費用です。
毎月実際に出ていく費用は、広告費と運用手数料を合わせた金額です。見積もりで「月額◯万円」と示された場合は、その金額が手数料だけなのか、広告費を含んだ総額なのかを確認してください。
料金体系の種類
運用手数料の決め方には、主に3つの種類があります。
| 料金体系 | 手数料の決まり方 | 合いやすい状況 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 広告費連動型 | 広告費に一定の割合を掛けて算出 | 月によって広告費を増減させたい | 広告費が増えると手数料も増える。少額では最低手数料が適用されやすい |
| 固定報酬型 | 広告費にかかわらず月額一定 | 毎月の運用手数料を一定にしたい | 広告費が少ないと、広告費に対する手数料の割合が高くなる |
| 成果報酬型 | 問い合わせ・申込などの成果件数に応じて支払う | 何を成果とするかがはっきりしている | 成果の定義や単価の取り決め次第で支払額が大きく変わる |
広告費連動型では、広告費が増えるほど手数料も増えます。これは料金体系の構造上の特徴であり、それ自体が良い・悪いというものではありません。手数料が見合うかどうかは、運用の内容とあわせて判断する必要があります。
相場の目安と少額予算での注意点
広告運用代行の料金は、依頼する業務や契約条件によって異なります。以下は料金の目安であり、実際の金額は会社によって異なるため、見積もりで確認してください。
- 運用手数料(広告費連動型):広告費の20%前後とする会社が多く、15〜30%程度の幅があります。
- 初期費用:無料〜10万円程度が目安です。初期費用のない会社もあります。
- 最低手数料:月額の最低手数料を設けている会社があり、月5万〜15万円程度の例が見られます。
- 最低出稿額:「月の広告費が◯万円以上」といった条件を設けている会社もあります。
予算が少ない会社が特に注意したいのは、最低手数料の影響です。例えば「手数料率20%、最低手数料は月5万円」という条件の場合、広告費25万円でちょうど手数料率通りの5万円になります。広告費がそれを下回っても手数料は5万円のままなので、広告費15万円なら実質約33%、10万円なら50%の手数料を払う計算です。
月の広告費が10万円であれば、毎月の支出は手数料と合わせて15万円です。この総額で問い合わせや成約・受注を得ることが自社にとって見合うかも重要です。
自社運用と代行、どちらが合うか
広告運用代行は、どの会社にとっても最適な選択とは限りません。次の3つの観点から、自社の状況と照らし合わせて判断しましょう。
- 社内に運用担当を置けるか:広告は配信後も数値の確認や調整が続くため、担当者が日常的に時間を割けるかが重要です。
- 月の広告予算と手数料のバランス:前述のとおり、広告費が少ないほど広告費に対する手数料の割合は高くなります。
- 商材知識がどれだけ成果を左右するか:専門的な商材では、顧客がどのような言葉で検索するかを、社内の方がよく分かっている可能性もあります。
代行が向いている状況や条件
- 社内に広告運用の経験者がおらず、担当者を置く余裕もない
- 月の広告予算がある程度あり、最低手数料の影響が小さい
- 計測の設定や配信設計など、立ち上げ時に専門知識が必要な作業がある
- 自社で運用してきた広告を、第三者の目で見直したい
自社運用や依頼範囲の縮小を検討した方がいいパターン
- 月の広告予算が少なく、広告費に対する手数料の割合が大きくなる
- 対象地域や商材が限られており、配信するキーワードが少ない
- 商材が専門的で、顧客の動きや思考、検索の仕方を社内の方が理解できている
運用のすべてを任せる以外に、依頼範囲を調整する方法もあります。例えば、アカウントの初期設計と計測の設定だけを依頼して日々の運用は社内で行う、定期的な運用状況の点検と改善提案だけを依頼する、といった形です。こうした部分的な依頼に対応しているかは会社によって異なるため、相談の際に確認してください。
依頼前に自社で決めておくこと
代行会社に相談する前に、次の4点を社内で整理しておくと、見積もりや提案を自社の基準で比べやすくなります。
- 広告の目的と成果の定義:問い合わせ、資料請求、見積依頼、来店予約など、何を成果とするかを決めます。あわせて、成果1件を獲得するために使って良い費用の上限を考えます(成果1件あたりにかかった費用はCPA:顧客獲得単価と呼ばれます)。
- 月の予算上限:広告費と手数料を合わせた総額で考えます。最低契約期間がある場合は、その期間分の総額も確認しておきます。
- 対象とする顧客・商圏:どの地域の、どのような顧客から問い合わせがほしいか、対応できない地域や案件は何かを洗い出します。キーワードや配信地域を設計する土台になります。
- 問い合わせが来たときの社内の対応体制:誰が、どのくらいの時間で対応するかを決めておきます。工数が足りず対応できないという状態を防ぎます。
1件の獲得に使って良い費用は、受注1件あたりの粗利と、問い合わせから受注に至る割合から逆算します。例えば、受注1件あたりの粗利が30万円で、問い合わせ5件のうち1件が受注につながる場合、問い合わせ1件あたりの期待粗利は6万円です。 この範囲の中で、広告費と手数料にいくらまで使えるかを決めます。継続取引が見込める商材であれば、1回の受注額ではなく、取引が続いた場合に得られる粗利(LTV:顧客生涯価値)で考えると、判断の幅が変わります。
4つ目の対応体制も、成果を左右します。広告から問い合わせが来ても、返信が遅れれば商談につながりにくくなります。また、問い合わせの中身や受注に至ったかどうかを代行会社に共有できれば、キーワードや広告文の見直しに生かしてもらえます。
なお、予算を考える際は、広告が「費用を払っている間だけ表示される」施策である点も押さえておきましょう。出稿を止めれば広告の表示も止まり、そこからの問い合わせも途絶えます。中長期にわたって問い合わせを確保したい場合は、広告の予算とあわせて、自社サイトの情報を充実させることも検討しましょう。Google検索で見込み客に見つけてもらいやすくするSEO(検索エンジン最適化)に加え、AI検索で自社の情報が参照され、見込み客との接点につながるようにするAIO(AI検索への最適化)にも取り組むことが大切です。広告だけに頼らず、各媒体での検索から見込み客に見つけてもらえるサイトを整えることで、中長期的な問い合わせの獲得を目指せます。
検索やAI検索から問い合わせにつなげる情報整備については、以下のWeb集客サービスを提供しております。
依頼先を選ぶときの確認ポイント
複数の代行会社から話を聞く場合は、手数料の金額だけでなく、次の4つの観点で比べます。
自社と近い業種・予算規模の実績があるか
実績を確認するときは、「問い合わせが◯倍になった」といった結果の数字だけで判断しないことが大切です。どのような課題があり、どんな仮説を立て、何を実行してその結果になったのかという過程まで説明してもらいましょう。
また、自社と同じ業種や似た商材、同程度の予算規模での実績があるかも確認します。大きな予算での成功事例が、少額予算の自社にそのまま当てはまるとは限りません。
Google Partnerは、広告運用の実績、広告利用額、担当者の認定資格などの要件を満たした企業に付与されるステータスです。運用体制を確認する際の参考にはなりますが、自社の業種や予算規模に合う会社かどうかは、別に確認が必要です。ただし、自社の業種や予算規模に合う会社かは、別で確認が必要になります。
運用担当者・連絡頻度・レポートの中身
- 担当者:実際にアカウントを運用するのは誰か。営業担当と運用担当が別の場合もあるため確認します。担当者が不在のときの対応や、複数人での確認体制があるかもあわせて聞いておきます。
- 連絡頻度:定例の打ち合わせや報告の頻度、普段の連絡手段と返答の目安を確認します。
- レポートの中身:数字の一覧だけでなく、結果の理由についての考察と、次の改善案が含まれているかを確認します。可能であればレポートのサンプルを見せてもらいましょう。
- 開始までの流れ:計測環境の構築やタグの設置を誰がいつ行うか、契約から配信開始までどのくらいかかるかを確認します。
提案の根拠(キーワードと予算配分)
提案に示された「この予算で問い合わせ◯件程度」といった見込みに、どのような根拠があるかを確認します。想定するキーワード、クリック単価、問い合わせに至る割合などの前提が説明されていれば、自社の感覚と照らし合わせて妥当性を判断できます。
業界名だけのような検索数の多いキーワードは競争が激しく、クリック単価も高くなりやすいため、そこへの予算拡大を前提とした提案には注意が必要です。地域名や具体的な用途を含むキーワードなど、問い合わせにつながりやすい語句を選んでいるかを、提案内容から確認するとよいでしょう。
契約期間・解約条件・アカウントの所有権
- 契約期間と解約条件:最低契約期間の有無と長さ、途中解約の条件や違約金を確認します。
- 広告アカウントの名義と権限:自社名義のアカウントで運用してもらえるか、自社に管理者権限が残るかを確認します。
- 契約終了時の引き継ぎ:アカウントや過去の配信データ、広告文、レポートを引き継げるかを確認します。
Google広告では、広告主が自社のアカウントに代行会社をユーザーとして招待し、アクセス権を付与できます。また、代行会社の管理用アカウント(MCC)に自社の広告アカウントをリンクする方法もあります。MCCとの連係によって広告主側のアクセスが一律に失われるわけではありませんが、所有権や権限の設定によって管理できる範囲が異なるため、契約前に確認しておきましょう。 一方、代行会社名義のアカウントで運用される場合、契約終了時にアカウントや配信データを引き継げないと、作り直しが必要になることがあります。契約前に、名義と引き継ぎの範囲を書面で確認しておきましょう。
まとめ
広告運用代行を検討するときは、どの会社に頼むかを考える前に、自社の判断材料をそろえることが大切です。
まず、広告で何を成果とし、1件の獲得にいくらまでかけられるか、月の予算上限はいくらかを決めます。次に、広告費と手数料が別にかかること、料金体系や最低手数料によって実質の負担が変わることを踏まえ、総額で費用を見積もります。
そのうえで、社内に運用担当を置けるか、予算と手数料のバランスはどうかを考え、全部を任せるのか、一部だけ依頼するのか、自社で運用するのかを判断します。依頼する場合は、実績の過程、運用体制とレポートの中身、提案の根拠、契約条件とアカウントの扱いを確認ポイントとして、複数の会社を比べてみてください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。