
電気設備や空調・配管などの資材を扱う設備資材卸の会社で、既存の取引先だけに頼った営業を続けており、新規の取引先開拓が思うように進まないとお悩みではないでしょうか。設備資材卸は取扱商品が幅広く商流も複雑なため、どの業態にどう営業すればよいか判断しづらい業界です。限られた人員で新規開拓を続けるには、業界特性に合った手法の選定が欠かせません。
本記事では、設備資材卸ならではの商流を踏まえたターゲットの選び方から、具体的な新規開拓の手法比較、そして販路開拓を成果につなげるための実務手順までをまとめて解説します。
設備資材卸が新規開拓で直面しやすい課題

設備資材卸の新規開拓では、業界特有の事情から生まれる課題につまずくケースが目立ちます。ここでは代表的な3つの課題を見ていきます。
既存ルートへの依存で新規開拓に手が回らない
設備資材卸の多くは、長年の付き合いがある工事店や設備会社との取引を軸に事業を組み立てています。既存取引先からの発注対応や納期調整に日々の業務時間の大半を割かれ、新規開拓に充てる時間を確保できないのが実情です。
営業担当者を専任で置ける会社は少なく、経営者や現場責任者が営業を兼務していることも珍しくありません。新規開拓の優先順位が下がりやすい構造そのものが、最初の壁になっています。
商品点数が多く提案の的を絞りにくい
設備資材卸が扱う商品は、配線・配管資材から工具、空調機器の部材まで多岐にわたります。取扱品目が広いことは強みである一方、初回の声掛けで何を訴求すべきか焦点が絞りにくいという課題も生みます。
「うちは何でも揃っています」というざっくりな案内は、相手の記憶に残りにくいものです。ターゲットの業種や現場の課題に応じて、訴求する商品カテゴリを絞り込む工夫が求められます。
価格競争でメーカー直取引に流れやすい
工事店や設備会社の中には、一定規模以上になるとメーカーとの直接取引を検討する企業もあります。卸を介さない分コストを抑えられるため、価格だけを比較されると卸売業者は不利な立場に置かれやすい傾向があります。
価格以外の価値、たとえば小ロット対応や即日配送、技術的な提案力などを明確に打ち出せるかどうかが、メーカー直取引との差別化につながります。
価格競争に巻き込まれやすいという課題に対しては、見積もり金額だけで比較されない関係性をどう築くかがカギになります。急な欠品時にすぐ手配できる体制や、現場からの細かい相談に応じられる対応力は、価格表には表れにくい価値です。こうした強みを普段の営業活動の中で具体的に伝えることが、差別化につながります。
3つの課題は互いに関連しています。既存ルートへの依存で時間が取れず、限られた時間の中で幅広い商品をどう訴求するか迷い、結果として価格訴求に頼りがちになるという悪循環に陥っている会社も少なくありません。課題を個別に解決しようとするのではなく、営業体制全体を見直す視点が求められます。
設備資材卸における商流と新規開拓のターゲット

新規開拓を効率よく進めるには、自社の商品がどの業態を経由して現場に届くのか、商流全体を理解しておくことが前提になります。
中小企業庁の調査でも、卸売業は商品点数の多さや商流の複雑さが経営上の論点として取り上げられています(参照:中小企業実態基本調査|中小企業庁)。ここでは主なターゲットを整理します。
設備資材卸を取り巻く商流は、メーカーから一次卸、二次卸を経て工事店に資材が届く多段階の構造になっていることも珍しくありません。自社がどの位置にいるかによって、直接声掛けできる相手と間に別の卸を挟む相手が変わるという要点を押さえておく必要があります。
工事店・設備工事会社という主要な販路
電気工事店や設備工事会社は、設備資材卸にとって最も直接的な販路です。現場で使う資材を都度発注するケースが多く、納期の早さや在庫の確保が選定理由になりやすい業態です。地域密着型の中小工事店は、担当者との関係性が発注の決め手になる場合も多く、継続的な接点づくりが有効です。
工事店・設備工事会社の中でも、電気・空調・給排水など専門分野によって発注のタイミングや重視するポイントは異なります。自社の得意分野と親和性の高い専門工事店から優先的に営業していくことで、成約までの道のりを短縮できます。
リフォーム会社・工務店という周辺の販路
住宅設備の交換や改修工事を手がけるリフォーム会社・工務店も、有力なターゲットの一つです。工事店に比べて発注ロットは小さくなりやすいものの、案件数の多さと横展開のしやすさが魅力です。
リフォーム会社は複数の資材卸と取引を分けている場合も多く、既存の取引先に不満や不足がある会社を見極めて提案することが新規開拓のポイントになります。
ゼネコン・サブコン経由の間接的な取引先
規模の大きい工事案件では、ゼネコンやサブコンが指定する資材卸業者が決まっていることも珍しくありません。直接の窓口にはなりにくいものの、指定業者として登録されれば継続的な受注につながるメリットがあります。参入のハードルは高いため、まずは工事店やリフォーム会社との取引実績を積み、信頼を積み上げてから間接的な取引先へ提案する進め方が現実的です。
ゼネコン・サブコン経由の取引は成約までに時間がかかる分、一度指定業者として認められると、複数の現場で継続的に発注が発生しやすいという特徴もあります。短期的な成果を求めすぎず、中長期の目標として位置づけておくとよいでしょう。
| 取引先タイプ | 発注の特徴 | 営業のポイント |
| 工事店・設備工事会社 | 都度発注、納期重視 | 在庫力・納期対応力を訴求 |
| リフォーム会社・工務店 | 小ロット・案件数が多い | 案件ごとの柔軟な提案力 |
| ゼネコン・サブコン | 指定業者制度、継続発注 | 実績と信頼の積み上げが前提 |
新規開拓の手法比較|設備資材卸に向く手法と向かない手法

新規開拓の手法は複数ありますが、すべてが設備資材卸に向いているわけではありません。ここでは代表的な手法を比較しながら、業界特性との相性を見ていきます。
| 手法 | メリット | デメリット |
| 飛び込み営業 | 現場の状況を直接把握できる | 移動と時間のコストが大きい |
| テレアポ | 短時間で多くの企業に接触できる | 担当者に繋がりにくい |
| 展示会出展 | 見込み顧客と効率的に接触できる | 出展コストと準備の負担が大きい |
| 紹介営業 | 信頼を得た状態から商談できる | 紹介の量が安定しない |
| FAX DM | 少人数でも広範囲に情報を発信できる | 反応率は送付先の絞り込みに左右される |
新規開拓の手法選びで見落とされがちなのが、自社の営業体制の規模との相性です。専任の営業担当者を複数名確保できる会社であれば展示会や紹介営業を主軸にする選択肢もありますが、営業人員が限られる設備資材卸では、少人数でも継続できる手法を軸に据える方が現実的です。
飛び込み営業とテレアポの限界
飛び込み営業やテレアポは、現場担当者と直接やり取りできる利点がある一方、訪問件数や架電件数に営業担当者の稼働時間が直結するという制約があります。営業人員が少ない設備資材卸では、活動量そのものを増やしにくいのが実情です。
展示会・紹介営業の位置づけ
展示会出展や紹介営業は、信頼度の高い見込み顧客と接点を持てる手法です。ただし、展示会は出展コストがかかり、紹介営業は既存取引先の紹介意欲に依存するため、新規開拓の主軸というより補完的な手法として位置づけるのが現実的です。
ほかにも、既存取引先からの紹介を促す仕組みづくりや、業界紙・専門誌への広告出稿など、地道な接点づくりを組み合わせることで、新規開拓の方法を一本に絞らずに済みます。
FAX DMが選ばれる理由
FAX DMは、1件あたりの配信コストを抑えながら、地域や業種を絞り込んだ形で多くの見込み顧客に自社を提案できる手法です。専任の営業担当者がいない設備資材卸でも運用しやすい点が選ばれる理由になっています。
営業活動をすべて自社で対応するのではなく、外部に委託する場合の費用感については、以下の記事でも解説しています。
関連記事:営業代行の外注費用はいくら?相場から見る料金体系別の活用法
FAX DMによる新規開拓が設備資材卸に向く理由

FAX DMは古くからある手法ですが、設備資材卸の商習慣とは相性がよい部分があります。ここではなぜ相性が良いとされるのか?についての具体的な理由を見ていきます。
現場担当者にはメールよりFAXの方が届きやすい
工事店や設備会社の現場担当者は、日中は現場に出ていることが多く、メールを確認する時間が限られます。一方、事務所に設置されたFAXは、届いた紙がその場に残るため、後からまとめて目を通してもらいやすいという特徴があります。
たとえば、現場の休憩時間にまとめてFAXを確認する工事店の担当者は少なくありません。電話が鳴りっぱなしの忙しい時間帯を避けて情報を届けられる点も、FAX DMが敬遠されにくい理由の一つです。
少人数の営業体制でも運用できる
FAX DMは、商品案内の原稿とリストさえ準備できれば配信できるため、営業担当者が一人しかいない、あるいは経営者が営業を兼務している会社でも取り組みやすい手法です。そのため、開業や独立を視野に入れている場合でも負担を抑えられる方法です。こちらについては、以下の動画でも解説しています。
既存の商品カタログをそのまま活用できる
設備資材卸の多くは、すでに商品カタログや価格表を保有しています。FAX DMではこうした既存の資料をベースに原稿を作成できるため、新たに営業資料を一から用意する手間を抑えられます。
販路開拓を成功させる実務の進め方

FAX DMをはじめとした新規開拓を成果につなげるには、思いつきで配信するのではなく、手順を踏んだ運用が欠かせません。ここでは実務の進め方を解説します。
地域・業種で絞り込んだターゲットリストの作り方
新規開拓の精度を高めるには、まず自社の商圏となる地域と、取引実績のある業種を軸にターゲットを絞り込みます。既存取引先の傾向を分析し、成約しやすい企業像を明確にすることが、リスト作成の出発点になります。
リストの鮮度も重要です。移転や廃業により届かない送付先が増えると配信効率が下がるため、定期的な更新が求められます。
反応率を高めるFAX原稿の作り方
FAX原稿は、商品名や価格を並べるだけでなく、受け取った担当者が「自社に関係がある」と感じられる内容にすることが反応率を左右します。対象業種の課題や、よくある発注シーンを想定した見出しを入れると目に留まりやすくなります。
問い合わせ先やFAX返信欄を分かりやすく配置し、担当者が短時間で反応できる原稿構成にすることも欠かせません。1回の配信で複数の商品を詰め込みすぎず、伝えたい情報を絞り込むことも意識したいポイントです。
反響対応とリストの継続的な更新
FAX DMへの反響があった際は、できるだけ早く対応することが次の商談につながります。問い合わせから返信までのスピードが、他の資材卸との比較で選ばれるかどうかを左右する場合も少なくありません。
反響の有無にかかわらず送付結果を記録し、反応の良かった業種や地域を分析してリストを継続的に見直すことで、新規開拓の精度は少しずつ高まっていきます。月あたりの配信件数や反響件数といった簡単な目標値を決めておくことも有効です。
参考:「共同・協業販路開拓支援補助金」の公募について|中小企業庁
Web集客・自社サイトを活用した中長期の販路開拓

FAX DMなどのアウトバウンド施策に加えて、自社サイトを通じた情報発信も、中長期的な販路開拓の選択肢になります。
検索・AI検索から見つけてもらうための情報発信
工事店や設備会社の担当者が、取引先を探す際、事前にインターネットで検索するケースも増えています。自社の取扱商品や対応エリア、過去の納入実績などをサイト上で分かりやすく発信しておくことで、検索経由での問い合わせにつながる可能性が高まります。
近年はGoogle検索に加え、生成AIを使った検索から情報を探す担当者も出てきています。自社サイトに掲載する情報は、取扱商品のカテゴリ一覧だけでなく、対応可能な地域や納期の目安、過去の納入実績といった、発注担当者が比較検討の際に知りたい情報まで踏み込んで発信することがポイントです。
まとめ:ターゲットを絞り込んで自社の強みを押し出そう
設備資材卸の新規開拓は、既存ルートへの依存や商品点数の多さ、価格競争といった業界特有の課題と向き合いながら進める必要があります。工事店やリフォーム会社、ゼネコンなど商流ごとに異なるターゲットの特性を理解した上で、自社の営業体制に合った手法を選ぶことが遠回りに見えて確実な一歩になります。
FAX DMは、少人数の営業体制でも新規開拓・販路開拓を進めやすい現実的な選択肢です。ターゲットリストの精度を高め、反応率を意識した原稿づくりと反響対応を積み重ねることで、新規の取引先開拓は着実に進めていけます。
自社での運用に時間や人員を割けない場合は、リスト作成から原稿作成、配信までを任せられる外部サービスの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。