ルート営業の求人票で「1日15〜20件訪問」という記載を見て、「本当にそんなに回れるの?」「激務なのでは?」と不安に感じる方は多いでしょう。実際のところ、移動や事前の情報収集、そして何より顧客の課題解決に向けた提案に時間がかかるため、1日10件以上の訪問は非現実的です。
本記事では、現役営業マンのリアルな平均訪問件数やタイムスケジュール、そして高付加価値な「提案型営業」が求められる実態を徹底解説します。これを読めば、適正な働き方ができる企業を見極め、入社後のミスマッチを確実に防ぐことができます。
ルート営業の1日の訪問件数、平均はどれくらい?
現役ルート営業マンのリアルな平均は「3〜5件」
現役のルート営業マンが1日に訪問する平均件数は、3〜5件が現実的な目安です。顧客との関係構築や課題のヒアリングに注力する提案型営業を前提とした場合、これ以上の件数をこなすことは物理的に困難になります。単なる納品や挨拶回りではなく、次回の商談に繋がる質の高いコミュニケーションを図るためには、1日3〜5件の訪問が適正なラインと言えます。
時々見る「1日15〜20件」は現実的なのか?
時々求人票に記載される「1日15〜20件」という数字は、現実的なルート営業の実態から大きく乖離しています。この件数を達成しようとすれば、1件あたりの滞在時間は10〜15分程度に制限され、担当者への深いヒアリングは不可能です。もし実際に15件以上の訪問を強要される場合、それはルート営業という名目の実質的な飛び込み営業である可能性が高いので、自分の希望する働き方に合っているか注意が必要です。
1件あたりの平均商談時間と移動時間の関係
適正な訪問件数の算出には、商談時間と移動時間の把握が重要です。BtoBのルート営業では、1件あたり約1時間の商談に加え、顧客間の移動に30分〜1時間程度を要します。1日の稼働時間を8時間とした場合、事務処理や社内業務の時間を差し引くと、顧客訪問に充てられる時間は物理的に限られます。結果として、丁寧な営業活動を行うための訪問件数は絞り込まれます。
なぜ「1日10件以上」のルート営業は多すぎると言えるのか
物理的な時間配分が破綻する理由とシミュレーション
1日の実働を8時間とし、移動に計3時間、事務作業等に2時間かかると仮定します。残る商談時間は3時間となり、10件訪問する場合の1件あたりの滞在時間はわずか18分です。挨拶や準備を除けば本題を話す時間はほぼ無くなり、顧客の課題をヒアリングする物理的な時間が確保できず、スケジュールとして完全に破綻してしまいます。
数年前になりますが、私も以前営業マンとして毎日必死に生きていた時期は、地方に5日間止まり1日7件回る営業活動を月に2回行っていた経験があります。今思えば大変な状況だったなとも思う反面、オンラインやメールなどの非対面に比べると商材の利用や継続を促しやすい傾向はあるので、人通しの繋がりは大切ですが時間にも限りがあるのでバランス調節がとても大切です。
提案活動ができず「単なる納品・御用聞き」になる弊害
件数のノルマだけを追うと、商談が「何か必要なものはありますか?」という御用聞きや、カタログを置くだけの単なる納品作業に陥ります。これでは顧客の潜在的な課題を引き出せず、質の高い提案を行う競合他社に簡単に乗り換えられてしまいます。売上拡大の機会を逃すばかりか、営業担当者自身の提案スキルの向上にも繋がりません。
「ルート営業」を騙る実質的な飛び込み営業・新規開拓のリスク
求人票に「ルート営業で1日15件以上」と記載されている場合、実態は既存顧客への定期訪問ではなく、新規開拓目的の飛び込み営業であるリスクが高いです。アポイントなしでエリア内の企業を片っ端から訪問する方針のため、必然的に件数が膨れ上がります。入社後の深刻なミスマッチを防ぐためにも、不自然に多い訪問件数には警戒が必要です。
【実態】ルート営業の1日のタイムスケジュール例
【午前】社内業務・事務処理と午前の顧客訪問(1〜2件)
出社後はメールチェックや当日のスケジュール確認、提案資料の準備などの社内業務をこなします。午前中は移動経路に合わせて1〜2件の顧客を訪問するのが一般的です。朝の早い時間は顧客側も業務開始で忙しいため、アポイントは10時以降に設定し、前回の会話ログの確認や現状の簡単なヒアリングを中心に商談を進めます。
【午後】重点顧客への訪問と提案・打ち合わせ(2〜3件)
昼食休憩を挟んだ午後は、まとまった時間を確保して2〜3件の顧客を訪問します。決裁者が在席しやすい時間帯を狙い、新商品の提案や、抱えている課題に対する具体的な解決策の提示など、深く踏み込んだ商談を行います。急なトラブル対応や移動渋滞も考慮し、無理のないゆとりを持ったスケジュールを組むことが重要です。
【夕方】帰社後の見積もり作成・翌日の準備
16時〜17時頃に帰社し、当日の商談内容を営業支援システム(SFA)に入力したり、日報を作成したりします。また、顧客から依頼された見積もりの作成や、翌日に訪問する顧客への提案準備もこの時間帯に行います。明日の営業活動をスムーズに開始するための重要な社内業務であり、質の高いルート営業には欠かせない時間です。
業界や扱う商材によって訪問件数の目安は異なる
有形商材(メーカー・専門商社・製造業など)の訪問スタイル
樹脂加工部品や電設資材といった有形商材は、製品の納品や在庫確認、品質チェックを伴うため訪問頻度が高くなる傾向にあります。1日に5件程度回るケースもありますが、単なる御用聞きではなく、VA/VE(価値分析・価値工学)の観点からコスト削減や工数削減の提案を行う場合、1件の商談時間が長くなるため、1日の訪問件数は3〜4件程度に落ち着きます。
無形商材(サービス業・物流・人材など)の訪問スタイル
倉庫物流ソリューションやBPOサービスなどの無形商材は、顧客の経営課題を深くヒアリングし、要件定義から入る提案型営業が求められます。単価を上げ、下請けから直接取引への移行を狙うような戦略的な商談では1件に1時間以上かけることも珍しくありません。結果として1日の適正な訪問件数は2〜3件となり、行動量よりも商談の深さが重視されます。
営業エリアによる移動手段と件数の差:都心部と地方
営業エリアの特性によっても適正件数は変動します。都心部では顧客企業が密集しており、電車移動を組み合わせることで効率的な訪問が可能です。一方、地方の製造業や施設を車で回る場合、移動だけで数時間を消費するため1日3件の訪問が限界となるケースも少なくありません。エリア特性に応じた無理のないルート設計と、1件あたりの提案の質を高める工夫が重要です。
訪問件数よりも「商談の質」が求められる現代のルート営業
顧客の課題解決を担う「提案型営業」への切り替え
近年のBtoBルート営業では、単なる注文伺いから、顧客の潜在課題を解決する「提案型営業」へ方針を切り替える事が重要とされています。下請け的な立ち位置から脱却し、直接取引を通じて高い付加価値を提供するには、顧客の事業を深く理解する必要があります。そのため、1日の訪問件数を絞り込み、1件の商談に時間をかけて質の高いヒアリングと提案を行うスタイルが主流となっています。
短時間の訪問では利益率の高い取引や深い信頼関係は築けない
1回15分程度の短い訪問を繰り返すだけでは、表面的な情報交換に終始します。VA/VE(価値分析・価値工学)を用いた抜本的なコスト削減提案や、利益率の高い新規プロジェクトの受注を獲得するには、十分な商談時間が欠かせません。短期的な訪問件数に固執することは、かえって中長期的な信頼関係の構築を阻害し、競合他社への乗り換えリスクを高める結果を招きます。
件数ノルマではなく、顧客単価やLTVを重視する企業が増加
多くの企業が、営業担当者の評価指標を行動量(訪問件数)から、質(顧客単価やLTV:顧客生涯価値)へと転換しています。1日何件回ったかよりも、1社の優良顧客と強固な信頼関係を築き、継続的な利益を生み出せるかが重視される時代です。無理な件数ノルマを課す企業より、顧客の課題解決にじっくり向き合える環境を選ぶことが営業としてのキャリア形成において重要です。
気づくのが遅かったとなる前に!見極めたい適切な労働環境の共通点
面接で確認すべき「1日の訪問件数と平均商談時間」
入社後のミスマッチを防ぐため、面接時には「1日の平均訪問件数」と「1件あたりの平均商談時間」を必ず確認してください。1日10件以上の訪問を求められる場合、十分な商談時間を確保できないリスクがあります。また、移動時間や事務作業の扱いについても質問し、現実的なスケジュールが組まれているかを見極めることが重要です。
既存顧客への訪問と新規開拓の割合
ルート営業の求人であっても、実態は新規開拓の比率が高い事実が存在します。面接では「既存顧客と新規開拓の営業割合」を具体的に確認しましょう。1日の訪問件数が異常に多い場合、飛び込みによる新規開拓を強要される可能性があります。自身の希望する営業スタイルと実態が合致しているか、入社前に明確にしておくことが大切です。また、上記で説明したように新規開拓に多くの人手や時間を使いたいと考えている企業は多く存在します。新しく会社を知ってもらう事や、会社や商材に興味を持ってもらう事の難しさや厳しさについては、私たちの行っている営業代行をご利用頂いたお客様のインタビューでもお話していますので、よかったら参考にご覧ください。
まとめ
ルート営業における1日の訪問件数は、3〜5件が現実的な適正ラインです。求人票にある15〜20件といった記載は、物理的な時間配分から見ても非現実的であり、実質的な飛び込み営業の可能性を疑うべきです。現代のルート営業には、単なる訪問数(行動量)よりも、顧客の課題を深く掘り下げる「提案型営業」としての質が求められます。転職を検討する際は、表面的な数字に惑わされず、顧客としっかり向き合える労働環境が整っている企業を慎重に見極めることが重要です。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。