
既存のルート営業だけで売上を維持するのは難しいと感じていませんか。工業薬品メーカーや卸売業にとって、価格競争から抜け出して新規開拓を進めることは避けて通れない課題です。業界全体で営業のやり方が似通ってきており、指定された薬品を届けるだけの「モノ売り」では、この先も売上を伸ばし続けるのは簡単ではありません。
本記事では、VA/VE(価値分析・価値工学)を取り入れた「提案型営業」への転換から、営業代行など外部を活用した販路拡大の進め方まで、具体的に解説します。利益率の高い直取引を獲得し、次の世代につながる営業基盤をつくるヒントとして役立ててください。
工業薬品メーカー・卸売業が直面する販路開拓の課題

工業薬品業界では、これまでの営業手法だけで売上を伸ばし続けるのが難しくなってきています。まずは多くのメーカーや卸売業に共通する課題を整理し、なぜ新しい販路開拓が必要なのかを見ていきましょう。自社の状況と照らし合わせながら読んでみてください。
既存ルート営業への依存と価格競争の限界
長年付き合いのある取引先への依存は、売上の安定にはつながる一方で、相見積もりによる価格競争を招きやすいという側面もあります。製品を供給するだけでは他社との違いを出しにくく、結果として利益率が下がっていきます。価格以外の価値を示せなければ、既存顧客との関係を保つことすら難しくなっていきます。
下請け構造からの脱却と直取引獲得の壁
特定の大手企業に依存する下請け構造から抜け出し、利益率の高い直取引を増やしたいと考える企業は少なくありません。ただし、新規の顧客に直接働きかけるには、商流の壁や営業ノウハウ不足という課題がつきまといます。既存の取引先との関係を保ちながら、新たな直取引先を開拓していく動きが求められます。
アプローチ手段の固定化による見込み顧客の枯渇
展示会での名刺交換や業界内の紹介など、限られた手段だけで営業活動を続けていると、見込み顧客はいずれ底をつきます。市場の変化にともない、顧客側もWebで自ら情報収集するようになりました。テレアポや飛び込み営業といった従来の手法に加えて、新たな接点を生み出す仕組みづくりが欠かせません。
販路拡大を成功に導く「提案型営業」への切り替え

価格競争から抜け出し、新規開拓を成功させる鍵となるのが「提案型営業」です。顧客が抱える本質的な課題を解決し、自社の提供価値を高めるための具体的な方法を解説します。
単なるモノ売りから高付加価値化への転換
指定された工業薬品を納品するだけの「モノ売り」は、価格さえ合えば容易に他社へ切り替えられてしまいます。顧客の製造工程が抱える課題を共有し、薬品の選定や使用方法の見直しを通じて生産性向上といった「付加価値」を提供することが重要です。単なる供給業者ではなく、なくてはならない専門家へと立場を変えていくことができます。
VA/VE(価値分析・価値工学)を用いた具体提案
提案型営業の武器となるのがVA/VE(価値分析・価値工学)です。VA/VEとは、コストと機能のバランスを見直して製品やサービスの価値を高める手法のことで、単価が高くても使用量を削減できる薬品や、工程を短縮できる代替品の提案などに応用できます。トータルコストの削減や品質向上を数値で示すことで、不毛な価格競争を避け、利益率の高い直取引の獲得につながります。
提案型営業の具体的な進め方は、動画でも解説しています。
製造現場の潜在課題(コスト削減・環境対応)を引き出すヒアリング術
質の高い提案には、的確なヒアリングが欠かせません。購買担当者だけでなく製造現場にも足を運び、「歩留まりの悪化」「廃液処理コスト」「環境規制への対応」といった現場のリアルな課題を引き出しましょう。表面的な要望の奥にある本当の課題を言葉にすることが、競合を退ける独自の提案につながる第一歩です。
工業薬品メーカー・卸が狙うべき新規ターゲット層

新規開拓を効率よく進め、着実に売上を伸ばすには、どこに営業すべきかを見極める必要があります。ここでは、今後の需要が見込める市場や、成果につながりやすいターゲット層を紹介します。
成長産業(半導体・医療・次世代モビリティなど)への売り込み
既存産業が成熟する一方で、半導体や医療機器、次世代モビリティといった成長産業は新たな薬品需要を生み出しています。これらの業界は品質基準や環境対応への要求水準が高いため、自社の品質管理体制や供給網の速さが強いアピール材料になります。業界の最新動向を押さえ、特化した提案を行いましょう。
新規ターゲットの選定にお悩みの場合は、業界別の営業リストもご活用ください。
既存顧客の別部門・他拠点への横展開
まったくの新規企業を探す前に、すでに取引のある企業の別部門や他工場へ働きかける「横展開」は有効な手法です。すでに口座が開設されており、納入実績という信頼の土台があるため、商談がスムーズに進みます。窓口となる既存顧客から決裁者を紹介してもらい、別拠点ならではの課題解決を提案してみましょう。
工業薬品の販路開拓を加速させる具体的な手法

ターゲット層が明確になったら、実際に顧客との接点を持ち、契約につなげるための戦術が必要です。ここでは、現代のBtoB営業で効果を発揮する3つの手法を紹介します。
検索意図を捉えたWeb集客(SEO・オウンドメディア)の活用
従来のアナログ営業に加えて、Web集客は今の販路開拓に欠かせません。SEO(検索エンジンで自社の記事や情報が上位に表示されやすくなるよう工夫すること)を意識し、ターゲット企業が検索しそうな「廃液処理 コスト削減」といったキーワードを分析して、コラムやブログなどのオウンドメディアで専門的な解決策を都度発信しましょう。自社の技術力や実績を記事にすることで、利用が顕在化した見込み顧客からの問い合わせ(インバウンド)を効率よく獲得できます。
自社での更新や新規ページ作成に工数が掛けられない・知識がないとお悩みの場合は以下のサービスをご活用ください。
サンプル提供から本契約へ繋げる確実なテスト導入戦略
工業薬品の切り替えは製造リスクをともなうため、いきなりの本契約はハードルが高いものです。まずは小ロットでのサンプル提供やテストラインでの評価を提案し、導入のハードルを下げましょう。テスト期間中はこまめにフォローし、既存品との性能差やコストメリットを具体的なデータで示すことで、本契約への移行率を高められます。
品質・納期対応力を武器にした営業資料の見直し
自社の強みを的確に伝えるため、営業資料の見直しも欠かせません。製品スペックをただ並べるだけでなく、厳格な品質管理体制やトラブル時の迅速な納期対応など、顧客が安心できる要素を前面に出しましょう。過去の成功事例やVA/VEの提案実績を具体的に盛り込むことで、競合他社との違いを打ち出せます。
外部を活用した強固な営業網の構築

自社単独の営業工数には限りがあります。販路を大きく広げるには、他社のネットワークや専門的なノウハウといった外部の力を戦略的に取り入れることも欠かせません。
同業他社や販売代理店との提携戦略
自社単独での開拓に限界を感じる場合は、同業他社や販売代理店との提携が有効です。自社の薬品と相性の良い商材を扱う企業と提携すれば、クロスセル(提携先の顧客に自社商材を紹介し合い、互いの販売機会を増やす手法)が可能になります。単独では得られない市場の一次情報や紹介経路を確保し、営業を効率化できます。
営業代行の活用による人手不足の解消と市場拡大
営業に割く人手や対応工数が不足している場合は、BtoBに特化した営業代行の活用が効果的です。業界に精通した業者を選び、初期の働きかけを任せることで、自社の担当者は提案やクロージングに専念できます。結果として費用対効果(ROI)の高い見込み顧客の獲得が実現し、事業を早く規模拡大させやすくなります。代行会社にはそれぞれ得意な手法や対応範囲があるため、自社の営業課題に適した会社を選びましょう。
ビジネスサポートを活用した新エリアへの進出
地方から関東圏などの大きな市場へ進出する際、人脈や関係性の不足が壁になりがちです。この場合、対象エリアに強い企業のビジネスサポートや協業の枠組みを積極的に利用しましょう。現地の物流網や既存の顧客ネットワークを活用することで、初期投資や営業リスクを抑えながら、新エリアへの展開が可能になります。
【事例紹介】工業薬品の販路拡大・事業向上モデル
販路開拓のイメージをつかむため、提案型営業の導入や外部ネットワークの活用によって課題を克服し、事業拡大に成功した事例を紹介します。自社の戦略立案の参考にしてください。
提案型営業で直取引を増やし利益率を改善したメーカー
あるメーカーは、下請け中心の構造から脱却するため、VA/VEを用いた提案型営業へ転換しました。現場の課題を深くヒアリングし、製造工程の短縮につながる高付加価値な薬品を提案。結果として大手企業との直取引を獲得し、価格競争を避けながら利益率を大きく改善しています。
独自のネットワーク活用で事業規模を拡大した工業薬品卸
ある卸売業は、自社の営業マン不足を解消するため、同業他社との提携やBtoB特化型の営業代行を戦略的に導入しました。外部の強固なネットワークを利用することで、自社単独では参入が難しかった関東圏の新規顧客を効率よく開拓し、短期間で事業規模を拡大させています。
業種は異なりますが、営業代行を活用して販路を広げた事例として、健康食品メーカーが新規取引先を獲得した取り組みも参考に活用ください。
まとめ:提案力と人脈や外注で工業薬品の販路を切り拓く
工業薬品の販路開拓では、従来のルート営業や「モノ売り」からの脱却が急がれます。厳しい価格競争を避けて利益率の高い直取引を獲得するには、VA/VEの視点を取り入れた「提案型営業」への切り替えが欠かせません。製造現場が抱える潜在的な課題を的確にヒアリングし、自社ならではの付加価値を提供していきましょう。
また、自社の営業工数だけでは限界がある場合、同業他社との連携や営業代行など、外部の力を戦略的に活用することが事業拡大の近道になります。本記事で紹介した手法を組み合わせながら、次の世代につながる営業基盤をつくっていきましょう。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。