
中小規模の菓子製造業では、昔からのお得意様との取引を中心に事業を続けてきた企業も多いのではないでしょうか。そうした既存の取引先からの受注に依存し、新規開拓が進まないと悩んでいませんか。限られた人員で営業を兼務する企業も多く、顧客ごとの味の調整や小ロット対応に追われ、新規営業の時間を確保するのは非常に困難です。また、受け身の姿勢や下請け構造から抜け出せず、利益率が上がらない現状もあります。
本記事では、自社の強みを活かしたターゲット選定から、BtoB向けの提案型営業、さらには営業代行などの外部の力を活用した効率的な販路拡大方法について詳しく解説します。お読みいただくことで、利益率の高い直接取引を増やし、限られた人手でも着実に売上を伸ばすための実践的なノウハウが手に入ります。
菓子製造業における新規開拓の現状と課題

菓子製造業が販路を拡大する際、業界特有の構造や社内体制が大きな障壁となっている企業は少なくありません。まずは、多くの企業が直面している現状の課題を整理します。
既存取引への依存とBtoB新規開拓の壁
特に中小規模の菓子製造業では、古くからの付き合いのあるお得意様や既存の卸先からの受注に依存する傾向が強く見られます。そのため、いざ新規顧客を開拓しようとしても、BtoB特有の提案ノウハウが不足しており、大きな壁に直面しがちです。下請けからの脱却を図り、利益率の高い直接取引を増やすためには、受け身の姿勢から抜け出し、能動的な営業戦略を構築することが急務となっています。
営業マン不足と個別対応(味・ロット)の負担
多くの製造現場では営業専任者がおらず、社長が営業を兼務する場合が一般的です。さらに、取引先ごとに求められる味の調整や小ロット対応など、受注後の個別対応に多くの工数を奪われます。結果として、新規開拓に割ける人手や工数などのリソースが枯渇し、事業拡大のスピードが鈍化してしまいます。この悪循環を断ち切るためには、営業体制の見直しや業務の効率化が不可欠です。
新規開拓を成功に導く「ターゲット設定」の重要性

菓子製造業で新規開拓を進める際、もっとも重要なのが「ターゲット設定」です。単に品質の高いお菓子を作るだけでは、競合がひしめく市場において商談を獲得することは困難です。自社の製造環境や技術力を客観的に見極め、どの市場や顧客層に売り込むべきかを明確にすることが、効率的な販路拡大の第一歩となります。ここからは、具体的なターゲット設定方法を解説します。
自社の強みと製造設備の「現状」を把握する
新規開拓の第一歩は、自社の「現状」を正確に把握することです。保有する製造機材の種類、職人の技術力、対応可能な最小・最大ロット数などの情報を棚卸ししましょう。自社の生産キャパシティや得意とする加工・包装技術を明確にすることで、無理のない提案が可能になり、売り込むべきターゲット企業の基準も定まります。
世代別・シーン別に合わせた具体的な客層の選定
次に、自社の商品が「誰の、どのような場面で求められるか」を分析します。若年層向けのSNS映えするスイーツか、中高年層向けの健康志向の和菓子か、または企業の贈答用かで、最適な商品規格や価格帯は大きく変化します。世代、性別、消費シーンを細かく設定することで、より訴求力のある商品開発と提案が可能になります。
カフェ・ホテル・小売などBtoB向け販路の選定
最終的な消費者のターゲットが定まったら、そこに売り込むためのBtoB(法人)販路を選定します。カフェチェーンやホテル、地域の食品卸やスーパーなど、ターゲット層と親和性の高い企業へ営業先を絞り込みます。「厨房の人手不足で仕込み時間を十分に確保できない」といった各業界が抱える課題を予測し、解決策として自社商品を提案することが成功の鍵です。
売れる商品を生み出す「スイーツ商品開発」の手順

新規開拓において、自社の商品力が商談の成否を大きく左右します。ただし、単に「美味しいお菓子」を作るだけでは、法人顧客との直接取引にはつながりません。ここでは、利益率の高い直接契約につながる提案型営業の武器となる、戦略的な商品開発の進め方を解説します。
ターゲットに最適化したレシピ構築の進め方
想定顧客のニーズから逆算したレシピ構築が必要です。例えば、カフェ向けなら「解凍後すぐに提供できる仕様」、ホテル向けなら「季節感のある高級志向の味」など、ターゲットの課題を解決する商品設計が求められます。用途に合わせた特化型の開発を行うことで、提案型営業の成功率が高まります。
可食部以外の課題(賞味期限・容器包装・物流)の解決
味だけでなく、BtoB取引では「可食部以外」の仕様が厳しく問われます。賞味期限の長さ、在庫保管のしやすさ、物流時の破損を防ぐ容器包装の工夫などです。これらサプライチェーン全体の課題をあらかじめ解決した商品設計にすることで、商談時の懸念を払拭し、スムーズな契約獲得に繋がります。
既存商品の定期的なアップデートと差別化戦略
商品開発は一度完成して終わりではありません。競合他社との差別化を図り続けるため、市場のトレンドや顧客のフィードバックをもとに、定期的な改善やアップデートを行うことが重要です。既存商品の改良や新たなフレーバー展開を継続することで、取引先への継続的な提案が可能となり、強固な関係を築けます。
新規開拓における効果的な営業手法

ターゲットと商品が定まったら、次はいかにして見込み顧客との接点を持ち、商談へと発展させるかが重要になります。試食を通じた直接的な訴求から、継続的な関係構築、クラウドファンディングを使ったテストマーケティングまで、BtoBの新規開拓で成果を上げる具体的な営業手法を解説します。
サンプル提案や試食を通じた商談機会の創出
菓子製造業における最大の営業ツールは「商品そのもの」です。ターゲット企業の課題に合わせたサンプルを厳選して送付し、試食の機会を設けることで、言葉や資料では伝わらない味の魅力を直接訴求できます。試食を切り口に商談のハードルを下げ、対話の機会を創出することが営業の第一歩です。
単発発注から継続取引へ繋げる提案型営業のコツ
初回受注で満足せず、継続的な取引関係を築くことがBtoB営業の鍵です。納品後も「季節に合わせた新フレーバーの追加」や「ロス削減に繋がる提供方法」など、顧客の売上向上や課題解決に寄与する提案を定期的に行いましょう。単なる仕入先ではなく、事業に関わる取引先の一つとして立ち位置を確立することが重要です。
クラウドファンディングを活用したテストマーケティング
リスクを抑えた新規開拓手法として、クラウドファンディングの活用も有効です。先行予約型でプロジェクトを立ち上げることで、量産前に市場の反応を確認できます。ここで得た支援実績や消費者の声は、その後のBtoB営業において「すでに市場で支持されている実績ある商品」という強力なアピール材料となります。
人手不足を解消する「外部専門家」の活用法

社内の人手や工数だけで新規開拓のすべてを完結させる必要はありません。特に専門的な製造技術を持つ一方で営業人材が不足しがちな企業にとって、外部の活用は事業を拡大させるために有効な戦略となります。
情報収集と商談獲得を両立する「営業代行」の導入
専門性が高く営業マンの人数が限られているあるいは兼任しているだけで専門の営業マンがいない場合、営業代行の活用は事業拡大に直結します。一から開拓を行うよりも、BtoB営業のノウハウを持つ専門部隊に任せることで、迅速な見込み顧客の獲得と効率的な商談創出が可能です。また、営業活動を通じて競合の価格帯や市場のリアルな要望や課題といった有益な情報収集も同時に行えるため、自社の戦略をさらに強化できます。
自社の設備や技術を補完するOEMの活用
ターゲットに合わせた商品開発を進める中で、自社の設備や技術だけでは対応しきれない工程が発生することがあります。その際は、無理に高額な設備投資を行うのではなく、OEM(製造委託)を戦略的に活用しましょう。外部の製造ラインや特殊技術を補完することで、初期投資のリスクを抑えつつ、顧客の細かな需要に応える多様な商品展開をスピーディーに実現できます。
開発コンサルタントを交えたリスク回避と資金最適化
異業種からの参入や大規模な新商品開発を自己流で進めることは、資金と時間を浪費する大きなリスクを伴います。早い段階で専門のコンサルタントを交えることが重要です。プロの知見を借りることで、レシピ構築から賞味期限、物流課題に至るまでを迅速にクリアでき、結果的に無駄な経費を抑えた確実性の高い事業展開と資金の最適化が図れます。
菓子製造業の新規開拓に関するよくある質問
菓子製造業における新規開拓や販路拡大について、事業責任者や経営者からよく寄せられる疑問とその回答をまとめました。
社内に営業担当がいなくても新規開拓は可能ですか?
可能です。社長が製造と営業を兼務している場合、すべての営業工程を自社で行うのは困難です。BtoBに特化した営業代行サービスを活用し、見込み顧客のリストアップや初期連絡を外部委託することで、社内工数を圧迫せずに商談機会を創出できます。
異業種からスイーツ市場に参入する際の注意点は?
製造設備や技術者の有無など、自社の現状を正確に把握することが重要です。自己流で進めると、包装や物流、賞味期限などの基準でつまずきやすくなります。初期段階から商品開発の専門家やコンサルタントを交え、テストマーケティング等を活用して手堅く進めることを推奨します。
BtoB取引における適正な価格やロットの設定方法は?
ターゲット企業の用途(カフェの提供用、ホテルの贈答用など)から逆算して設定します。自社の製造キャパシティを基準にするだけでなく、顧客の在庫リスクを考慮した小ロットのテスト導入プランを用意すると、初回契約のハードルが下がり、継続取引に繋がりやすくなります。
まとめ:菓子製造の新規開拓は戦略とプロの活用が鍵
菓子製造業における新規開拓は、既存取引からの脱却と利益率の向上を目指す上で不可欠な挑戦です。自社の強みを正確に把握し、ターゲット企業の課題を解決する商品開発を徹底することが、BtoB領域における提案型営業の成功に直結します。
また、社内の営業工数が不足している場合は、専門的な知見を持つ営業代行サービスや開発コンサルタントなどの外部の力を積極的に活用しましょう。プロの力を借りて効率的に見込み顧客へ営業を行い、単発の受注にとどまらない強固な信頼関係を築くことで、安定した事業拡大を実現してください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。